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chapter 17
しおりを挟むエレベーターが開くと、すぐ目の前には1つのドアしかなかった。
(これって監禁されたらアウトな場所だな)
海静はそう思いながら染谷とドアの前に立った。これが玄関だろう。これしかないもんな…。
ドアとエレベーターの空間内にはセキュリティカメラが2台角に設置されている。
「玄関から入るものも監視できますので、不審者の侵入は不可と考えて頂ければご安心かと。」
「そうだな…。」
染谷が今度は別のカードを出してドアのセンサー部分にかざすと、玄関の鍵は解錠された。玄関は違うカードの様だ。
「さぁ、どうぞ。私と海静様の住居となります。」
玄関ドアを開けると大きなシューズクローゼットが右側にあり、それは下から天井までの高さがある。
右奥にコートを何着かかける為のフックのついた壁。
それ以外は何もない、真っ白な空間だった。申し訳程度の靴を脱ぐ段差だけある。そこにスリッパは2つ揃えて置いてあった。
染谷はその内の1つに足を入れ、左に続く廊下を歩いて先導した。
玄関から入って10秒が経っただろうか、後ろ手に位置していたドアの施錠音が鳴った。オートロック……。
「お、お邪魔します……」
子犬のように不安げな海静を振り返り、染谷はフッと微笑む。
「もうここは貴方の家ですから、正しくは “ただいま” ですね。」
「…おぉ…… ただいま……。」
海静もスリッパを履き、染谷に続く。
左へ続いていた廊下を抜けると、すぐに広い空間に繋がった。
!!!!!
「なんなんだこの広さ!」
開放感のあるリビングが正面、右手前に大きなキッチン。
海静はあたかもホテルのスイートルームの様なリビングに絶句した。
(この空間の取り方は、これはまさかのフロア全て居住空間というやつか?TVでよく居る金持ちのマンションがこんな作りだった様な…。)
「ここは組織が用意した私たちの家です。念の為、入居の直前に盗聴器、盗撮カメラ等仕込まれていないかは確認済みです。ご安心を。」
田舎で母親と暮らしていた一軒家もさほど小さいものではなかったが、全部合わせてもこちらの方が2倍は広いだろう…
「…すげぇな……。」
「そうですね。少し広めの家にして頂きました。」
染谷はサラッと話した。
リビングには右側と左側、双方奥へ続く廊下が繋がっている。
「私の部屋はリビングの左側となります。海静様の部屋は右側へ続く廊下の奥となります。お荷物はそちらへ すでに移動しております。失礼かと思いましたが、衣類等全て収納させて頂きました。」
いや、むしろ何から何までしてもらって申し訳ない。
海静はリビングにあった大きなソファに、ショックを隠せない顔で腰を下ろした。
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