現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

文字の大きさ
43 / 96

36

しおりを挟む
 昨夜は無事、収納スキルを取得する事が出来て嬉しいはずなのだが、今から協会職員の横澤さんとダンジョンに潜らないといけないので、憂鬱極まりなかった。

 協会の桜ダンジョン支部で横澤さんと合流し、今日は5階層まで行こうと思っている。

 彼女には伝えていないが、別に構わないだろう。

 桜ダンジョンに到着した俺は協会の建物に向かい、横澤さんと合流した。

「おはようございます。安達さん、今日はよろしくお願いします」

「おはようございます。こちらこそよろしくお願いします」

 互いに挨拶を交わした。

 横澤さんの格好は探索用スーツの上下に、ショートソードを腰の後ろ側に交差する様に2本装備していて、背面は大型のリュックを背負っていた。

「安達さん、今日はどの様な探索予定ですか?」

 横澤さんに探索の予定を聞かれたので、5階層まで行く事を伝えたのだが、予想に反して「分かりました」の一言だけ返ってきた。

 俺の中での詳細な計画は1~3階層はひたすら移動に専念し、少しでも早く4階層に辿り着く。

 4階層に到着したら、モンスターハウスを攻略して、モンスターハウスの攻略後は階段室を目指し、階段室で休憩or野営した後、5階層に進行。

 5階層は出現するモンスターと戦闘をしてから、モンスターハウスの偵察をして、いけそうならそのまま攻略してしまう予定だ。

 4階層に辿り着くまでは、走って移動をする予定なので体力勝負になるが、相手を気遣うつもりは毛頭無い。

 俺の自由で優雅なダンジョンライフを邪魔して来る奴に、気遣いなど無用だ!

 俺は探索用スーツの上下と、米軍のECHヘルメット、探索用のブーツを身につけて、腰にはポーチ数個と剣を装備しているだけの、超軽装だ。

 一応背中にリュックも背負っているが、動きを阻害しない様に中型サイズのリュックにしてある。

 そんな軽装備で5階層まで行くの?って目で横澤さんには見られているが、俺には収納スキルがあるから関係無い。

 俺と横澤さんはゲートに向かい、入場処理をして貰ってからダンジョンに入って行った。

 ダンジョン内に入ると、「4階層まで駆け抜けます。着いて来てください」、と言って俺は駆け出した。

 転移が使えない分足で稼ぐしかないので、俺は階段室に向かってひたすら走った。

 ダッシュとまではいかないが、そこそこの速さで走っていたのだが、横澤さんは俺の少し後ろを走って着いて来ている。

 途中で出て来るモンスターは剣で薙ぎ払い、戦闘の為に足を止める時間は最短になる様に努力をした。

 そんな行動を繰り返し、驚く程の速さで3階層の階段室まで辿り着く事が出来た。

 所要時間はダンジョンに入ってから4時間も経っていない。

 階段室で休憩をする事を伝え、俺は収納の中からエネルギーゼリーと水を思い浮かべて、何も無かった空間に二つを取り出した。

「安達さん今何をされたんですか?何も無い所にいきなりゼリーと水が出て来たんですけど!」

 計画通りだ。

 俺は大変貴重な収納袋からではなく、運が良ければ取得可能な収納スキルを使って、わざと横澤さんに見える様にゼリーと水を出した。

 収納スキルはスキル取得者のみが使えるスキルで、収納袋の様に所有権が移ったり、形が残ったりしない。

 死人に口なしではないが、俺が何も話さなければスキルの出処は特定出来ないのだ。

 収納袋を持っていると知られたら、協会は大金を積んで収納袋を俺から取り上げるだろう。

 協会のみならず邪な考えを持つ者達に狙われる事もあるだろう。

 だが、スキルは俺にしか使えないので、そんな心配は無い。

 ソロで深く潜る事を考えると、収納袋か収納スキルは必須になってくる。

 だから俺は収納スキルを取得している事を横澤に見せる為に、カミュに頼んでスキルオーブを用意して貰ったのだ。

 全ては快適なダンジョンライフの為に。

「言ってなかったですけど、収納スキルを取得してたんですよ。先程出した物は全て収納から出した物ですよ」

 俺はそう答えながら、ゼリーを飲み干してから水を飲んで見せた。

「どこでスキルオーブを手に入れたのですか?どうやったらスキルオーブが出て来るのですか?」

 横澤さんの質問が始まったが、最初から非協力的な考えの俺は、横澤さんの質問を冷たくあしらった。

「今回同行を引き受けた内容に、俺を自由に詮索するって内容は無かったはずですが。それに目標地点まで達していないので、横澤さんの質問に答えている時間はありません。納得出来ない様であれば、ここで引き返してください。俺は基本ソロなので、横澤さんが居なくても困りませんので」

 そう告げると俺は4階層に進む為に立ち上がった。

「俺のスキルを協会に報告されるんですか?探索者の個人情報を本人に許可もなく話したら、今後俺が協会に協力する事は無くなると思ってください」

 さらに告げてから俺は4階層へと進んで行った。

 4階層に降りてから数十秒待ったが、横澤さんは追い掛けて来ない。

 俺は横澤さんを気にする事なく、モンスターハウスに向かって走り出した。

 何度かの戦闘を経て、モンスターハウスに、到着した。

 途中で出た4階層のモンスター達も剣の前では敵ではなく、剣の一振で倒す事が出来た。

 モンスターハウスに足を踏み入れて戦闘をしたが、新たな武器である黒のバスタードソードの前では、ブラックカウとコカトリスの群れも脅威ではなかった。

 剣で切り裂き、剣で突き、大量の、モンスターは順調に数を減らしていった。

 残り数匹って時に、突進して来たブラックカウを避けながら剣を振ったのだが、その剣はブラックカウには当たらず、空を切り裂きながらの空振りになってしまったのだが、驚いた事に剣が触れてもいないブラックカウの体が両断されてしまったのだ。

 もしかして[斬撃]を飛ばせた?

 頭にはそうよぎったのだが、今はモンスターハウスでの戦闘中、思考の沼にはまり込む余裕はない。

 俺はモンスターハウスでの戦闘を終わらせるべく、剣を振るい続けた。

 そして最後に残ったブラックカウの首を、バスタードソードで切り落としてモンスターハウスの攻略を終えた。

 俺は戦闘中に収納出来なかったドロップ品を収納してから、宝箱が出ていいないか探したが、残念ながら宝箱は出ていなかった。

 攻略を終え、暫くは安全な空間になったモンスターハウス内の壁にから少し離れた所から、壁に向かってバスタードソードを降ってみる。

 するとどうだ、何も起きなかった。

 力加減を変え、振り抜く速度を変え、色々試してみたが、剣が空を切る音が聞こえるだけで何も起きない。

 あまり固執するのも良くないので、5階層へと繋がる階段室に向かって、俺は進む事にした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

処理中です...