ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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初めてのお客様

三人は冒険者の来訪に備えて最終確認を行う 5

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「宝箱ですか・・・確かに見れば装飾もしっかりしている箱のようじゃが、逆に怪しくはないじゃろうか?あのような場所に、あんな箱がポツンと置いてあるなど・・・」
「何でだ?ダンジョンと言えば、宝箱じゃないか」
「はて、そうじゃったかな?しかしカイ様がそう仰られるなら、その通りなのじゃろうなぁ」

 カイの説明に顎髭なのか体毛なのか判別のつかない部分を撫でつけたダミアンは、そんな場所にあんな物があるのは不自然なのではないかと疑問を呈する。
 しかしカイからすれば、どうして彼がそんな事を言うのか心底理解できなかった。
 何故なら、ダンジョンに宝箱は付き物なのだから。
 それを力説しても気のない返事をするばかりのダミアンに、流石のカイも何かおかしいのではないかと思い始めていた。

(ん?もしかして、宝箱って概念がこちらの世界にはないのか?まぁ考えてみれば、何でダンジョンにあんなもんが置かれてるんだよって話なんだけど・・・あれ?じゃあ、このままじゃ不味いのかな?もっとこう自然な感じでアイテムを配置するとか・・・いやいや、今更そんな事考えてる時間なんてないって!今回はとりあえず、このまま押し切ろう!)

 基本的にダンジョンとは魔物達の拠点や、前線基地として使われる事が多い。
 各種のアイテムを生成する事ができ、防衛の魔物の配置も手軽、しかも魔物にとって必要不可欠な魔力が豊富なその環境は、まさにそれらに打って付けといえた。
 ダンジョンから冒険者が貴重な物資を持ち帰ることは多いが、それはそれらの魔物の素材か、もしくは備蓄していた物資を奪ったものであろう。
 カイが用意したような、どうぞお取りくださいというものではない筈だ。

「と、とにかくそういうものなんだ!彼らにはここで回復用のポーションを確保してもらう。それで次はどうなってる、ヴェロニカ?」

 想定外の事態に、カイは声のボリュームを上げてそれを誤魔化すと、ヴェロニカに次の説明を早くとせっつき始める。
 ダミアンと違い、カイと一緒に準備を進めていたためすでに宝箱の存在を知っていたヴェロニカは、困惑した態度を見せる彼にどこか優越感を感じさせる表情を向けていた。

「そうですね。これ以降は最後のエリアまで、ほとんどがこれまでと同じ流れの繰り返しとなっています。敵と戦い、その後に休憩してもらう。通路には簡単な罠も配置していますが、カイ様のご指示通り危険なものは排除し、嫌がらせ程度の被害になるように調整しております」

 今回のダンジョンの構成は、やってくる彼らの安全を第一に配慮している。
 そのため複雑な構造や、危険な罠や魔物を使用する事が出来ず、結果的な単調なものとなってしまっていた。
 それも仕方のないことだろう。
 今回の目的はあくまで彼らにダンジョンを楽しんでもらい、高価なアイテムを持ち帰ってここを宣伝してもらう事なのだから。
 無駄に迷って時間を無為にしたり、危険な目に遭わせる訳にはいかないのだ。
 彼らにはちゃんと用意された最終エリアまで到達してもらい、そこで今回の目玉の品を手に入れて貰わなければ困る。
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