オッドアイの守り人

小鷹りく

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chapter 35 石原さん

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 俺が目を覚ましてから、もう一日だけ様子を見て病院で過す事になり、同じように休んでは俺の体裁が悪くなると言い、染谷は俺が目覚めた次の日に会社へ出社すると話した。染谷の代わりに来たのはコンシェルジュの石原さんだった。


石原さんは普段着で来たので、一度しか顔を見ていなかったから最初は誰だか認識できなくて少しびっくりしたが、染谷が信用できる人だから大丈夫だというので、信用する事にした。中野は裏切り者だとすぐに判ったし、二人にさせると言うことは石原さんは信頼できる確実な人なんだろう。石原さんはどこか染谷の雰囲気を彷彿とさせる空気を纏っていた。染谷ほどではないが眼鏡をつけていても分かる綺麗な顔立ちの人だ。

石原さんは警戒する俺と距離をとって入り口近くに座り話しだした。

「海静様、私は伊集院家の一族の家系でございます。中野のように組織がリクルートした人間とは違いますので、ご安心頂いて大丈夫で御座います。

伊集院家から昔分家しており、姓は別ですが染谷様家系と同様、伊集院家を守ってきた家系で御座います。」

この世は俺の知らない事ばかりで出来ている。父親が出家していなければこんな事もなかったんだろうが、知らない事ばかりで周りに聞かされるのはあまりいい気分じゃないな、裸の王様の気分だ。

「そうか…。俺は知らない事ばかりだな…。」

「―――いえ、知らない方がよい事も多く御座います。」

染谷父と同じ事を言うんだな、そう言って俺は買って来てもらっていた雑誌に目を落として視線を外す。


家に帰ったら染谷に全部聞いておこう。知らない事ばかりではまた今回のように気絶してしまうかもしれない。裏切られて気絶したなんて、国の宝となる人とは思えぬ失態だ。宝だなんてそんな実感も沸かないしな…。


そういえば会社はもう4日も休んでいる、明日は出社しようか。体も大丈夫だし、一日だけでも、と思いながら出された病院食を食べ、石原さんと少し世間話をして、午後15時には退院準備をして着替えた。

石原さんに荷物を持ってもらい、マンションまでタクシーで移動した。石原さんはタクシーで隣に乗ったが、曲がる箇所箇所で後方を確認していた。尾行されていないか警戒しているようだ。

マンションの部屋の前まで見送ると、ドアを開けて石原さんは中には入らなかった。お礼にお茶でもどうかと言うと丁重に断られた。

「染谷様には入れていいのは海静様だけだとおっしゃいました。誰かが来ても決して中に入れてはなりません。中へどうぞ。何か御座いましたら、何でもお申し付け下さい。本日は私が一日担当ですので。ではこれで。」

優しく手を玄関へと伸ばし、俺が入ると石原さんはそっと玄関のドアを閉めて去っていった。

「ただいま…」

染谷はまだ帰っていない。家に着いたのは16時だ。一日中石原さんと居たので少し気を遣ってどっと疲れた。

リビングに荷物を置くと、俺はそのままソファでごろんと転ぶと眠りに落ちてしまった。
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