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シーサーペントとの激闘 5
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「キィィィィ!!」
叫び声を上げて、その口腔を開いたシーサーペントに、ハロルドは形振り構わずその場を飛び退いていた。
しかし彼が飛び退いた後に、襲いくる筈だった水流はいつまで待ってもやって来ることはない。
「なっ、どういう・・・くそっ、そういう事か!」
形振り構わない逃走は、ハロルドの態勢を完全に崩してしまっている。
それに向かってゆっくりと狙いを定めたシーサーペントは、今度こそはっきりとした殺意を込めてその口腔を開いていた。
(くっ、逃げられない!どうする、どうすればいい!?)
死が間際に迫ったためか、スローモーションに見える景色の中で、ハロルドは思考を加速させる。
彼の視界の中では、シーサーペントがその口腔内に眩い輝きを発している所であった。
(ステッキはまだこの手にある。こうなったら一撃を加えて怯ませるしか・・・何を選ぶ?それにあんなモンスターに、僕の魔法が通用するのか?えぇい、迷ってる暇なんてないぞ!)
全身を放り出すようにして身体を投げ出したハロルドも、その得物であるステッキを手放すことはなかった。
もはや逃げ出すことも出来ない状態に、彼はそれでシーサーペントを迎え撃つことを決意するが、それは彼自身も分が悪い賭けでしかないと分かっている事であった。
(奴は執拗に松明を狙っていた。そういえばさっきまでの戦いでも、炎魔法だけは避けていたかもしれない。単純に狙いを外してしまったんだと考えていたけど・・・それは違ったんだ。奴の弱点は火だ、間違いない。それなら、全力で炎魔法を・・・いや、そうじゃない!)
恐ろしく遅く流れる時間の中で、ハロルドは粉々に破壊された松明へと視線を向けていた。
無防備な状態のクリスが狙えたにもかかわらず、執拗にそれを狙っていたシーサーペントの姿を考えれば、奴は火が弱点なのだろう。
そう考え、それを突く炎魔法を唱えようとしていたハロルドはしかし、それを自ら否定する。
(僕の魔法では、奴に大したダメージなど与えられる筈がない!それが弱点だとしてもだ!今はとにかく奴の攻撃を逸らせるんだ!それなら炎なんかよりも、こっちが・・・いい!)
そう、炎魔法では駄目なのだ。
間違いなくシーサーペントの弱点であるそれを突いても、ハロルドの実力では与えられるダメージなどたかが知れている。
その程度の痛みでは、奴は狙いを逸らしたりはしないだろう。
今はとにかく、少しでも奴の攻撃を逸らせる事が必要だった。
それならば、炎魔法よりもいいものがある。
「届けぇぇぇ!!!」
加速した思考では、魔法の発動も驚くほどに早い。
後から動いたにもかかわらず、シーサーペントよりも早く魔法を発動させたハロルドは、その頭を狙ってそれを放つ。
それはステッキの先から放たれる、激しい水流であった。
彼はその威力によって、シーサーペントの狙いを少しでも逸らそうと試みていたのだった。
「キィィィィィィ!!!」
しかしそれは、間に合うことはない。
頭を狙った水流がそれを捉える前に、シーサーペントはその口腔から水のブレスを放っていた。
「くっ!間に合わなかった、でもっ!!」
当初の目的は果たせなかった試みも、今はその身を守っていることには変わりがない。
シーサーペントの頭を叩くことは出来なかった水流も、そのブレスを押し止めることは出来ている。
それはハロルドが放った水流が、シーサーペントの口元まで迫っていたからだ。
まだスピードの乗っていないブレスは勢いが弱く、ハロルドの魔法でも押し止めることが出来ていた。
叫び声を上げて、その口腔を開いたシーサーペントに、ハロルドは形振り構わずその場を飛び退いていた。
しかし彼が飛び退いた後に、襲いくる筈だった水流はいつまで待ってもやって来ることはない。
「なっ、どういう・・・くそっ、そういう事か!」
形振り構わない逃走は、ハロルドの態勢を完全に崩してしまっている。
それに向かってゆっくりと狙いを定めたシーサーペントは、今度こそはっきりとした殺意を込めてその口腔を開いていた。
(くっ、逃げられない!どうする、どうすればいい!?)
死が間際に迫ったためか、スローモーションに見える景色の中で、ハロルドは思考を加速させる。
彼の視界の中では、シーサーペントがその口腔内に眩い輝きを発している所であった。
(ステッキはまだこの手にある。こうなったら一撃を加えて怯ませるしか・・・何を選ぶ?それにあんなモンスターに、僕の魔法が通用するのか?えぇい、迷ってる暇なんてないぞ!)
全身を放り出すようにして身体を投げ出したハロルドも、その得物であるステッキを手放すことはなかった。
もはや逃げ出すことも出来ない状態に、彼はそれでシーサーペントを迎え撃つことを決意するが、それは彼自身も分が悪い賭けでしかないと分かっている事であった。
(奴は執拗に松明を狙っていた。そういえばさっきまでの戦いでも、炎魔法だけは避けていたかもしれない。単純に狙いを外してしまったんだと考えていたけど・・・それは違ったんだ。奴の弱点は火だ、間違いない。それなら、全力で炎魔法を・・・いや、そうじゃない!)
恐ろしく遅く流れる時間の中で、ハロルドは粉々に破壊された松明へと視線を向けていた。
無防備な状態のクリスが狙えたにもかかわらず、執拗にそれを狙っていたシーサーペントの姿を考えれば、奴は火が弱点なのだろう。
そう考え、それを突く炎魔法を唱えようとしていたハロルドはしかし、それを自ら否定する。
(僕の魔法では、奴に大したダメージなど与えられる筈がない!それが弱点だとしてもだ!今はとにかく奴の攻撃を逸らせるんだ!それなら炎なんかよりも、こっちが・・・いい!)
そう、炎魔法では駄目なのだ。
間違いなくシーサーペントの弱点であるそれを突いても、ハロルドの実力では与えられるダメージなどたかが知れている。
その程度の痛みでは、奴は狙いを逸らしたりはしないだろう。
今はとにかく、少しでも奴の攻撃を逸らせる事が必要だった。
それならば、炎魔法よりもいいものがある。
「届けぇぇぇ!!!」
加速した思考では、魔法の発動も驚くほどに早い。
後から動いたにもかかわらず、シーサーペントよりも早く魔法を発動させたハロルドは、その頭を狙ってそれを放つ。
それはステッキの先から放たれる、激しい水流であった。
彼はその威力によって、シーサーペントの狙いを少しでも逸らそうと試みていたのだった。
「キィィィィィィ!!!」
しかしそれは、間に合うことはない。
頭を狙った水流がそれを捉える前に、シーサーペントはその口腔から水のブレスを放っていた。
「くっ!間に合わなかった、でもっ!!」
当初の目的は果たせなかった試みも、今はその身を守っていることには変わりがない。
シーサーペントの頭を叩くことは出来なかった水流も、そのブレスを押し止めることは出来ている。
それはハロルドが放った水流が、シーサーペントの口元まで迫っていたからだ。
まだスピードの乗っていないブレスは勢いが弱く、ハロルドの魔法でも押し止めることが出来ていた。
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