現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 翌朝、絶命する事なく目覚める事が出来たが、目覚めは最悪だった。

 あれほどの激痛が全身を駆け回っていたのだが、不思議と痛みは残っていなかった。

 だが、鼻血のせいで顔中が血だらけになっており、その血が乾いてパリパリになっている。

 俺は家族に見つからない様に魔界を抜け出し、洗面所に行って乾いた血を綺麗に洗い落とした。

 そして何くわぬ顔で朝食を済ませてから魔界に戻った。

 空っぽになったスキルオーブを宝物棚に陳列し、探索の準備を始めた。

 が、3日連続でダンジョンに潜っていたので、今日は休日にする事にした。

 そしてお金も入ったので、今日は欲しかった車を買いに車屋さんに行く事にした。

 オカンに「ちょっと車を買いに行って来るから車貸して」と言うと、「車は使ってもいいけど、定職に就いていないあんたはローン組めないでしょ!お父さんもお母さんもローン組んであげないよ!」、と言われたので、「大丈夫。一括で買うから」と言って家を出た。

 運転免許は高校が自由登校になった時に取得した。

 自動車教習所を卒業する時に貰った初心者マークをオカンの軽自動車に貼り付けて、俺は自宅から一番近い大手中古車販売店に車を走らせた。

 車屋さんに着いて駐車場に車を停めると、建物の中から店員さんが走って出て来て、要件を聞かれた。

 俺は「車を買いに来ました」と一言伝え、販売車が並んでいる所に行って、車選びを始めた。

 俺が車に求める条件は、荷物が乗せられて、車内で装備を整えたり出来て、ゆくゆくは他のダンジョンにも行きたいので、運転しても疲れない車が条件だ。

 店員さんには「ご予算はいかほどですか?」と聞かれたから、「混み混みで400万円で収まるとありがたいです」と答えておいた。

 店員さんのオススメ車両を何台か見たが、どれもパッとしない。

 しまいには、売れ残った車を買わせようとしてるんじゃないか?とさえ思ってしまうほど、オススメ車両にときめかない。

 金魚の糞の如く着いて来る店員さんにウザさを覚えながら、展示された車の間を歩いていると、ビビっと来る車に出会ってしまった。

 黒くていかつい見た目、高級感のある雰囲気、そして広々とした室内空間。

 走行距離も短くて、初年度登録からも年数が経っていない。

 『これしかない!』と思い、金魚の糞に「これください!」と言ったら、凄く驚いた顔をされた。

 それから店の中に入って見積りを作成して貰い、具体的な話がはじまった。

 店員さんは見積り書を持って来て、俺の前に座る。

「お待たせしました。こちらがお見積りになりますが、当初伺っていたご予算よりも100万円以上オーバーいたしますがよろしいでしょうか?」

 と、質問されたので、

「構いません」

 と答えておいた。

 それから契約書だ、委任状だと何枚も書類を書かされている時、店員さんに職業と支払い方法を聞かれた。

「職業はダンジョン探索者です。支払い方法は・・・」

 と、全て言い終わる前に俺の言葉を遮られ、店員さんが話始めた。

「探索者さんですか・・・。当店は探索者さんだと、ローンが組めないんですよね・・・。600万円近い支払いを現金では無理ですよね?見た所お若いですし、ランクもまだまだでしょう?ちょっと上の者に聞いてきます」

 サラッと失礼な事を言いながら、店員さんは席を立って奥に向かって行った。

 確かに若いし、探索者はローンとか組み辛いと聞いていたが、ここまで明ら様な態度を取られると、正直面白くない。

 暫く待っていると、スーツを着た中年男性が一人で現れた。

 恐らく担当を変わるorお引取りくださいを宣告する為に、先程の店員と交代した偉い人なんだろう。

「お待たせいたしました。お客様は探索者をされていると聞きまして、当店では探索者様にローンを提供する事が出来ない事をご説明しに参りました。見たところお若いようですし、探索者のランクも緑級ではないかと推察させていただいたのですが、失礼ですが探索者のランクをお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 そう言われたので、俺は銀級探索者証をテーブルに出し、「銀級探索者です」と言ってやった。

 探索者証は偽造が出来なくなっており、偽造をすると重たい罪に問われる。

 だから偽造品やレプリカ品は一切出回っていない。

「銀級探索者様でしたか、これは大変失礼いたしました。お支払いはいかがされますか?」

 そう聞かれたので、

「現金一括でお支払いします」

 そう答えてカバンから700万円出してテーブルの上に置いた。

 実は車屋に来る前に銀行に寄って出して来たのだ。

「承知いたしました。それでは売買契約を続けさせていただきます。先程の担当と代わりますので少しお待ちいただいてもよろしいですか?」

 と、聞かれたので、

「先程の方は失礼な事を言って来られたので、このまま契約を続けて貰っても良いですか?」

 と言うと、スーツの中年男性は「承知いたしました」と言って、契約を進めてくれた。

 それからは特にトラブルも無く契約が進み、納車は2週間後の大安の日に行われる事になった。

 スーツの中年男性はこの店の店長さんだったようで、従業員が失礼な事をしたのでサービスでボディーコーティングをさせて欲しいと言って来られたが、気にしないでくれとお断りしておいた。

 その代わり、本来は店頭で現金決済は行っていないそうだが、今回は店頭での現金決済に応じて貰える事になった。

 契約と支払いを終えた俺は、店員さん達に見送られながら、オカンの車に乗って家路に着いた。

 帰宅後オカンに車の鍵を返した時に、「あんた車は買えたの?」と聞かれたので、「買ったよー。2週間後に納車」と答えておいた。

 その日は魔界を少し片付けたり、ゴロゴロしながら過ごし、夕食の時に親父に「どんな車を買った?」と聞かれたので、購入した車の画像を見せて「これー」と言ったら、親父もオカンも驚いていた。

 それから緊急家族会議が開かれ、探索者について色々質問をされ、余りにしつこかったので、自分は銀級探索者になって、収入も車を買ったぐらいでは傾かない程あると伝えたら、親父もオカンも見た事が無いような表情をしていた。

 長年乗り続けた愛車のランボルギーニとの生活が、あと2週間で終わるのか・・・、と思うと感慨深くなったが、またお世話になるかもしれないので、車が納車されたら収納袋に入れておこうとおもったのは内緒だ。

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