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しおりを挟む先輩に続いてエレベーターから降りて外に出る。エレベーターで一緒になった人にめっちゃ驚いた目で見られたのは、俺が先輩を案内係にしてるって勘違いされたからかな……今もすっげぇ他の人に見られてるし。うわ、俺初日からとんでもなく生意気なやつだと思われたかも…先輩に申し訳ねぇ…先輩優しいから俺を案内してるだけなのに。
罪悪感からちょっと縮こまって彗先輩の隣を歩くが、当の先輩は視線なんてどこ吹く風と言った風情で全く気にしてないみたい。それどころか、変な方向に行こうとする俺の首根っこを掴んで向き変えてくれる始末。さすがクールビューティー、さすが俺の二推し。もちろんめっちゃ優しい力で俺を小突くことも忘れない。てぇてぇ。
しっかし、やっぱり目立つのか俺への視線がすごい。うっ、なんだあのちょっと顔良いモブは?とか思われてんだろうな。彗先輩の隣に並んでたら俺なんかへのへのもへじみたいな顔にしか見えないんだろうし…。
うわ、めっちゃヒソヒソされてる。
「ちょっあれ誰!?『氷の王子様』が誰かと一緒に登校するなんて今までなかったのに!!!」
「あっ、手掴んで先導してる!!あの氷室様が他の人の頭を優しく小突いてらっしゃる!!」
「小突かれて笑ってるあの子、めっちゃ可愛い…笑顔やば…」
「しかも見ろよ!あの氷王子、一見いつもの氷のような仏頂面に見えるけどよく見たらいつもより目尻が1.5ミリ下がってるぞ!しかも心なしか雰囲気も柔らかい!」
「氷王子じゃない、氷室様だ馬鹿!しかも1.5ミリではない、1.84ミリだ!つ、ついに氷室様にも雪解けが…今まで栗原様以外誰一人として接触せず、極度に人を嫌っていた氷室様が…」
「影から見守っていた甲斐がありましたね、隊長!でもあのお方は一体どなたなんだろう…外部から来た一年生っぽいですけど」
「ああ、美人であらせられるが、かっこよさも備えてらっしゃる。そして笑った時の涙袋が最高に可愛らしい!!一体どなたかは存じ上げないが、氷室様が気にかけていらっしゃるのだ、きっと素晴らしい方に違いない。これはぜひ調べねば…」
「僕今日からあの方と氷室様を推します!!」
「すぐに新聞に書かなければ!これはデカいスクープになるぞぉ!」
周りがザワザワしすぎて一人一人の言葉まで聞こえないけど、ところどころスクープとか、あれ誰とかが頻繁に聞こえる。なんか親衛隊っぽい人もいるしめちゃくちゃ怖いんだが?俺報復とかされないよね?この身の程知らずのクソモブが!とか言われて放課後校舎裏に来いみたいな……初日からそれは終わった…。
とほほ……と肩を落としていると、彗先輩が不機嫌そうに顔を顰めているのが目に入った。チッ、という舌打ち付き。
ひえっ。
「せ、先輩……あの、お、怒って、ます、よね?」
恐る恐る先輩の顔色を伺う。そうだよな、先輩は厚意で俺を案内してるだけなのにこんな注目されてるし…しかも先輩人嫌いだし。
先輩がフー、とため息を吐くのが聞こえた。そして、少し不貞腐れたような表情で首筋に手をやる。
「………………怒ってねぇよ、お前には。ただ、お前は俺以外の前では笑うな」
「……ぇ、それってどういう、あてっ!」
眉根を寄せて不機嫌そうな顔でまたコツンっ、と小突かれる。
俺には怒ってないって…え、ちょ、特大のデレ過ぎて処理できないんだけど。俺にそれだけ好感度あるってことで良い???都合よく解釈しちゃうよ俺。
「……お前はずっとそのアホヅラ貼り付けとけ」
「いや急になんでそんな満足そうにするんですか!?」
しかもサラッとディスるし、もしかして先輩は俺のこと揶揄ってます?やだ先輩の小悪魔っ!!
「お前変なこと考えてんだろ……お前は1Sだから3階だ。俺は寄るとこがあるからこっからは一人で行け。流石にもう迷子にはなんねぇだろ」
校舎に入って階段の前まで到着したところで、彗先輩がくるりと身を翻した。俺はお礼を言って彗先輩と別れた。
「マジでありがとうございました!!めちゃ助かりました!
先輩大好き!」
「ばっ、お前ふざけんな!デケェ声でんな小っ恥ずかしいこと言ってんじゃねぇ!!」
ちょっとイタズラ心で叫んだら先輩がすごい顔して怒鳴り返してきて思わず笑ってしまう。先輩ってやっぱツンデレだよなぁ、可愛い。本当に尊いぜ。
一人で笑いながら階段を上がる。一人になったのに何故か視線を感じるな…まぁ、段々減るか!どうせ俺なんかちょっと顔いいだけのモブだし。
3階に着いたのでちらりと見上げると確かにすぐに1-Sと書かれた教室が見えた。でもこれ先輩いなかったらきっとこのクソ広い校舎で迷ってただろうな。3回くらい先輩に方向正されたもん。
扉は案外普通の高校と大差ない作りだけど、黒縁に白というちょっとおしゃれな配色。引き戸だ。手をかけると、軽い力でスッと静かに開いた。
教室にはもうちらほら人がいて、その人達が一斉にこっちを見るもんだからちょっとビクッとしてしまった。お、おお、みんな来るの早いな。
黒板に貼ってある紙を見て、おずおずと自分の席に座る。隣、前後はまだ来てないみたいで、俺の周辺には誰もいなかった。う、おしゃべりできない…ついてねー!
仕方ない、近くに誰か来るまで気長に待つか……。
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