ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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初めてのお客様

カイ・リンデンバウムはそれを渡したい 3

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「・・・アイリス、残念ながらそれはないと思うよ」
「ハロルド?どうしてそんな事が分かるの?剣も持ってるし、ここで倒れた冒険者の人かもしれないのに・・・」

 アイリスの貧弱な力に、クリスは子供の相手をしてやっている大人みたいな姿になってしまっている。
 いつまでも放そうとしないアイリスに、彼は困った表情を見せる事しか出来なかったが、そんな彼の事をハロルドの一言が救っていた。
 自分に味方するのでもなく、クリスの行動を肯定する訳でもないハロルドの言葉に、アイリスはショックというよりも疑問によってその手を止めていた。
 その彼の言葉に疑問を感じていたのは、何も彼女だけではない。

(そうですよー、ここで倒れた冒険者ですよー。この形見の剣を持っていって、お前達が活躍してくれれば浮かばれますよーって・・・それでいいんだけどなぁ。どういう事なんだ?なんか疑われるような事があったかな?そりゃスケルトンかもって警戒するのは分かるよ、さっきも出たしね。でもそれ以外になんかあったっけ?)

 自らの事をスケルトンだと疑うのは分かっても、冒険者か何かの死体ではないと言い切れる理由を、カイには検討がつかなかった。
 彼からすればこのままアイリスの意見が優勢となって、さっさとこの手に掴んだままの片手剣だけを回収していって欲しい所であった。

「考えてもみてよ、アイリス。ここまで進んできたけど、まだ僕達はアダムスさんやキルヒマンさんがここに置き去りにした筈の荷物を見つけられていない。それは、何故だと思う?」
「・・・えっと、何でだろう?そうだなぁ、う~ん・・・あ、もしかしてダンジョンの誰かが回収したから?」
「その通り。彼らの話ではそこまで奥には入っていないと思われるし、荷物が放置されたままならばもう見つけられてもおかしくはないだろう?でもその痕跡すら見つからない。それはこのダンジョンの主が回収したからだ」

 ハロルドはここまでの道中で、以前ここを訪れた商人達が落としていった荷物が見つからないのはおかしいと話す。
 そしてその理由は、それらの荷物がこのダンジョンの主に回収されたからだと語る彼は、その話と矛盾するものへと視線を向けていた。

「じゃあ、その剣は?それも回収されてなければおかしいだろう?アダムスさんやキルヒマンさんが荷物を落としたのは、そんなに前の話じゃない。この死体を見る限り、この剣はもっと前からここにあった筈なんだから」

 それは、カイが握る剣であった。
 その死体が仮に冒険者のものであったならば、白骨化するまでにかなりの時間が経っている筈である。
 そうであるならば、商人の荷物と同じように、その手に握る剣も回収されていなければおかしいと彼は語っていた。
 ハロルドの説明に、二人は納得を示して頷いている。
 そしてそれは、カイにとっても同じであった。
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