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初めてのお客様

三人は冒険者の来訪に備えて最終確認を行う 8

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「あ~・・・それはだな、彼らはダンジョンの魔物と違って死んだらそれまでだ。それに外で仕事が出来るのは彼らだけだからな、そちらを優先させたかったんだよ」
「外での仕事ですか・・・それは、セッキとフィアナに任せている薬草収集の事ですか?」
「あぁ、その通りだ」

 セッキとフィアナがこの場に不在なのは、カイが彼らに外での仕事を与えていたからだ。
 セッキには彼が連れてきた魔物達の監督を、フィアナには彼らが外での仕事に乗じて逃げ出さないように監視をさせている。
 その仕事を彼らが任されている事は、当然ヴェロニカも知っていただろう。
 しかし彼女は、それに一体どんな意味があるのかと心底不思議そうな表情を作っていた。

「しかし・・・それは、それほど重要な事なのでしょうか?わざわざ二人を使ってやるほどの事とは到底・・・」
「ん?いやいや、そうでもないさ。先日近くの村に行って知ったのだが、どうやら治癒のポーションというのはかなりの価値があるものらしい。今回の事がうまくいけば、このダンジョンにも多数の冒険者が押し寄せることになるだろう。その時に、彼らの欲望を満たすアイテムが必要だろう?」

 ヴェロニカの疑問に、カイは実際に治癒のポーションを取り出して答えている。
 そのポーションの事をアトハース村では、ほとんどの人が高価なアイテムだと認識していた。
 その反応が間違っていなければ、それを量産する事でこのダンジョンの看板アイテムとして売り出すことが出来るだろう。
 今回の計画は、あくまで冒険者を呼び込むためのもの。
 それがうまくいってどんなに冒険者を呼び込めたとしても、そこに魅力がなければ彼らはいずれ去っていってしまうだろう。
 治癒のポーションはそれを防ぎ、場合によってはさらに人を呼び込む事が期待できる重要アイテムであった。

「それが、治癒のポーションですか?」
「あぁ、そのためにセッキ達には薬草を集めさせている。彼らも地元の魔物だ、この辺りの野草の知識ならば少しはあるだろう。今、このダンジョンにはあまり魔力の余裕がない。少しでも節約しなければな」

 ヴェロニカの視線はまだ半信半疑だ。
 それはまだ彼女がこのダンジョンに冒険者を呼び込むという事に、完全には納得してはいないからかもしれない。
 カイは彼女の疑問に、更なる理由を告げて説得を試みる。
 それは道理の通った理由ではあったが、その原因が実は自分にあることを深く知っているカイは、自然と彼女へと背を向けその視線から逃れるように顔を背けてしまっていた。

「そうですね、確かにそうなればあまり余裕は・・・お考えを理解できず余計な申し立てをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いやなに、全ては今回がうまくいったらの話だ。後で意味がなかったいう事もある、気にする事はない」

 カイの考えに納得のいったヴェロニカは、その意図を読み解けず余計な詮索をした事を頭を下げて謝罪する。
 彼女のその行動に、カイは慌てて頭を上げるように声を掛けていた。
 それは彼に、後ろめたい事があったからかもしれない。
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