俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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悪鬼羅刹の祭典

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「なんっだこれぇ!?!?」




 翌日、昨夜棗と電話して充電したこともあってるんるんで登校した俺の第一声がこれである。





 
 突然だが、この学園には学園新聞というものがある。小学校とかでよく書かされる、学校のニュースをまとめたアレである。やれ校舎が新しくなったとか、何とかっていう有名な講師の先生が授業してくれたとか、授業参観があったとか。まぁ普通の学校では、大体そんな感じの内容が書かれていることが多いと思う。


 しかし、王道学園の新聞部というのは普通の学校の新聞部とは全然違う。そう、この学園では学校行事やお知らせではなく、学園の象徴(?)である生徒同士のBでLな話題が記事にされるのである。簡単に言うと、何組の誰々が付き合ってるとか、告ったとか告られたとか、フったとかフられたとか。週刊誌みたいなもんだと俺は勝手に思っている。だってこれプライバシーもクソもないからね。思いっきり個人名が載ったりするのが王道学園だからね。だから言ったろ、BLはファンタジーなんだよ……。







 おっと脱線。話を戻そう。




 



 その幽谷砲(某週刊誌風呼称)の包囲網、つまり新聞部の部員達が王道学園通り大層な数いて、いろんなゴシップを聞きつけているらしく、結構な頻度で各学年の廊下と外の掲示板、そして食堂前に張り出されるそうなんだよ。そんで、俺は今朝掲示板の前に人が群がってるのを見て興味本位で覗いただけなんだけど。








 ………………まぁ、めちゃくちゃ端的に言うと今回、俺が幽谷砲の餌食になっているのである。




 





 ふざけんな^ ^




 

 記事の題名はこうだ。








 

『氷の王子様に熱愛発覚!?氷の心に雪解けをもたらした外部生、成瀬要とは!』



 






 ふふん、何もかも無事に高校デビューしたぜ!!!!





 とか呑気に思っていた昨日の俺を殴りたい。おもっくそ個人名出してんじゃんチクショー!!俺のプライバシーは何処へ。



 というか、何これ。雪解けをもたらすって俺そんなんじゃないし、そもそも彗先輩と俺の間には熱も愛もない。いや嘘、俺には彗先輩を推すという熱があるにはある。でも彗先輩には俺への熱意なんてないに決まってる。あったらそれは俺が困る。主に、嬉しすぎて。



 恐る恐る内容に目を通す。どうやら昨日彗先輩と俺が一緒に登校していたところを見られて、バッチリカメラで激写されてラブラブハートちゃんを描かれてしまったらしい。世界ツンデレ遺産の彗先輩は基本的に人嫌いなので、これまであんまり学園の人とも関わりがなかったようで、突如現れた知り合いの俺が余計に目立ってしまったというわけのようだ。なんてこった、勘違いが勘違いを引き起こしてるよこれ。




 


「うぉおおいマジかよ……とんでもないな、幽谷砲」


 




 記事の事実確認はちゃんとしろよな!!あとプライバシーはどうなってんの!!俺の顔も個人名も全部丸出しでこれじゃあ指名手配だろうが!!



 



「あ、でも俺を小突く彗先輩の横顔は最高に麗しいなこれ。ふーむなるほど、この写真をタダで見せてくれてるんだからまぁ、許さんこともない…か?」




「バカがバカなこと言うな。バカ」





「とぅぉわっ!?」








 記事に使われている写真をじーと眺めながら呟いていると、急に後ろからその独り言を拾われて思わず飛び上がった。振り返ると、瑠璃色の美しい目と視線が合致した。






「すすす彗先輩っ!?!?な、なんっ!?!?!」






 なんでここに?という質問が出てこないくらい動揺して軽くプチパニックである。ってか先輩と俺こういう出会い方多すぎ案件な?



 出会って唐突にナンとか言い出した俺の意味不明さを先輩は怒るでもなく、普通に理解して首に手をやった。程なくして、少し気まずそうにそっぽを向く。







「……お前が、また迷ってんじゃねぇかと思ったら勝手に目が覚めちまっただけだ。断じてお前を探してたとかじゃない。た、またま会っただけだ」



「うんうん」



「おいなんだその生ぬるい視線は」








 つまり俺とまた一緒に登校しようとしてくれたんですよね!!俺を探してここまできたんですよね!!!



 あー待って今日もツンデレで麗しくて可愛いですね先輩。無理しんどい尊い。神様ありがとう、今日も推しに会わせてくれて……。





 なんて俺が神に感謝している間に、どうやら掲示板に釘付けになっていた皆んなの視線を集めてしまったようで、一気に騒ぎがデカくなった。あ、当事者ここに揃ってますもんね、そりゃ騒ぐよね!!








「ちょっあれ!?氷の王子様じゃない!?」




「わわっ、あの子、この新聞の子と一緒!!!待って待って、ご本人様降臨!?」




「顔面偏差値ぃ……」




「あの氷室様が、人と話してる、だと…!?」




「やっぱりこの記事に書いてること本当だったんだ!!!」








 あああああ、誤解が誤解してるぅううううう!!!!!





 よく考えたら今のこの状況は最悪だった。これ記事の事実性高めてるだけじゃん!?待って待って違うんです待って誤解、This is Gokai. と、解かなければ今すぐに!!!じゃないと俺は最悪まだいいが、彗先輩が多大なる迷惑を被ることになってしまう!!推しに迷惑をかけるなんて害悪オタクでしかない。そんな害悪クソモブになる前に早く俺が身を挺してこの複雑怪奇な記事の事実性のなさを証明しなければ!!!!







「ちょっ、あの、これはマジでちが─むぐっ」







 流石にこんなに大衆に話す機会なんてないのでカス陰キャみたいな話し方になってしまったが、もう後に引けるわけもなく、俺はもう根性でそのまま弁明しようとした。しかし、その俺の口を誰かが手のひらで塞いだ。



 いやまぁ、この場でそんなことするほど現状俺が親しい人、彗先輩しかいないから、誰かは彗先輩に決まっているんだけど。ちょっと理解が迷子すぎて追いつかない。



 な、なんで?という顔をして無意識に彗先輩の方を見上げると、先輩はちょっと眉を顰めて首を振った。






「……良い、別に。ほっとけ」




「ん、んぅんんー!?(え、なんで!?)」




「こうなるのは俺にだって想定できる程分かりきってたことだ。ここで何言ってもどうせあることないこと噂されんのがオチだから無駄な労力使おうとすんな」






 諦めたように先輩がそう言って、ようやく俺の口から手を離したので俺はすぐに反論する。







「でも先輩に迷惑かかるじゃないですか!!先輩は俺のこと善意で案内してくれただけなのにこんなこと言われたら……」




「俺は気にしてねぇ。俺が気にしてねぇことをお前が気にすんな」





「でも……」








 それでも尚食い下がろうとする俺に、先輩はほんの少しだけ笑って、くしゃりと俺の頭を撫でた。え、可愛い、心臓きゅんってした。可愛い。無理しんどい。







「……先輩がそう言うなら」





 それでもちょっと不満だったので唇を尖らせて不機嫌オーラを出しておく。この学園が普通の学校と違うって知ってるけど、こういうのはちゃんと事実確認して欲しいよな。みんな同じ学校の生徒なんだからさ。平等に安泰な高校生活を送る権利があると思うんだよなぁ。いつか風紀委員に会うことあったらこういう記事をもっとちゃんと規則に則って取り締まってくれって言おう。学園の規則とかは風紀が取り締まってるからな。


 先輩は頷いた俺を見て、ん、と小さく頷いて、早く行くぞと目で合図した。俺も大人しくその後をついて校舎まで2人で並んで歩く。それでも俺はまだちょっと納得できなかった。






 はぁー……人嫌い、人嫌いってみんな言うけど。









 先輩が誰かと話したらこんな風に噂になるけどさ。









 みんな先輩がなんで人嫌いになっちゃったのか、知ってんのかな。

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