現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 スカイフィッシュがグルグル回遊するモンスターハウスへと足を踏み入れた俺。

 俺が足を踏み入れた事により、スカイフィッシュは回遊するのをやめ、戦闘態勢へと移った。

 色々な方向から一斉に攻撃が来るのを覚悟し、死角を減らす為に壁を背負って戦う事にした。

 動画サイトの格闘技系チャンネルでも、「多重格闘は背後に相手を回らせない様に注意しろ!」、と言っていたしな。

 壁を背負う事で背後から攻撃されるリスクは無くなったのだが、攻撃を回避する方向が上方向と左右しか残されていないという新たなピンチに陥ってしまった。

 とにかく初撃をなんとかいなして、次からは出たとこ勝負だと気持ちを切り替えて、スカイフィッシュの群れの突進に備えた。

 スカイフィッシュは俺に向かって一斉に突進をかまして来た。

 俺はその突進を横方向に大きく飛んで避けたのだが、勢いの付いたスカイフィッシュの群れは、俺の背後にあった壁への衝突を回避する事が出来ず、次々と壁に激突していく。

 激突した衝撃で地面に落下していくスカイフィッシュ、俺は再びスカイフィッシュが空中に戻って俺に向かって来る事を警戒していたが、スカイフィッシュは空中に戻る事はなかった。

 俺という敵を倒す為、限界まで加速してスピードを高めてからの俺への突進。

 しかし俺はその突進を華麗に躱した。

 スカイフィッシュは俺という目標を失った直後、目の前に現れたダンジョンの頑丈な壁に次々と激突。

 自ら高めた速度に自らの体重も加わった衝撃は、相当大きな物だったのだろう。

 落下したスカイフィッシュ達は何度かピチピチ地面の上を跳ねると、次々に光の粒子になり、ドロップ品を残して消えていった。

 そしてモンスターハウスの中には、大量のドロップ品と俺だけが残されていた。

 何ともやるせない気持ちになりながら、ドロップ品を回収していく。

 最初に戦ったスカイフィッシュにあれだけ苦戦したのは、何故だったのだろう?

 やるせない気持ちに支配されたまま、ドロップ品の回収を終えると、モンスターハウスの中央に宝箱が出現していた。

 俺は宝箱に近付いて、宝箱を鑑定で調べてみる事にした。

 鑑定で宝箱の詳細や、罠が分かると思ったからだ。

 【ダンジョン宝箱:ダンジョン内にランダム発生する宝箱。罠無し】

 鑑定結果は非常に簡潔で、罠の有無以外は既に知られている内容のみ表示された。

 宝箱が発生するメカニズムや、宝箱が発生する条件が知りたかったんだけどな・・・。

 残念な気持ちになりながら、鑑定様のお陰で罠が無いと分かった宝箱のフタを、剣やマチェットではなく自分の手で開けた。

 宝箱の中には、鈍く黒光りする一丁の拳銃が入っていた。

 見た目は自動拳銃の様な見た目だが、本来弾倉が入る部分は塞がれており、銃身も銃口から3cmほど入ったところで塞がれており貫通していない。

 スライドは動くのだが、薬莢を排莢する開口部はなく、まともに動くのは引鉄だけの様だ。

 こんなん文鎮にしかならねー!と悪態をつきたくなったが、宝箱から出たのであれば価値があるはずなので、鑑定をしてみる事にした。

 【魔導拳銃:射手や周囲の大気中から魔力を集め、その魔力を弾丸として発射する魔導拳銃。スライドを引くと魔力をチャージし始め、フルチャージで、50回の発射が可能。チャージ時間は射手の魔力や大気中の魔力濃度で変わるが、平均的なチャージ時間は10秒程度】

 なんてチートアイテム・・・、これは試してみるしかない!

 俺は魔導拳銃のスライドを引いて10秒程待った。

 10秒待つとスライドの後端に青いドットが現れたので、発射可能という事なのだろう。

 地球の拳銃同様に魔導拳銃のスライド上には、フロントサイトとリアサイトが付いていたので、それを使ってダンジョンの壁に狙いを定めてから、引鉄を引いた。

 『パンッ』と乾いた銃声がしたが、その音量はそれ程大きくなく、模型店などで売っているガスガン程度の大きさの銃声だった。

 そして発射に合わせてスライドも後退して、その程よい衝撃と銃声が魔導拳銃から魔力で作られた弾丸を発射した事を伝えてくれた。

 だが威力は未知数だった。

 ダンジョンの壁に着弾した時は、衝撃波を伴ったかなり大きな音を響かせたのだが、ダンジョンの壁や階段などのダンジョンオブジェクトと呼ばれる物は、不思議な事に傷を付けたり壊したりする事が一切出来ないのだ。

 だから魔導拳銃の威力は未知数なのだ。

 それも次の戦闘で使ってみれば分かる事なのだが。

 少なくとも遠距離攻撃の方法が無かった俺には非常に助かる武器になる。

 探索者協会の規約と法律的には表立って使う事は出来ないが、基本ソロプレイヤーの俺なら、周囲の目が無ければ活用出来るだろう。

 俺は階段室に向かうついでに、魔導拳銃のテストをしてみようと思い、階段室に向かって歩き始めた。

ーーーーーーーーーー

 その頃協会職員である私横澤は、一人でイライラしながら地上を目指していた。

 本部からの指示で探索に同行させて貰っていた探索者の逆鱗に触れてしまい、3階層の階段室で同行の拒否を匂わせる様な事を言われたからだ。

 私としては、収納スキルなんてレアなスキルを所持していた探索者に、軽い嫉妬を覚えたのと、知的欲求を満たす為に質問をしてしまったのだが、同行の拒否を匂わせる様な事を言われるとは思っていなかった。

 詰問する様な聞き方をして、探索者の財産でもある秘密の開示を求めた自分に非があるのは理解している。

 だが協会本部からの指示でもある、探索の同行を拒否られたのは納得がいかない。

 追い掛けよう思ったが彼の移動速度は速く、「置いて行かれた」と思って少しの間呆然としてしまったのが命取りとなり、その後追い掛けるも4階層の階段で待っていてはくれなかったので、諦めて地上に戻る事にした。

 彼が収納スキルを所持している事は協会本部へ報告しなければならない。

 何故なら、彼に関する事はどんな些細な事でも報告する様に指示を受けているからだ。

 それを察してか、彼は「報告したらもう教会に協力しない」と言って立ち去って行った。

 今私は凄く悩んでいる。

 スキルの事に一切触れずに彼に謝って、良好な関係を築くか、それとも職務に忠実になり、彼と協会の関係を悪化させるのか・・・。

 探索者協会の一職員でしかない私が抱えていい問題ではないと思うが、問題の当事者になってしまったので、今回の件は解決させなければならない。

 そうだ!桜ダンジョン支部の支部長さんに相談して、出来る事なら丸投げしよう!

 他力本願な答えに辿り着いた私の足取りは、先程までより軽くなった気がする。

 その後私は無事に地上に戻る事が出来た。

 だけどこの後、想像を絶する雷が落とされる事を今の私は知らなかった。



 

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