ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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初めてのお客様

シーサーペントとの戦い 5

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「さてと・・・あいつも避難した事だし、これからどうするんだ?俺達もあいつみたいに、さっさと逃げた方が良くないか?」
「アイリスみたいに背中を向けて?生憎と、僕達に彼女の真似が出来るとは思えないな」
「はははっ、違いない」

 これまでの経験から、シーサーペントがブレスを連続して放ってはこないと分かっている彼らは、その間に今後の方針を考える。
 アイリスが通路の向こうへと消えていくのを見守ったクリスは、放り出されたままであった剣を拾い上げる。
 それを肩に担いだ彼は、さっさと逃げてしまおうとハロルドに提案していた。
 確かにシーサーペントと彼らでは、余りに実力が違いすぎて戦いにもならない。
 それを考えれば、さっさと逃げてしまうのが正解なのかもしれない。
 しかしそれはハロルドによって否定される。
 彼はアイリスのような幸運は、再び巡ってはこないと皮肉げに唇を歪めていた。

「それにあいつは、逃げていくアイリスを優先して狙っていた。それが狙いやすかっただけなのか、逃亡を恐れたからか分からないけど、同じようにすれば確実に僕らも狙われてしまう。逃げられないよ」
「それはそうかもしんないけど・・・でもそれじゃ、どうすればいいんだ?」

 逃げていくアイリスを優先的に狙ったシーサーペントに、逃亡は難しいとハロルドは語る。
 しかしそうなると、どうすればいいんだとクリスは首を傾げていた。
 彼は自らが手にする得物を掲げているが、その程度の刃ではシーサーペントに碌なダメージを与えられる訳もない。

「僕が、何とか一撃入れてみる。あれの獲物は本来、水中に棲む魚や魔物の筈だ。少しでもこちらに脅威を感じれば、引き下がるかもしれない」
「・・・余計に怒るんじゃないか?」
「かもね。その時は形振り構わず、全力で逃げよう」

 シーサーペントの挙動から目を離さずに、ハロルドはその考えをクリスへと伝える。
 確かに彼の魔法であれば、この位置からでもシーサーペントの身体を狙うことは出来るだろう。
 しかしハロルドが自分で話すほどのダメージを、本当にシーサーペントに与えられるのか不安なクリスは、それを口にして彼へと釘を刺している。
 その言葉にあっさり同意したハロルドは肩を竦めると、その時はお手上げだと諦めを口にしていた。

「それしか、ないんだろう?」
「・・・たぶんね」
「はぁ~・・・分が悪っいなぁ、ったくよぉ」

 勝ち目があるようにも思えないハロルドのアイデアに、クリスは深々と溜め息をつくと剣を肩に担いでいた。
 ブラブラと彷徨うような動きでハロルドから離れていった彼の動きは、一人逃げ出そうというものではない。
 ハロルドから一定の距離を取ったクリスは、その手の松明を振ってシーサーペントの注意を引こうとしていた。

「ま、囮は任せろよ」
「・・・死ぬなよ、クリス」
「そっちもな。そうだ、風邪を引く前に頼むぜ。こっちは、こんな格好だからよ」

 湖を泳いでいた所をシーサーペントに弾き飛ばされたクリスは、全裸のままであった。
 最後の会話になるかも知れない言葉に、そんな冗談を口にした彼にハロルドは笑みを漏らす。
 彼らの視線の先では、シーサーペントが頭を湖へと突っ込んでいる。
 その姿を目にして、二人は図ったように同時に左右へと走り出していた。
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