現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 ブラックカウの攻撃で負傷をしたが、回復薬で回復する事が出来たので剣の練習の為に、俺は再度ダンジョンに潜っていた。

 ある程度剣を使った戦闘にも慣れて来たので、今日はもう帰ろうと1階まで転移してからゲートを通って地上に戻ると、ゲート担当のおじさんに呼び止められた。

「支部長が呼んでいるから、少しここで待って貰えないか?」

 そう言われたので、俺は「わかりました」と伝えて、おじさんの言う通りゲート前で待っていた。

 待つ事数分、血相変えた青笹がゲート前に現れた。

「ソロで潜ってた銀級って安達君でしたか?負傷して治療してから帰宅したんじゃなかったですか?」
 
「治療してから帰宅しようと思ってたのですが、新しい武器を試してみたくなって、練習がてらダンジョンに潜っていました」

 青笹の質問にそう答えると、青笹は俺を待つ様に言った内容の説明を始めた。

「負傷したのに何をしてるんですか!って言いたいところですが、今は安達君の行動に助けられました。実は今日登録した新人探索者がソロで潜って帰還していません。迷宮機動隊にも連絡をして1.2階層を調べて貰っていますが、念の為3階層以降も調べて貰いたいのですが、安達君にお願い出来ないでしょうか?」

 新人探索者がソロで潜って帰還していないらしい。

 その探索者が潜ってから6時間以上経過しており、装備も剣を1本だけ持って入ったらしく、見た感じ何も携行していなかった様なので、ゲート担当者から要救助案件として青笹に連絡が入ったとか。

 救助案件は高ランクと迷宮機動隊しか動けないらしく、今回は探索者協会から高ランク探索者に救助依頼として、正式に依頼を出す事になったとか。

 ちなみに迷宮機動隊は公務なので、救助に入っても少額の手当が給与に付くが、探索者に支払われる程の報酬は発生しないそうだ。

 俺は状況を確認して、青笹の用意した救助依頼書にサインをしてから、本日3回目のダンジョンに潜る事になった。

 要救助者の氏名は川上雄太郎、職業は大学生。

 今日の午前中に探索者登録をして、その後武器屋で武器を購入してから、ソロでダンジョンに入ったそうだ。

 新人探索者が2階層へ進んだとは思えないが、念の為迷宮機動隊が1.2階層を救助の為に回っていると。

 そして俺には万が一も無いとは思うが、3階層の調査をお願いしたいと言われた。

 そして要救助者を発見した場合は救助をして、地上に帰還して欲しいと。

 帰還の際は青笹に手渡された、[エスケープクリスタル]を握って[帰還]と念じると地上に戻れると言われた。

 ちなみにこのエスケープクリスタル、何度も使える帰還用のダンジョン産の魔道具だそうで、ダンジョンで何かが発生した際に使用される、めちゃくちゃ貴重品らしく、本来なら迷宮機動隊と協会職員しか使用が許可されていないが、今回の様な救助依頼の時には探索者に貸与されるそうだ。

 手渡された時に「必ず返してください!必ずですよ!」と念を押されたのだが、それだけ貴重な物って事だろう。

 俺には転移があるから、そこまで貴重品には思えないが・・・。

 エスケープクリスタルを受け取って、俺はダンジョンに潜り3階目掛けて走り出した。

 本当なら転移を使ってパパっと3階まで行きたいが、迷宮機動隊も巡回部隊の他に救助部隊が入っていると聞いたので、万が一の事を考えて自分の足で移動をするこ事にしたのだ。

 その判断は間違っていなかった様で、2階へと繋がる階段室で迷宮機動隊の救助部隊と鉢合わせ、挨拶と簡単な情報交換をしてから、要救助者の捜索を再開した。

 1階層には要救助者の痕跡は見当たらなかったそうで、迷宮機動隊は2階層の捜索に移ると言っていた。

 俺は2階層へ迷宮機動隊と降りて、3階を目指すと言って別れてから、暫く走った所で3階の階段へと転移をした。

 3階の階段に転移をしてから、3階の捜索に入ったのだが、闇雲に探し回っても見つける事は出来ないので、地図を頼りに3階の外周を捜索してから内側の捜索へと移る事にした。

 外周の捜索中、何度かモンスターと戦闘をして、階段室を通り過ぎ、残り半分の外周捜索に移った。

 外周捜索の残りが僅かになった頃、前方に壁を背に座り込んでいる人影が見えた。

 俺はその人影に向かって急いで駆け付けると、その人影はなんと同級生のチャラ男だったのだ。

 確か青笹さんは要救助者は「川上雄太郎、職業大学生」と言っていた。

 要救助者はコイツで間違いないだろう。

 俺はチャラ男に声を掛けたが、完全に意識を失っている様で返答は無かった。

 仕方ないので、チャラ男の服を掴みエスケープクリスタルで地上に帰還した。

 地上に戻るとゲート前で待機していた、協会職員や迷宮機動隊がチャラ男を医務室に搬送し、駆け付けた青笹にエスケープクリスタルを返却してから、救助依頼の完了と報酬を支払う旨を伝えられた。

 探索者へ支払われる救助依頼の報酬は、半額は協会が負担し、残りの半額は要救助者の自腹になるんだとか。

 ちなみに今回の救助依頼の報酬金額は200万円、という事はチャラ男が100万円を協会へ支払わないといけないという事だ。

 意識を失ったまま医務室へ搬送されたチャラ男は、自分を助けたのが同級生の俺で、同級生の銀級探索者である俺を動かす事になった為に、大学生にとっては超大金の100万円の請求が来る事になったなんて、予想もしていなかっただろう。

 俺は青笹さんに「銀級探索者の個人情報は伏せておいてください」とお願いをしてから、俺は自宅へと帰った。

 後日談だが、あの後目を覚ましたチャラ男は、高額の救助費用が発生した事に納得がいかず、医務室で大暴れしたそうだ。

 その際、振り回した腕が青笹さんの顔面にメガヒットしたらしく、「助けたのにこの仕打ちか!」と激怒した青笹さんによって2年間の探索者資格の停止処分が下されたそうだ。

 そしてその話を聞いたチャラ男の両親にも愛想を尽かされたらしく、救助費用は自分で払う様言われたそうで、大学の講義が終わると深夜までバイト漬けの生活を送る事になったのだとか。

 そして週末に遊ぶ車を用意出来なかった事もあり、女子達からは相手にされなくなり、充実したキャンパスライフは自分の軽はずみな言動で絶たれてしまったそうだ・・・南無。

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