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「お前、こんな所に刺青なんか入れて」
「もう何回も見てるやろ」
「誰にも見せてないやろな」
「見せてへんよ。辰也は特別やから……」
「またそんな煽る様な事言いやがってっ」
友彦の上で辰也が激しく動き、部屋に淫猥な水音が響く。その音が暫く続いた後、入れ替わりに全力疾走したような息遣いと呻きが聞こえ辰也布団に倒れ込んだ。脇腹には薄紫色の花の刺青が彫ってある。それが何の花なのか友彦は知らない。
「僕も……イッてもた」
「ごめんな、痛なかったか」
「大丈夫やけど、どないしたん……」
いつもやきもきする程なかなか達しないのに今日は性急だった。
「俺は特別や、なんて嘘つくから」
「特別なんはほんまやろ」
「セフレは特別とは違う。お前の特別は、あの田中とかなんとかいうイケ好かん奴やろ」
「イケ好かんて、ええ人やで。僕が困ってる時助けてくれたんやもん。救世主やもん」
「お前はあいつの事が好きやから、色んなもんが見えてへんのや」
「そやけど好きになってもたんや」
友彦は布団を引き寄せて包まった。辰也は少し肩を落として宥める。
「分かってるて。悪かった。もう悪口言わんから。ほら、身体拭いたろ」
「ええよ!自分で出来る」
「せやけど、結構激しくしてしもたから、腰……」
言葉を遮り友彦は布団から出て服を着た。この部屋には何度も来たことがあったが、二人がこんな関係になったのは最近の事だ。
辰也と友彦は中学からの幼馴染でずっと一緒につるんでいる。入れてきた刺青を友彦が見せ、タイミングがいいのか悪いのか、実は少し前に入れたのだと辰也も自分のを見せた。そこから何故この刺青を入れたのか友彦が告白し、惚れた腫れたの話から男同士のセックスの仕方を知っているのかと話が転がり、ノーマルの男が好きだと言う友彦にやり方も知らないで告白して、付き合えたとしても何も知らなかったらその先危ういぞと忠告されてセックスを練習する運びとなったのだ。
勿論初めは断った。初めては自分の好きな人としたい、そう思っていた。だが勿論興味もあり、練習する事にしたのだが、その度に腹の奥が切なくなって堪らなくなった。若干二十歳の肉体が快楽に抗えるはずもなく、友彦はセックスに溺れた。快楽を知ってしまった体が切なく疼き、そんな疼きを親友に癒して貰っているという現実に自己嫌悪が募る。
「親友とセフレになるなんて最悪や」
友彦は辰也にもう止めようと何度も言ったが結局ずるずると関係は続いていた。
「今度な、田中が入っとるサークルの子らと飲むことになったんやけど、友も来る?」
「えっ、いいの?」
「ええよ」
田中は同じ大学の学生で女癖が悪いと有名だ。別れ方も非道いと聞く。だが辰也は友彦にその事を伝えていない。それを伝える前にどれ程田中が好きなのか友彦から聞かされたからだ。あの大人しい友彦が刺青を入れて自分らしくなりたい、そして出来れば男に告白しようと考えているだなんて思いもしなかった。何より男が好きだという事に驚いた。友彦は色も白く線も細いがなよなよしているわけでもないし、そんな素振りを見せた事もない。なぜもっと早く言ってくれなかったのだと苛立ちもあるが、何より自分の鈍感さに腹が立って仕方がなかった。そしてこのまま腐れ下道と聞き及ぶ田中に、大事にしてきた友彦が傷つけられるのを見るのが怖かった。勇気をもって告白したとして、玉砕し、挙句の果てにこいつはホモなんだと性癖を言いふらされたら、気の弱い友彦は学校を辞めてしまうかも知れない。そうなったら一生を棒に振る事になる。あんな男のためにそんなリスクを負うべきじゃない。すべては杞憂に終わるかもしれないが、それでも辰也は友彦を守りたかった。何しろ中学の頃から辰也はずっと友彦を想い続けているのだから。
「ほな、来週の日曜日、夜七時にキタ矢次やから予定空けときや」
「うん、ありがとう、辰也」
本当に嬉しそうに笑う友彦を見て辰也は自分の刺青を見下ろす。入れた時より濃くなっている。そんなもんだろうかと首を捻った。
「もう何回も見てるやろ」
「誰にも見せてないやろな」
「見せてへんよ。辰也は特別やから……」
「またそんな煽る様な事言いやがってっ」
友彦の上で辰也が激しく動き、部屋に淫猥な水音が響く。その音が暫く続いた後、入れ替わりに全力疾走したような息遣いと呻きが聞こえ辰也布団に倒れ込んだ。脇腹には薄紫色の花の刺青が彫ってある。それが何の花なのか友彦は知らない。
「僕も……イッてもた」
「ごめんな、痛なかったか」
「大丈夫やけど、どないしたん……」
いつもやきもきする程なかなか達しないのに今日は性急だった。
「俺は特別や、なんて嘘つくから」
「特別なんはほんまやろ」
「セフレは特別とは違う。お前の特別は、あの田中とかなんとかいうイケ好かん奴やろ」
「イケ好かんて、ええ人やで。僕が困ってる時助けてくれたんやもん。救世主やもん」
「お前はあいつの事が好きやから、色んなもんが見えてへんのや」
「そやけど好きになってもたんや」
友彦は布団を引き寄せて包まった。辰也は少し肩を落として宥める。
「分かってるて。悪かった。もう悪口言わんから。ほら、身体拭いたろ」
「ええよ!自分で出来る」
「せやけど、結構激しくしてしもたから、腰……」
言葉を遮り友彦は布団から出て服を着た。この部屋には何度も来たことがあったが、二人がこんな関係になったのは最近の事だ。
辰也と友彦は中学からの幼馴染でずっと一緒につるんでいる。入れてきた刺青を友彦が見せ、タイミングがいいのか悪いのか、実は少し前に入れたのだと辰也も自分のを見せた。そこから何故この刺青を入れたのか友彦が告白し、惚れた腫れたの話から男同士のセックスの仕方を知っているのかと話が転がり、ノーマルの男が好きだと言う友彦にやり方も知らないで告白して、付き合えたとしても何も知らなかったらその先危ういぞと忠告されてセックスを練習する運びとなったのだ。
勿論初めは断った。初めては自分の好きな人としたい、そう思っていた。だが勿論興味もあり、練習する事にしたのだが、その度に腹の奥が切なくなって堪らなくなった。若干二十歳の肉体が快楽に抗えるはずもなく、友彦はセックスに溺れた。快楽を知ってしまった体が切なく疼き、そんな疼きを親友に癒して貰っているという現実に自己嫌悪が募る。
「親友とセフレになるなんて最悪や」
友彦は辰也にもう止めようと何度も言ったが結局ずるずると関係は続いていた。
「今度な、田中が入っとるサークルの子らと飲むことになったんやけど、友も来る?」
「えっ、いいの?」
「ええよ」
田中は同じ大学の学生で女癖が悪いと有名だ。別れ方も非道いと聞く。だが辰也は友彦にその事を伝えていない。それを伝える前にどれ程田中が好きなのか友彦から聞かされたからだ。あの大人しい友彦が刺青を入れて自分らしくなりたい、そして出来れば男に告白しようと考えているだなんて思いもしなかった。何より男が好きだという事に驚いた。友彦は色も白く線も細いがなよなよしているわけでもないし、そんな素振りを見せた事もない。なぜもっと早く言ってくれなかったのだと苛立ちもあるが、何より自分の鈍感さに腹が立って仕方がなかった。そしてこのまま腐れ下道と聞き及ぶ田中に、大事にしてきた友彦が傷つけられるのを見るのが怖かった。勇気をもって告白したとして、玉砕し、挙句の果てにこいつはホモなんだと性癖を言いふらされたら、気の弱い友彦は学校を辞めてしまうかも知れない。そうなったら一生を棒に振る事になる。あんな男のためにそんなリスクを負うべきじゃない。すべては杞憂に終わるかもしれないが、それでも辰也は友彦を守りたかった。何しろ中学の頃から辰也はずっと友彦を想い続けているのだから。
「ほな、来週の日曜日、夜七時にキタ矢次やから予定空けときや」
「うん、ありがとう、辰也」
本当に嬉しそうに笑う友彦を見て辰也は自分の刺青を見下ろす。入れた時より濃くなっている。そんなもんだろうかと首を捻った。
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