オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

空の旅

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 後で石原に聞くと結婚のタイミングが計れずに、最近東とよくケンカになるのだと聞いた。恐らく海静様が見つからないから落ち着かないのだろう。結婚となるといつまで経ってもいいと言う代物ではない。私にはまるで南極に行くのと同じくらい縁遠い話だが、二人にとっては目と鼻先の未来だ。

「結婚はお前達のタイミングですればいいんだ。海静様が見つかるまでなんて言ってたら、いつになるか分からない。」
「そうなんですが…。染谷様の事も心配だし…。」
「私が?私の事など気にしないでくれ。東に逆恨みされてしまうじゃないか。」
「いえ、東も気にしていますし…。」
「何だ、能力者も守り人もお前達の結婚を邪魔するばかりだな…情けない。」
 人の恋路にも水を差しているなんて、何とも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「いえ、彼女には香港から戻ったらプロポーズするつもりです。海静様が見つかるといいんですが。」
「女性を長く待たせるのは良くない。日本に帰ったらと言わず、私や海静様に遠慮しないで、自分達のタイミングで幸せになって欲しい。余りにも申し訳なさすぎる。それに東が引く手数多なのを知っているだろう。他の奴にさらわれる前に、ちゃんと捕まえておかなければ後悔するぞ。」
「…はい。」

 何だか自分で言っていて、どこか人ごとに聞こえないのは何故だろう。

 香港行きの飛行機に乗るため、私と石原は慌ただしい喧騒から逃れて国際線のラウンジで静かに話していた。

 座って話し込む私達をそっちのけで、東はラウンジに入るのが始めてらしく楽しそうにラウンジ内の雑誌を物色したり飲み物をお代わりしたりウロウロしている。

「私ビジネスのラウンジに入るなんて初めてです。嬉しいぃ。飲み放題でおやつも食べ放題なんて!」
「だから遊びに行くんじゃないんだぞ?」
「わかってるよ。でも楽しまないと損じゃない。折角皆んなで来れたんだし。私なかなか海外行くチャンスなかったので。」
「遠足気分じゃないか、すいません、染谷さん。」
「ふっ。いいじゃないか、楽しいならそれはそれで。」
「あっ!染谷さんやっと笑ったー。」
 東が私を指差してにこりとした。
「え?」

「だって、最近全然笑ってなかったでしょう?顔の筋肉がずっと悲しい顔になってましたよ。海静様に会えるかも知れないんだから、少し顔の筋肉緩めて置きましょう?」

「あぁ…そうだな。」

 気を遣わせてばかりだ。やっと重い腰を上げて彼を探しに行くんだ。不安の方が大きいが、二人が居てくれる。こんなに自分の心が脆くなっていたなんて。

 石原と東は私が笑うと喜んだ。尊い仲間達だ。私は何を躊躇っていたのだろう。彼を護る使命を全うしよう。私は一人ではない。会うのを怖がるのはお門違いだった。彼が幸せに生きていたらそれでいいのだ。護られずとも安全に暮らしているのなら、私が要らぬならそれでもいい。新しい人生を歩みだすのも悪くない。不幸中の幸いに、彼との記憶は何もない。楽しい思い出も無ければ、悲しむ思い出もない。あるのは紙の記録だけだ。

 私は認めたくない現実を受け入れたくなくて、彷徨っていたんだ。

 心が少し軽くなった。重たい荷物は預けてある。短い空の旅に淡い期待を乗せて飛行機は飛び立った。



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