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初めてのお客様

カイ・リンデンバウムはそれを渡したい 2

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「剣、だよな?」
「あぁ、おそらく鉄製の・・・あの汚れは土じゃなくて、錆びついているのかな?」
「錆びた片手剣か・・・何かますます、スケルトンっぽくなってきたな」

 土に埋もれた片手剣は、その全容をはっきりとは見せようとはしない。
 しかしそれでもそのシルエットは、剣というものの存在を匂わせるだろう。
 目を凝らしてようやくその存在を見定めたクリスの呟きに、ハロルドが自分で観察した情報を付け足している。
 その言葉にクリスは薄く笑みを漏らすと、それだと完全にスケルトンじゃないかと、地面に横たわるカイへと視線を向けていた。

「さっさと叩いて、確かめようぜ?」
「いや待て、さっきみたいに他にも隠れているかもしれない。アイリス、君は後ろの警戒を」

 もはや完全にそれをスケルトンだと決め付けて、適当に叩いてはそれをはっきりさせようと動き出すクリスに、ハロルドはその肩へと手をやっていた。
 彼はクリスの意見に同意しながらも、先ほどの戦いの教訓にもっと警戒すべきだと促している。
 アイリスへと後ろを警戒するように指示を出した彼は、自らはステッキを取り出してそれを地面へと横たわるカイへと向けていた。

(えっ!?そうなっちゃう?くっ、それでも俺は動かないぞ!殴られてもじっとしてれば、彼らも分かってくれるだろ。だ、大丈夫だよな?ただの木の棒だもんな、殴られても死にはしないよな?)

 なんだか殴って確かめようという流れになってしまっているのを感じたカイは、密かに焦りを加速させていた。
 どんなに殴られようとも彼が耐え忍び、動かなければ彼らも納得しただの死体だと思ってくれるだろう。
 しかし元々大して丈夫ではない自分に、スケルトンの頼りない身体へと変わってしまっている現状を考えれば、果たしてそれに耐え切れるかというは疑問だった。
 頭によぎる死の予感に、カイは身体を縮こまらせてしまいたい気持ちを必死で抑えている。
 彼の頭上では、クリスがその手に持つ木の棒を大きく振りかぶっている所であった。

「だ、駄目だよクリス!ここで死んじゃった人かもしれないのにっ!」
「お、おい!?アイリス、放せって!」

 死人を辱めようとする行為に、アイリスは憤りと共にクリスへと飛び掛っていく。
 彼女の貧弱な力など、クリスからすれば簡単に振り払ってしまえるだろう。
 しかし彼女の必死な様相に、彼はそれをすることに躊躇ってしまっていた。
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