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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
勇者達の冒険は今始まったばかり 1
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「さて、と・・・これで後は、俺がうまく勇者様を守ればいいんだよな?」
ヴェロニカ達へと勇者の来訪を告げたカイは、通話のために手をつけていた壁からそっと手を離していた。
彼は自らのすぐ後ろで周囲を警戒している二人の冒険者に聞かれないように、小声でそっと呟いては自らの行動について確認している。
彼がヴェロニカ達に勇者の来訪を教え、その抹殺計画の発動を促したのは、彼女達からの信望を失わないためであろう。
後は彼女達に計画を妨害していると気付かれないまま、勇者を守りきる事が出来れば彼の勝利となる。
その肝心の勇者、エヴァンは初めて訪れたダンジョンに目を輝かせながら、辺りをきょろきょろと窺っている所であった。
「ア、アビー!あれは何だ!?ほら、あのキラキラした奴!!」
「坊ちゃま、あれは雷光虫でございます。先ほど、入り口の方でもお見掛けしたと思ったのですが・・・?」
興奮した様子で辺りを飛び回っている光る虫を指し示しているエヴァンは、その興奮をアビーにも伝えようと上ずった声を上げている。
アビーはそんな彼の言葉に簡潔に答えていたが、一つだけ気になる事があったようだ。
エヴァンが今、興奮しながら指し示している虫はこの部屋よりも、先ほど通った入口に多く見られていた。
彼女は彼が何故そこでそれを尋ねずに、今ここでそれを知りたがったのかと疑問に思ったようだった。
「い、いや・・・あの時は怖くて、足元しか・・・そ、そうか!そういう名前の虫なのか!!確かに、雷光のようにピカピカと輝いているな!!」
初めて訪れるダンジョンは、それはそれは恐怖を掻き立てるものだろう。
ましてやこのダンジョンの入口はあえて照明を施さず、自然な洞窟のままの暗さを演出しているのだから。
エヴァンはそんな暗いダンジョンの入口に怯えてしまい、足元だけをじっと見詰めては前へと歩みを進めていたのだろう。
その事をごにょごにょと誤魔化した彼は、殊更はっきりとした大声を上げては、その虫の名前について感心した様子をみせていた。
「勇者の坊ちゃんよぅ・・・楽しそうなところ悪いが、さっさと先に進まねぇか?大体そんなのにいちいち驚いてたら、この先身体がもたねぇぞ?」
観光気分で辺りをきょろきょろと見回しているエヴァンに、エルトンが若干呆れたように声を掛けてくる。
ここはまだ、ダンジョンを入ったばかりの最初の部屋でしかない。
そんな場所に何時までも居座っていては、どれだけ経っても探索が終わることはないと、彼は自らの得物で肩を軽くトントンと叩きながら文句を零していた。
「う、うむ。そうだな、アーネットの言う通りなのだ。しかし、アーネットよ。ここはもうダンジョンの中なのだろう?何故この部屋には魔物が出ないのだ?私はダンジョンにはもっと、こう・・・魔物が一杯出てくるものだと思っていたぞ?」
「レイモンド様の認識は、概ね正しいですよ。ですがそれはこのダンジョン以外の話ですね。このダンジョンはなんというか・・・ちょっと特殊なので」
「特殊?確かに色々と噂になっているのは聞いているが、どう特殊なのだ?」
エルトンの苦言に僅かにしゅんとした様子をみせていたエヴァンもすぐに立ち直ると、このダンジョンが彼の抱いていたイメージと違うと疑問を浮かべていた。
確かに彼の言う通り、この部屋に入ってそれなりの時間が経っているにもかかわらず、ここに魔物が出現する気配はない。
魔物からすればエヴァンのように無防備に辺りをきょろきょろと窺っている人間など、格好の獲物でしかないだろう。
そんな格好の獲物がいるにもかかわらず、一向に出てくる気配のない魔物の姿にエヴァンが疑問を抱いていると、ケネスがこのダンジョンはちょっと特殊なのだと話していた。
「簡単に言うと、この部屋は休憩所なんですよ。なので魔物も出ないし、休憩に必要なものも用意されているんです。ほら、あそこを見てください」
「ん、何だ?あれは・・・水が流れているのか?」
この部屋が休憩所として用意されていると語るケネスは、部屋の片隅を指差してそこを見るようにエヴァンに促している。
ケネスの指示に素直に従ったエヴァンがそちらに目を凝らすと、部屋の片隅に流れ続けている水流の姿を見つけることが出来るだろう。
それは部屋の隅に小さな窪みが出来ており、その手前から奥へと絶えず水が流れ出ているというものであった。
「あれは飲んでも大丈夫な水なんですよ。それにほら、向こうに小部屋みたいになっている場所があるでしょう。あそこは用を足すようのスペースになっているんです」
僅かな傾斜がついているのか、勢いを減じさせる事なく流れていく水流は、やがて小部屋のようなスペースへと吸い込まれていく。
ケネスの話ではそこは冒険者達が用を足すようのスペースになっているらしく、よく見てみれば入口と思しき場所には布が掛かっており、中の様子が窺えなくなっていた。
「ほほぅ!水洗式になっているのか!それは凄いな!!そんなもの我が国でも、ごく一部にしか普及していないというのに!」
ケネスの解説に、エヴァンも思わず感心の声を上げている。
彼はそのままそこへと歩み寄り中を覗こうとしていたが、それは汚いとアビーによって制止させられてしまっていた。
「そーゆーのはいいからよー、もう先に進もうぜ?軽くでもいいから、早く戦わせてくれや。前来た時も、ほとんどやれなかったんだからよぉ!なぁ、キルヒマンさんもそう思うだろ?・・・おーい、キルヒマンさーん。聞いてっかー?」
ついさっき先を急ごうと声を掛けたばかりなのに、再び観光案内へと戻ってしまったエヴァンの姿に、エルトンは焦れるように再び声を掛けている。
エルトンは一行の先導役でもあるカイへと同調を求めていたが、彼はその声に反応を示そうとはせずに、何やら壁に向かってぶつぶつと呟き続けていた。
「もう少しなんか言った方が良かったか?こう、勇者を直接狙うなー、とか?いや、流石にそれは不味いか。それより、そもそもちゃんと伝わったのか?向こうの応答も確認せずに、一方的に話しただけだったが・・・やはり、もう一度―――」
ヴェロニカ達と通話した壁から手こそ離したものの、何やらぶつぶつ呟いているカイは、その場をうろうろと彷徨っていた。
彼はどうやらもっと出来た事があったのではないかと、悩んでいるようだ。
そうして頭を悩ませる中で、そもそも自らの指示がうまく伝わったかも不安になってきた彼は、再び通話を開始しようと壁へと手を伸ばす。
しかしそれが許されるには、彼は長い時間悩みすぎてしまっていた。
ヴェロニカ達へと勇者の来訪を告げたカイは、通話のために手をつけていた壁からそっと手を離していた。
彼は自らのすぐ後ろで周囲を警戒している二人の冒険者に聞かれないように、小声でそっと呟いては自らの行動について確認している。
彼がヴェロニカ達に勇者の来訪を教え、その抹殺計画の発動を促したのは、彼女達からの信望を失わないためであろう。
後は彼女達に計画を妨害していると気付かれないまま、勇者を守りきる事が出来れば彼の勝利となる。
その肝心の勇者、エヴァンは初めて訪れたダンジョンに目を輝かせながら、辺りをきょろきょろと窺っている所であった。
「ア、アビー!あれは何だ!?ほら、あのキラキラした奴!!」
「坊ちゃま、あれは雷光虫でございます。先ほど、入り口の方でもお見掛けしたと思ったのですが・・・?」
興奮した様子で辺りを飛び回っている光る虫を指し示しているエヴァンは、その興奮をアビーにも伝えようと上ずった声を上げている。
アビーはそんな彼の言葉に簡潔に答えていたが、一つだけ気になる事があったようだ。
エヴァンが今、興奮しながら指し示している虫はこの部屋よりも、先ほど通った入口に多く見られていた。
彼女は彼が何故そこでそれを尋ねずに、今ここでそれを知りたがったのかと疑問に思ったようだった。
「い、いや・・・あの時は怖くて、足元しか・・・そ、そうか!そういう名前の虫なのか!!確かに、雷光のようにピカピカと輝いているな!!」
初めて訪れるダンジョンは、それはそれは恐怖を掻き立てるものだろう。
ましてやこのダンジョンの入口はあえて照明を施さず、自然な洞窟のままの暗さを演出しているのだから。
エヴァンはそんな暗いダンジョンの入口に怯えてしまい、足元だけをじっと見詰めては前へと歩みを進めていたのだろう。
その事をごにょごにょと誤魔化した彼は、殊更はっきりとした大声を上げては、その虫の名前について感心した様子をみせていた。
「勇者の坊ちゃんよぅ・・・楽しそうなところ悪いが、さっさと先に進まねぇか?大体そんなのにいちいち驚いてたら、この先身体がもたねぇぞ?」
観光気分で辺りをきょろきょろと見回しているエヴァンに、エルトンが若干呆れたように声を掛けてくる。
ここはまだ、ダンジョンを入ったばかりの最初の部屋でしかない。
そんな場所に何時までも居座っていては、どれだけ経っても探索が終わることはないと、彼は自らの得物で肩を軽くトントンと叩きながら文句を零していた。
「う、うむ。そうだな、アーネットの言う通りなのだ。しかし、アーネットよ。ここはもうダンジョンの中なのだろう?何故この部屋には魔物が出ないのだ?私はダンジョンにはもっと、こう・・・魔物が一杯出てくるものだと思っていたぞ?」
「レイモンド様の認識は、概ね正しいですよ。ですがそれはこのダンジョン以外の話ですね。このダンジョンはなんというか・・・ちょっと特殊なので」
「特殊?確かに色々と噂になっているのは聞いているが、どう特殊なのだ?」
エルトンの苦言に僅かにしゅんとした様子をみせていたエヴァンもすぐに立ち直ると、このダンジョンが彼の抱いていたイメージと違うと疑問を浮かべていた。
確かに彼の言う通り、この部屋に入ってそれなりの時間が経っているにもかかわらず、ここに魔物が出現する気配はない。
魔物からすればエヴァンのように無防備に辺りをきょろきょろと窺っている人間など、格好の獲物でしかないだろう。
そんな格好の獲物がいるにもかかわらず、一向に出てくる気配のない魔物の姿にエヴァンが疑問を抱いていると、ケネスがこのダンジョンはちょっと特殊なのだと話していた。
「簡単に言うと、この部屋は休憩所なんですよ。なので魔物も出ないし、休憩に必要なものも用意されているんです。ほら、あそこを見てください」
「ん、何だ?あれは・・・水が流れているのか?」
この部屋が休憩所として用意されていると語るケネスは、部屋の片隅を指差してそこを見るようにエヴァンに促している。
ケネスの指示に素直に従ったエヴァンがそちらに目を凝らすと、部屋の片隅に流れ続けている水流の姿を見つけることが出来るだろう。
それは部屋の隅に小さな窪みが出来ており、その手前から奥へと絶えず水が流れ出ているというものであった。
「あれは飲んでも大丈夫な水なんですよ。それにほら、向こうに小部屋みたいになっている場所があるでしょう。あそこは用を足すようのスペースになっているんです」
僅かな傾斜がついているのか、勢いを減じさせる事なく流れていく水流は、やがて小部屋のようなスペースへと吸い込まれていく。
ケネスの話ではそこは冒険者達が用を足すようのスペースになっているらしく、よく見てみれば入口と思しき場所には布が掛かっており、中の様子が窺えなくなっていた。
「ほほぅ!水洗式になっているのか!それは凄いな!!そんなもの我が国でも、ごく一部にしか普及していないというのに!」
ケネスの解説に、エヴァンも思わず感心の声を上げている。
彼はそのままそこへと歩み寄り中を覗こうとしていたが、それは汚いとアビーによって制止させられてしまっていた。
「そーゆーのはいいからよー、もう先に進もうぜ?軽くでもいいから、早く戦わせてくれや。前来た時も、ほとんどやれなかったんだからよぉ!なぁ、キルヒマンさんもそう思うだろ?・・・おーい、キルヒマンさーん。聞いてっかー?」
ついさっき先を急ごうと声を掛けたばかりなのに、再び観光案内へと戻ってしまったエヴァンの姿に、エルトンは焦れるように再び声を掛けている。
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