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しおりを挟む────っていうのは昨日の話で。
「………朝になってしまった」
スマホで設定していたアラームを止め、時間を見るとなんということでしょう、午前6時前。
そう、俺は昨日、荷造りしながら同室のやつが来るのをずっと待っていたのだが、部屋を片付け終わっても誰も来ず、夕方になっても誰も来ず、とうとう夜になってしまったので、いよいよこれは俺のルームメイトは不良かもしれないと生唾を飲んだ。めっちゃ性格悪いか、よそに恋人いるとかそういう感じ?原作通りだとこの学園じゃ男同士の恋人なんか普通だし。うわどうしよ、すげぇチャラ男とかだったら相性悪いかもしれん…。
なんてぐるぐると考えたが、まぁ腐っても俺は颯斗とも親友になった男である。こんなことで日和ってたらこの先の破滅阻止なんかできないので、とりあえずキッチン借りて実家から送られてきた食材で料理したり、風呂に入ったりして待ってたんだけど…これが本当に、全く人が帰ってくる気配とかなくて気がついたら日を跨ぎそうになっていたので、慌ててベッドに入って寝てしまった。何せ、翌日は新学期始まっちゃうからな。
まっ、朝になったら帰ってるだろ。明日学校だし!!
と思ってぐっすり寝て起きて結局部屋には誰もいないということで今に至る。
「えぇ……ルームメイトなんて俺には存在してないとか?」
制服に着替えて室内をうろうろしてみたがやっぱり誰もいない。俺が寝てる間に帰ってきて、俺が起きる前にもう出て行ったとか?いやいや、それにしては痕跡なさすぎる。物音とかも無かったし。
昨日適当に握っておいたおにぎりを齧りながら、そういえば、と俺は思い出した。
昨日の受付で確か、栗原先輩が渡してくれた紙に同室の人の名前書いてあるとか言ってたな…なんで俺それも見ずに挨拶行こうとしてたんだろ。
どれどれ?
「えーと、同室者は…くろたき、なんだこれ…さいる?」
同室者の欄に俺の名前と並んでいたのは、黒瀧才琉という名前。黒瀧は読めるけど、下の名前が何て読むのか分かんないな。さいるで良いのかな?なんかかっこいい名前、めっちゃ頭良さそうだな…。
でもやっぱ安心した、同室の奴は一応存在はしてるっぽい。実はいないのに同室の奴ずっと待ってたとかだったら俺、恥ずすぎるからな!!
どんなやつかは全然分かんないから、今日学校で他の人に聞いてみるか。なんなら同じクラスなはずだし、話しかけてみて仲良くなるっていうのも良いし。
そうと決まればやっぱし人脈作りだよな!!商談の基本、良い人間関係の形成は社会人の基本だぜ。
玄関の姿見で軽く身だしなみをチェックして、うん大丈夫そう。高校生となったらやっぱみんな整髪料とかつけたりすんだろうけど、俺は前世からカウントしたらみんなよりも年上だからあんまオシャレとかは気にしてないというか、力は入ってないんだよな。だからこのゆるーく跳ねた癖毛はずっと放置。まぁこれも成瀬要っていうキャラの個性だと思えば別になんということもないし。え?脇役だから特徴のない平凡癖毛なんだって?う、うるせ、破滅の主要キャラと比べたら終わりなんだよ!
ちょっとネクタイが曲がっていたのでちょいちょい、と直してと。こういうのは第一印象が大事だからな!人は見た目が9割とかいう残酷な言葉もあることだし。
うん、よし!おっけい、行こう。
ルームキーを忘れずに手に持つ。うーん、同室の黒瀧君はいないけど、施錠はした方がいいよな。多分向こうもルームキー持ってるはず…え、持ってるよね?それぞれに支給されるって紙に書いてあった気する。
ちょっと不安になりつつも、まぁ大丈夫だろと思うことにしてガチャッとドアを開ける。すると、何やらドアの隙間から人影が見えて思わず飛び上がりそうになった。
えっ!?ま、まさか同室の人!?
ちょっ、今ってマジか、さ、流石に心の準備が…!
「……おい、何ビビってんだお前」
「…へっ、彗先輩!?」
途端に騒がしくなる心臓を落ち着かせどうにか平静を保とうとした瞬間、呆れたような声色の低音ボイスが飛んできて間抜けな声が出る。え、なにこれデジャブ。
「え、先輩なんで……」
いや、朝から先輩が見れるのは眼福でしかないんだけど。最高に目の保養なんだけど。
それでも一個上の2年である彗先輩がここに、まして俺の部屋の前にいるなんてやっぱりなんで?、っていう疑問の方が勝ってしまう。
すると目を瞬く俺から彗先輩はふいっと視線を外して、少しバツが悪そうな顔で言った。
「…お前、校舎行くの、初めてだろ。一応昨日、案内任されたから、俺が一緒に行ってやる」
「えっ、そんな贅沢な話が!?いやそれより、先輩ずっと俺のこと待ってたんですか!?」
「………ずっとじゃねぇ、ちょっとだ」
あ、これ多分結構長い間待ってたやつ……。
「ほんっとすんません!!あ、あの、大変長らくお待たせして…」
「うるせぇな、待ってないって言ってんだろ…それに、呼び鈴を押さなかったのは俺の判断だ。他人を急かす趣味はねぇ」
それってつまり俺のこと急がせたくなくて、俺がゆっくり準備できるようにインターホン押さなかったっていう優しさと気遣いの塊ということだよね何それ好き、デレ供給ありがてぇ…。
なんて考えるとニヤニヤが止まらない。すると俺の表情から何かを察知したらしい先輩が、いいからさっさと鍵閉めて来い、とキレ気味に言うので素直に部屋をロックした。
先輩と登校とか、俺どんだけ前世で徳積んだんだろうな…んふふ。
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