現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 ブラックカウの角の攻撃で、初めて出血を伴う怪我をしたが、自称適切な応急処置と低級回復薬のお陰で、事なきを得た。

 今回の怪我を教訓に、低級回復薬を数本と中級回復薬を1本購入し、常備する事にした。

 それと錦織さんの有難いお説教を教訓に、量販店で買った服やホームセンターで買った装備品を使うのをやめて、ダンジョンショップで探索専用の物を買い揃える事にした。

 お説教の内容は、探索専用の服を着ていなかった事。
 探索専用の服はケブラーだかアラミドだかを混ぜた布で作られているらしく、斬撃や刺突の耐性があり、更に耐火性能もあるそうだ。

 そして回復薬を携行していなかった事。
 探索者は一度ダンジョンに潜ると負傷をしてもすぐ地上に戻れないので、3階層以降に潜る探索者は必ず携行しているそうだ。

 最後は怪我をしたら約束を守れなくなると言われた。
 社交辞令だと思っていた「ケーキ屋&カフェ」の件だが、錦織さん的には本気だった様だ。

「怪我をして何かあったら、約束が守れなくなりますよ!楽しみにしてたので、約束を守る為にも安達さんの為にももっと自分を大事にしてください!」

 と怒られた。

 解せぬ・・・。

 なんやかんやあったが無事に治療も終わったので、ダンジョンショップに戻り、錦織さん立ち会いの元探索用品の購入をする事になった。

 俺が購入したのは、

 探索専用の服を上下セットで3セット、1セット30万円×3で90万円。

 低級回復薬を4本と中級回復薬を1本で、回復薬で120万円。

 探索専用のブーツを2足、1足2万円×2で4万円。

 探索専用では無いが、米軍でも使用されているヘルメットを1個5万円で購入し、お買い物の合計219万円も使ってしまった。

 まぁ命が買えると思えば安いか・・・、なんて自分に言い聞かせていたが、世間一般から見ると凄く高い!

 形が残って財産になる物ではなくて、全て消耗品だ!

 協会の探索者向けビジネス、上手く出来てやがる・・・。

 現金の持ち合わせが無かったので、ATMにひとっ走りして、なんとか支払いを済ませて、錦織さんと別れた。

 その足で武器屋に向かって、武器屋に入る前に収納から黒いバスタードソードを取り出してから武器屋に入った。

 武器に詳しい山本さんに、モンスターハウスの宝箱から出たバスタードソードを見て貰う為に、カウンターに居る山本さんの元へ向かうと、いつも通り手を挙げて挨拶してくれた。

 俺も手を挙げて挨拶しながらカウンターへ行き、バスタードソードをカウンターに置いてから話を始めた。

「モンスターハウスの宝箱から出た剣なんですけど、重さや長さが丁度良かったので使ってみようと思ったのですが、この剣がどれくらいの物かが分からなかったので、先に見て貰おうと思ってお邪魔しました」

 俺はそう伝えたが、山本さんはカウンターの上にあるバスタードソードに目が釘付けだ。

「兄ちゃん、これがあるって事は9階層を突破したって事か?」

 何を言ってるんだこの人は。

「えっ?4階のモンスターハウスを攻略した時に出た宝箱に入ってたんですけど・・・」

「本当か?こいつは桜ダンジョンでは未発見の武器だ。他のダンジョンの10階層以降で少数の発見事例があるが、剣の性能は不明だ。なにせ発見した探索者が自分で使うっつーんで、協会には売ってくれなかったからな。で、兄ちゃんはこいつを使うって言ってたが、手放す気は無いんだな?」 

 山本さんの言葉に俺は黙って頷く。

「よっしゃ!わかった!ダンジョン内でドロップしたアイテムや、宝箱から出た物の所有権は探索者にあるからな。使ってみた感想や剣の能力は教えてくれよ!こいつは良い剣だ、必ず兄ちゃんの役に立ってくれるだろうよ」

 そう言うとカウンターの下から剣をベルトに取り付ける器具を取り出して、「俺のお古で悪いがサービスだ」と言って渡してくれた。

 本当に親切な人だ。

 俺は感謝の言葉を伝えてから、リュックに貰った器具をしまって、武器屋を出た。

 探索者が使っている剣は、協会の武器屋で販売されている物が圧倒的多数を占めている。

 協会と提携した工場で製造されている、安価で販売されている鋳造された物、そこそこ値の張る鋼材から削り出した物、高級品と言われる鍛造された物の三種類が主に流通している。

 もちろんその三種類の中にもグレードがあり、販売価格は何種類も設定されていた。

 切れ味や耐久性は価格に比例しているそうなので、剣を使う探索者は鍛造品に憧れ、鍛造品を手にした探索者はダンジョン産の剣に憧れるそうだ。

 そんな貴重なダンジョン産の剣を手に入れた俺は、剣の実力が知りたくなり、武器屋を出た足で再びダンジョンに潜る事にした。

 ゲートを通ってダンジョンに入り、転移で3階まで移動する。

 慣れない武器でいきなり3階に来たのは、そこそこ強さのある相手じゃないと、武器の性能が分からないからだ。

 無謀に見えかもしれないが、戦況がヤバくなったら、装備をメイスに切り替えて戦うつもりなので、一応は保険をかけている。

 腰にバスタードソードを取り付けて、ダンジョンを歩き回っていると、ファングボアに遭遇した。

 俺を見つけたファングボアは地面を何度か蹴ってから、突進して来た。

 俺は腰から剣を抜くと、突進して来たファングボアの正面に立ち、剣の間合いに入ったのに合わせて剣を振り下ろす。

 ファングボアは迫り来る剣など気にする事なく、俺に向かって真っ直ぐに突進する速度を一切緩めなかった。

 振り下ろした剣がファングボアの頭に吸い込まれる様に入っていくと、ファングボアの身体は色々な物をぶちまけながら、俺を中心にして左右に綺麗に別れていった。

 大量の返り血やファングボアの色々なパーツを浴びて、スプラッターな見た目になってしまったが、何とか勝つ事が出来た。

 それにしてもえげつない事になった。

 想像以上の切れ味で、まさか巨大なファングボアが真っ二つになるとは思っていなかったのだ。

 助かったのは、ファングボアが光の粒子になって消えると同時に、俺に着いた色々なモノと周囲に漂う臭いも一緒に消えてくれた事だ。

 これで気にせずに剣の練習が出来る。

 この後数時間、俺はモンスター相手にひたすら剣を振り続けた。

 
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