現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 貸金庫を借りている銀行に現地集合して、エリクサーを貸金庫から出す事になっていたので、銀行に向かい到着すると、そこは物々しい状態になっていた。

 武装した協会職員と見られる部隊と、武装した警察官が駐車場で待機しており、装甲車の様な黒塗りの車が何台も停まっていた。

 俺は気遅れしそうになるも、車を停めて協会職員と見られる武装した人に声を掛けた。

「すいません。ここで協会本部の森田さんと待ち合わせをしている安達と申しますが、森田さんはどちらにおられますか?」

 俺の質問に協会職員と見られる男性は「少々お待ちください」と答えると、装甲車の様な車に走って行った。

 そして装甲車の様な車から森田が出て来て、俺の元へやって来た。

「お待たせしました。物々しくて驚かれたでしょう?今回、こちらで引き渡されたエリクサーを、協会と警察の警備車両で空港まで移送した後に、チャーター機で東京へと運びます。チャーター機も離陸した後に自衛隊の戦闘機が護衛に付く事になっています。東京に到着したら、ヘリで協会本部までの移送です。安達さんが快くお譲りくださった物は、それだけの価値がある物なんです」

 言われてみれば、協会職員も警察官も拳銃だけでなく、小銃や機関銃を装備していて、その銃器を隠す事無く晒していた。

 恐らく周囲に「これだけの武装してるから近付くなよー」ってアピールをしているのだろう。

「自衛隊まで護衛に加わるんですね・・・。僕はそんな貴重な物を普通のタオルで包んで運んでました」

 俺が笑いながら言うと森田は、

「それくらい気軽に運べれば良いですけどね。青笹から説明があったと思いますが、エリクサーは国家間紛争やテロリズムを引き起こす事が出来るほど貴重な物です。今回厳重な警備を敷いたのもその為です。ですが、これだけの警備体制を敷いても未だ不安は拭えません。無事に本部の金庫室に入るまで気を抜け無いのです」

 森田は苦笑いしながらそう言って来た。

 エリクサーはそれだけ貴重なのだろう。

 その後、完全に人払いをされた貸金庫室に向かい、森田と協会の鑑定士立ち会いの元で貸金庫からエリクサーを取り出し、その場で鑑定をして貰った。

 鑑定により、間違いなくエリクサーだと証明され、協会の用意したケースに厳重に収められケースに施錠されてから、その場で森田は協会本部へと電話をして、俺の口座への入金指示を出した。

 暫く通話した後、電話を切った森田は、「無事に入金が完了しました」と告げて来た。

 超高額の取引が完了した瞬間だ!

 貸金庫室を出ると周囲は超厳戒体制で、銃を構えた協会職員や警察官が死角を作らない様に色々な方向を向いて立っていた。

「名残り惜しいですが、今回はここでお暇させていただきます。また後日お会いして色々とお話をお聞かせ願えたら幸いです。それでは私は失礼させていただきます」

 俺と森田は握手を交わして別れた。

 映画のワンシーンの様な、物々しい警護をされながら車に乗った森田を俺は見送った。

 そして、次貴重な物を発見しても、絶対に協会には売らないと、固く誓ったのである。

 銀行から出て、車に乗ろうとした時に銀行員に呼び止められて、

「お忙しいとは思いますが、頭取がご挨拶をさせていただきたいと申しております。この後のご予定はいかがでしょうか?」

 と言って来たが、面倒だったので「予定があって、すでに時間が押している。また機会があればその時に」と答えて、車に乗り込んだ。

 協会がエリクサーの買取金を振り込んだ口座は、偶然にもこの銀行の口座で、個人で高額の預金者になるので頭取が挨拶をしたいと言っていた様だ。

 事情を説明してくれた銀行員には悪いが、今後の打ち合わせの為に桜ダンジョンに向かう事にした。

 探索者協会桜ダンジョン支部に到着すると、受付けで青笹さんに用事があると伝えてエントランスでしばらく待つと、錦織さんが迎えに現れた。

 錦織さんに案内されて[探索者協会桜ダンジョン支部支部長室]とプレートの付いた部屋に通された。

 部屋の中には青笹さんと横澤さんが待っており、勧められたソファーに座ると話が始まった。

「安達君、忙しいのにご足労いただいて申し訳ないです。本格的に話を始める前に探索者証を錦織に渡して貰ってもいいですか?」

 そう言われたので、財布から探索者証を取り出して錦織さんに手渡した。

 錦織さんはその探索者証を持って部屋を出て行った。

「安達君の今後の探索に、本部の横澤さんが同行する件なんですが、安達君はどの様なサイクルで潜ろうと考えていますか?」

「特に考えていなかったですが、横澤さんはどんなサイクルで潜りたいですか?ある程度は合わせますよ。僕が潜る度に毎回同行される訳じゃないんでしょう?」

 青笹さんの質問に対して、横澤さん への質問で返す様になってしまったが、俺は横澤さんに合わせるつもりでいたので、俺的には間違った対応ではなかった。

「私は桜ダンジョンが初めてなので、毎日でも構いません。我儘を言っても良いのであれば土日はお休みをいただけると嬉しいです。ですが安達さんが土日も潜られるのであれば、私も同行させていただきます」

「って事は、僕が潜る時は基本的には毎回同行されるって事ですか?」

 何か面倒が起きそうな気がする・・・。

「はい。毎回ご一緒する様に本部からは指示を受けております」

 はい来たこれ!同行する、ご一緒する、否!監視じゃありませんか!

「どれくらいの回数を僕と潜る予定ですか?」

「そうですね。今回の様なイレギュラーが発生するまでご一緒させていただこうと思っています」

 俺の自由は完全に絶たれた・・・、俺は絶望を隠し切れない表情で、青笹さんを見た。

「申し訳ない!本当に申し訳ない!基本的に探索者は自由に探索をして貰う事になっているんですが、今回は本部だけでなくこちらの横澤さんのたっての願いで、どうしても毎回同行したいとの事なのです。安達君には不自由な思いをさせてしまいますが、なんとか理解していただき、なんとか横澤さんとご一緒して貰えませんか」

 横澤の同行は俺にとってデメリットでしかない。

 自分のスキルや収納袋を活用した武器の切り替え、収納袋を活用したドロップ品の回収が一切出来なくなる。

 さらに魔石はリュックに詰め込められるが、ドロップ品や野営グッズの持ち込みが出来なくなるのは迷惑でしかない。

「どうしても毎回同行されるんですか?毎回じゃなくても良いのなら同行して貰っても結構ですが、毎回であればお断りしたいです。僕も探索者として手の内を全て明かしたくないですし、僕じゃなくても探索者なら同じだと思います」

 俺がしたこの発言で、この場に嵐が訪れる事になる。
 
 
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