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衝突
勝者と敗者
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意識が回復したばかりで、まだ毒気の抜けきっていないアレクシアの足取りは遅い。
それはアレクシアが何の支えもなく長い距離を歩けないからであり、実際彼女は少し歩いてはすぐに何かに掴まり、その度に歩みを止めてしまっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・行かなきゃ、私が物資を持ち帰らなきゃ・・・」
そんな状態の彼女が、今から外へと向かい失った物資を回収してくることなど無理だと、彼女だけが気付かない。
彼女はもはや碌に前も見えていないような雰囲気であったが、確かに遥か先だけに目を向けて進み続けている。
そんな彼女の耳に、何やら賑やかの物音が届いていた。
「アランさん、マジパネェっすわぁ!!」
「あんな大量の物資、どっから見つけてきたんすか!?」
それはアランの勝利を祝う、宴会の声であった。
もたれ掛かった物陰からそれを覗くアレクシアの目に飛び込んできたのは、アランを囲み楽しそうにしている村の住民たちと、それに満更でもない表情をしている彼の姿だ。
「いやぁ~、実を言うと・・・あれのほとんどはアレクシアが見つけたもんなんだけどな!」
「何を言ってるんすか、兄貴!それをちゃんと全部持ってきた兄貴が凄いんじゃないっすか!!」
「そう?やっぱりそうなっちゃう?ふはははっ!実は俺もそう思ってたんだよねー!!」
自らを褒め称える周りの声に後頭部を掻いているアランは、それに謙遜の言葉を返している。
しかしそれすらもさらに持ち上げる声が上がれば、待ってましたと思わず彼の頬も緩んでしまっていた。
「そっか・・・もう、それも全部持ってかれちゃってたんだ・・・あはは、私・・・何やってんだろ・・・」
アランが口にした冗談めいた言葉も、それに呼応するように湧き上がる馬鹿みたいな笑い声も、まるで彼女を扱き下ろす声かのように聞こえる。
それは彼女がこうして身体を引きずってまでやろうとしていたことが、既にアランによって全て終わらせられてしまっていた事と無関係ではない。
この必死な思いも全て無駄だったと知ったアラクシアは、目を見開くと引き攣るように自嘲の笑みを漏らす。
「いやぁ~、こんなんならもうあの女なんて用なしっすね!兄貴さえいてくれりゃいいや!!」
「そうだそうだ!!前から気に食わなかったんだよな、あいつ!何だかお高く留まっちゃってさ!私が皆を支えてますって面で接してきて・・・息苦しかったんすよねぇ!!」
そしてそんなアレクシアの耳に、さらに叩きつけるように罵倒の声が届いてしまう。
「あはっ、あははは・・・そう、なんだ・・・そんな風に思われてたんだ・・・私が頑張ってきたのなんて、何の意味も・・・」
それは宴会の席に、思わず口から出ただけの軽口であったのかもしれない。
しかし今のアレクシアに、それを冗談だと受け取る余裕などない。
それを耳にしてしまったアレクシアはショックを受けたようにふらつくと、そのままふらふらとその場を離れていく。
「だよなー!やっぱ、お前らもそう思うか!?」
「思うっすよ!!今までは全然言えなかったっすけど、皆そう思ってましたって!」
「はははっ、だよなだよな!!」
そんな彼らの言動に、アランはさらに機嫌を良くしては声を高くしている。
それに賛同するように、周りの村人達もさらに口汚くアレクシアの事を罵り始めていた。
幸いなことがあるとすれば、その時既に彼女はここを離れており、その声を耳にすることはなかったことだろうか。
「お姉様!!こんな所にいたんですか!?もう、じっとしとかないと駄目なんですから!!早く寝室に・・・お姉様?大丈夫ですか?お姉様!?」
ふらふらと彷徨う先に、行き先などない。
朦朧とする意識は、砕かれた心にみるみる力を失っていき、やがて再びそれを手放してしまう。
彼女はその最後に、自らの事を心配する妹の声を聴いていた。
それはアレクシアが何の支えもなく長い距離を歩けないからであり、実際彼女は少し歩いてはすぐに何かに掴まり、その度に歩みを止めてしまっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・行かなきゃ、私が物資を持ち帰らなきゃ・・・」
そんな状態の彼女が、今から外へと向かい失った物資を回収してくることなど無理だと、彼女だけが気付かない。
彼女はもはや碌に前も見えていないような雰囲気であったが、確かに遥か先だけに目を向けて進み続けている。
そんな彼女の耳に、何やら賑やかの物音が届いていた。
「アランさん、マジパネェっすわぁ!!」
「あんな大量の物資、どっから見つけてきたんすか!?」
それはアランの勝利を祝う、宴会の声であった。
もたれ掛かった物陰からそれを覗くアレクシアの目に飛び込んできたのは、アランを囲み楽しそうにしている村の住民たちと、それに満更でもない表情をしている彼の姿だ。
「いやぁ~、実を言うと・・・あれのほとんどはアレクシアが見つけたもんなんだけどな!」
「何を言ってるんすか、兄貴!それをちゃんと全部持ってきた兄貴が凄いんじゃないっすか!!」
「そう?やっぱりそうなっちゃう?ふはははっ!実は俺もそう思ってたんだよねー!!」
自らを褒め称える周りの声に後頭部を掻いているアランは、それに謙遜の言葉を返している。
しかしそれすらもさらに持ち上げる声が上がれば、待ってましたと思わず彼の頬も緩んでしまっていた。
「そっか・・・もう、それも全部持ってかれちゃってたんだ・・・あはは、私・・・何やってんだろ・・・」
アランが口にした冗談めいた言葉も、それに呼応するように湧き上がる馬鹿みたいな笑い声も、まるで彼女を扱き下ろす声かのように聞こえる。
それは彼女がこうして身体を引きずってまでやろうとしていたことが、既にアランによって全て終わらせられてしまっていた事と無関係ではない。
この必死な思いも全て無駄だったと知ったアラクシアは、目を見開くと引き攣るように自嘲の笑みを漏らす。
「いやぁ~、こんなんならもうあの女なんて用なしっすね!兄貴さえいてくれりゃいいや!!」
「そうだそうだ!!前から気に食わなかったんだよな、あいつ!何だかお高く留まっちゃってさ!私が皆を支えてますって面で接してきて・・・息苦しかったんすよねぇ!!」
そしてそんなアレクシアの耳に、さらに叩きつけるように罵倒の声が届いてしまう。
「あはっ、あははは・・・そう、なんだ・・・そんな風に思われてたんだ・・・私が頑張ってきたのなんて、何の意味も・・・」
それは宴会の席に、思わず口から出ただけの軽口であったのかもしれない。
しかし今のアレクシアに、それを冗談だと受け取る余裕などない。
それを耳にしてしまったアレクシアはショックを受けたようにふらつくと、そのままふらふらとその場を離れていく。
「だよなー!やっぱ、お前らもそう思うか!?」
「思うっすよ!!今までは全然言えなかったっすけど、皆そう思ってましたって!」
「はははっ、だよなだよな!!」
そんな彼らの言動に、アランはさらに機嫌を良くしては声を高くしている。
それに賛同するように、周りの村人達もさらに口汚くアレクシアの事を罵り始めていた。
幸いなことがあるとすれば、その時既に彼女はここを離れており、その声を耳にすることはなかったことだろうか。
「お姉様!!こんな所にいたんですか!?もう、じっとしとかないと駄目なんですから!!早く寝室に・・・お姉様?大丈夫ですか?お姉様!?」
ふらふらと彷徨う先に、行き先などない。
朦朧とする意識は、砕かれた心にみるみる力を失っていき、やがて再びそれを手放してしまう。
彼女はその最後に、自らの事を心配する妹の声を聴いていた。
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