現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 ラヂオ体操の歌を覚えていますか?

 新しい朝がなんとやらって歌詞のあれ。

 スキル取得の超絶頭痛から俺の意識はフェードアウト、鈍い頭痛が残った新しい朝は、希望の朝にはならなかった。

 透明になったスキルオーブを宝物棚に陳列し、変な格好での睡眠で固まった身体を伸びで戻した。

 それから収納袋からマチェットを取り出し、指先に薄く切り傷を付ける。

 出て来た傷から血液を絞り出し、収納袋の外側と内側に塗りたくっておいた。

 これで俺しか使えなくなったはずだ。

 それから着替えて、今日の探索の準備をしてから朝食をとる。

「あんた今日もダンジョンに行くの?無理はしないようにね」、とオカンからのありがたい心配のお言葉を頂戴し、荷物を持って桜ダンジョンに向かった。

 今日も貸切状態の駐輪場にランボルギーニを駐車し、誰も居ないのをいい事に、駐輪場で装備を整える。

 準備が完了した俺は、ゲートに向かった。

 今日は昨日よりもゲート前が空いており、そこまで待たされる事なくゲートに辿り着いた。

 探索者証を渡して入場の処理をして貰っている最中、係員のおじさんに質問をした。

「すいません。ダンジョンって泊まり込みで探索しても良いですか?少し奥まで行きたいのですが、当日中に戻って来る自信がないので」

「2階以降に入る人達は泊まりの人は何人も居るよ。でもお兄ちゃん今日で3日目だろう?泊まるなとは言わないけど命あってのものだねだ。自分の能力に見合った潜り方をしなよ・・・。っと全部OKだ。今日も安全に行ってらっしゃい!」

 おじさんに送り出された俺はゲートを通ってダンジョンに入った。

 泊まりはOKと言っていたから、今日は2階を探索してみようと思う。

 2階に出現するモンスターは、スライム、ゴブリン、コボルト、ファングボアと例のガイドに書いてあった。

 俺は階段室まで最短ルートで移動をする事にして、2階へと降りる階段へ急ぐ事にした。

 道中スライムとゴブリンと遭遇するも、棍の一撃で仕留められる為、戦闘に費やす時間はそこまで長くはない。

 他の探索者の戦い方を見た事が無いので比較は出来ないが、俺の戦闘時間は短い方だと思う。

 まぁ1階に限ってだが。

 何度目かの戦闘を終えた俺は、ドロップ品を収納袋に放り込むついでに飲み物を出して、水分補給を兼ねた小休止を取っていた。

「こんな時、転移とか使えたらなぁ・・・。階段室まであっというまに着くんだけどなぁ・・・」

 ボソッと呟いた瞬間目の前の景色が変わり、階段室に立っていた。

 現実を理解出来ない俺。

 先程小休止を取っていた場所は、まだゲートとモンスターハウスの中間くらいの位置、進捗率で言えば良くて25%くらいの場所だった。

 それが今は階段室にいる。

 もしかして俺が取得したスキルの中に[転移]スキルがあったのか?

 とにかくワープ系のスキルを取得出来たのであれば、時間を有効に使う事が出来る。

 自宅からダンジョンまでの通勤では人目が気になるから使えないが、ダンジョンの中では話は別だ。

 1階層で言えば、階段室までの片道数時間を短縮出来るだけでもありがたい!

 これが2階、3階と、目的地がどんどん深くなれば移動時間だけでもバカにならない。

 俺はとんでもないスキルを手に入れてしまったようだ。

 興奮を隠し切れないまま、俺は階段を降りて行った。


 そして初めて2階層に来たんだが、見た目は1階と変わらない立派な石造りだった。

 俺は地図を取り出し、2階の目標地点を決める。

 ふむふむ、なるほど、2階にも1階と同様に赤く塗られた部屋があった。

 入るか入らないかは現時点ではわからないが、取り敢えず赤く塗られた部屋に辿り着くのが今日の最大目標で、新しいモンスターのコボルトとファングボアと最低1回づつは戦うのも目標にしよう。

 今日の動き方が決まった俺は、2階のモンスターハウスと思われる部屋を目指して歩き始めた。

 暫く歩くとスライムとゴブリンが出て来たので、棍で瞬殺してドロップ品の回収を行う。

 それからまた進み始めたのだが、暫く歩くと目の前に二足歩行の犬が現れた。

 コボルトだ・・・。

 ゲームやアニメでは犬の頭を持つ獣寄りの獣人って形で描かれている事が多いが、目の前に居るリアルコボルトはまんま二足歩行の犬だった。

 唸り声を上げながらよちよち歩きで近付いて来る。

 可愛らしい歩き方と牙を剥いた凶暴な顔がアンバランスではあるが、牙を剥いた以上は[戦闘の意思が有り]と取らせて貰って、全力でお相手させていただく事にする。

 因みに俺は犬派だ!ガチガチの犬派だ!

 愛するワンちゃんに攻撃はしたくないが、向かって来るなら仕方がない。

 獰猛な唸り声を上げながら、可愛らしくよちよち歩いて来るコボルトの脳天目掛けて、棍を振り下ろした。

 棍はコボルトの頭に当たった時、骨を砕く様な不快な音を出しながらコボルトを沈黙させた。

 一撃だった・・・。

 俺に倒されたコボルトはドロップ品を残して消えていったが、コボルトが消えていく後方に、地面を足で掻きながら「フンスフンス」言っている大きな茶色い塊が見える。

 ファングボアだ!

 連戦にはなるが、こちらのダメージは皆無。

 手早くコボルトのドロップ品を拾い上げて、リュックに放り込んでから棍棒を構え直す。

 気合いを十分溜めたファングボアが『ドドドドドッ!』っと地面を蹴る音を響かせながら突進して来た。

 よく[猪突猛進]猪は真っ直ぐにしか走れません!って言われているが、あれは真っ赤な嘘だ。

 そこそこのスピードに圧倒的な質量を加えた突進をする猪の機動力は、その体でどうやって動いているの?って言いたくなる程高い。

 多少スピードは落ちるが突進中も左右に曲がる事が出来るし、再加速する際の加速力も半端じゃなく高い。

 そして何よりも怖いのは、質量を伴った体当たりではなく、牙による突き上げだ。

 あいつらは目標物に頭が触れた瞬間、器用に頭をしゃくり上げて牙による攻撃をして来る。
 
 鋭利ではないが、人間を切り裂くのには十分過ぎるスペックを持った牙での突き上げは、受ける場所によっては致命傷となる。

 そんな身近な猛獣を強化したようなモンスターが突進して来ている。

 避けてもすぐに軌道修正して追撃して来るし、受け止めようとすれば突き上げをして来る。

 迫り来るファングボアに対抗する手段を思い付いた俺は、ファングボアが近付くのを待っていた。

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