ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

メイドは内密に話したい 1

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「では、私達が食事を取ってまいりますので、坊ちゃまには席を取ってもらってもよろしいでしょうか?」

 昼食を取るためにアトハース村の広場までやってきたエヴァン一行は、その混雑具合に早速二手に別れる事を考え始めていた。
 この混雑具合を考えれば、それはもっともな提案であろう。
 しかしそれを提案したアビーは、エルトンとケネスの二人を掴まえては、食事を取りに行く列へと加えようとしていた。

「いや、コレットさん。流石にレイモンド様をお一人にするのは不味いのでは?何なら、私もそちらに回りますよ」
「そうだぜ、ケネスの言う通りだ。運ぶのが心配なら、俺が二人分でも三人分でも持ってやるって」

 アビーの提案に真っ先に反対したのは、彼女の無理矢理引っ張られようとしていた二人であった。
 彼らからすればエヴァンは大事な金づるなのだ、それをこんな簡単に危険に晒す訳にはいかない。
 一切の相談がなくとも、二人の心はそれで一致している。
 そして何より、一人で席を取りに行かされる事に一番不安そうにしていたのは、エヴァンその人であった。

「ア、アビー・・・私もその、一人では不安なのだが・・・」

 広場にごったかえす人の数に、空いている席はほとんどない。
 あっても一つか二つがポツンと空いているだけであり、その周辺には柄の悪い冒険者達が飯を掻っ込んでいるのだ。
 そんな場所に一人で行けといわれれば、大人でも尻込みしてしまうかもしれない。
 それが貴族として生まれ育ち、甘やかされて育った少年ともなれば尚更だ。
 両手を胸の前へと置き、何やらもじもじと動かしているエヴァンは、不安そうな表情でアビーを見詰めると、一人にしないでとはっきりと懇願していた。

「・・・坊ちゃま。坊ちゃまは何をしに、ここまで来たのですか?」
「そ、それは・・・冒険だけど」
「そうです、冒険です。これから冒険に赴こうという者が、こんな所で怯んでいてどうするのです。むしろあんな者達など、軽く威嚇するぐらいが丁度いいのです」

 そんなエヴァンにアビーは優しくその肩へと手を置くと、諭すように語り始める。
 彼らはここに、冒険をしに赴いたのだ。
 そんな男がこんな安全な村の中で、何を怯んでいるのだと彼女は諭す。
 その言葉に怯えていたエヴァンの表情は見る見るうちに引き締まり、決意の秘めたものへと変わっていた。

「わ、分かった!やるよ!私にだって、それぐらい出来るのだ!見ていろ、アビー!!」
「それでこそ、坊ちゃまでございます」

 アビーの言葉に説得されてやる気を漲らせたエヴァンは、彼女へと指を突きつけると自らの雄姿を見ていろと宣言して駆け出していってしまう。
 そんな彼の姿を目にしてアビーが僅かに唇を歪めたのは、エヴァンの成長を喜ぶものではないだろう。
 そんな表情さえすぐに霧散させた彼女は今、勢い良く飛び出していったのはいいものも、一体どうしたらいいか分からずに戸惑っているエヴァンの背中を見詰めていた。

「いや、そうじゃないだろ?流石に危ないって―――」
「お二方、お話がありますのでこちらに」

 貴族とその使用人という二人の会話には割り込むのを躊躇ったエルトンも、エヴァンがその場にいなくなれば口を挟みもする。
 アビーの口車にまんまと乗せられて、一人荒くれ者達の群れへと向かっていったエヴァンを引き止めようとした彼の行動は、すぐにアビーによって阻止されてしまう。
 彼女はエルトンとケネスの二人の腕を掴むと、彼らの身体を引き寄せてその耳に小さく話があると告げていた。

「話?話ってそれは・・・あの坊ちゃまには聞かせられない話ですか?」
「流石はガスリー様、ご名答でございます」

 わざわざ潜めさせたアビーの声と、すでに遠くへと離れつつあるエヴァンにもかかわらず、それから遠ざかろうと動いた彼女の行動に、すぐにその意図を察してケネスはそれを言い当てている。
 それを真顔のままで褒め称えるアビーとは対照的に、エルトンは相棒が一体何を言っているんだと、不思議そうな表情をその顔に浮かべていた。

「ん?どういう事だ?それより、あいつを一人にさせちゃ駄目だろ?」
「いや、エルトン・・・流石に、ここまで言われたら気づくでしょ?」

 一人展開についていけていないエルトンは、今だにエヴァンの方へと心配そうな視線を向けている。
 そんな彼の反応に頭を抱えるケネスは、呆れたように相棒の振る舞いが信じられないと呟いていた。

「ご安心ください、アーネット様。坊ちゃまの事です、結局あの者達には近づけず、その辺をうろうろとしているだけで終わるでしょうから、アーネット様が心配されるような危険はございません」
「ふぅん。ま、あんたがそう言うならそうなんだろうけど・・・で、話ってのは何なんだ?」

 エルトンの心配に、アビーはエヴァンへとある種の信頼を持って、それを解消している。
 エヴァンの事だから危険に踏み込むことすら出来ないという、彼女の言葉はかなり酷いものであった。
 しかし今もうろうろと混雑したテーブルの周辺を彷徨っているエヴァンの姿を見れば、その言葉が嘘ではないと分かるだろう。

「これからの事で、お二人に内密に相談したい事が」
「これからって・・・あのダンジョンに行きたいって話しだろ?別に心配しなくったって、あんたら二人ぐらい俺らで守ってやるぞ?十分な額も約束されたからな、報酬分ぐらいは働くぜ?」

 エルトンから話を振られたアビーは、潜めた声で二人に内密に相談したい事があると持ちかける。
 彼女のそんな言葉に、エルトンは不思議そうな表情で首を捻るばかりだ。
 エヴァンとアビーの二人があのダンジョン、冒険者の友に行きたいという話は既に聞いている。
 そしてその護衛を二人が請け負うというのも、既に決まった話の筈だ。
 それ以上何を話す必要があるのだと、彼には不思議でしょうがなかった。

「エルトン、もう少し言葉遣いを・・・」
「ん?別にいいだろ?流石に俺だって向こうの坊ちゃん相手には、少しは気を遣うぜ?」
「そういう事じゃないんだけど・・・でも、エルトンがいう事も一理あります。安心してくださいコレットさん。僕達が必ず、貴方達を守りますから」

 エルトンの自分と話しているのと変わらない言葉遣いに、ケネスははらはらと視線を彷徨わせると、それを改めるように彼の耳元で囁いている。
 エルトンは彼のそんな言葉にも、自分はちゃんと気を遣っているとエヴァンの方へと目をやっていた。
 そういう事じゃないと頭を抱えるケネスが恐れているのは、彼女の口からエヴァンにそれが伝わってしまう事か、それとも貴族の使用人という立場も自分達とは違うと言いたかったのか。
 エルトンを説得することを諦めたケネスはしかし、彼の発言自体は正しいとそれに賛同している。
 冒険者としての実力に相応の自負を持つ彼らからすれば、それを疑われることは沽券に関わる問題だ。
 如何に温厚なケネスでもそれを許すことなど出来ないと、その真剣な瞳は物語っていた。
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