現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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俺side

 俺は協会関係者達に、安全だと言った根拠を説明する。

「ダンジョンを上がって来ていた人型のモンスターは、魔王軍四天王の一人でした」

「いやちょっと待ってください!魔王軍ですか?魔王って存在しているんですか?」

「こことは違う世界には、色々な種族が存在しており、その中の魔族の王が魔王と呼ばれるそうです。・・・話を戻しますが、その四天王の方は知性が非常に高く、我々人族とは敵対するつもりは無いという事でした。魔王を探している時に、魔王の魔力の残滓を桜ダンジョンで感じたらしく、魔力残滓を追いかけてダンジョンを上がってきたそうです」

 俺の説明はかなり端折った説明だが、詳細までは話すつもりはなかった。

「その四天王の方に、魔王を見た事も聞いた事も無いと伝えましたが納得して貰えず困っていたところ、別の四天王の方が来られまして、その方も一緒に説得してくれたので、納得いただけました。ここから大事な事なんですが、こちらから危害を加えない限り、魔族は我々人族と敵対する事は無いと言われました。こんな感じです」

 説明を聞いた青笹さんや協会の職員、迷宮機動隊はその場で話し合いを始めた。

 彼等が出した結論は、本日いっぱいは防衛線を維持したままにし、明日の朝からダンジョンを解放するという事だった。

 功労者の俺は帰宅しても良いとはいわれたが、緊急で呼び出すかもしれないので、連絡が取れる様にはしといて欲しいと言われた。

「じゃっ、帰ります」

 ゲート方向へ歩か出そうとすると、青笹さんに呼び止められた。

「あれ?安達さんはダンジョンクリスタルを使われないのですか?」

 えっ?ダンジョンクリスタルって何?

「ダンジョンクリスタル?ですか?」

「はい。ダンジョンクリスタルをご存知ないのですか?階段前にある壁の所に半透明な石が嵌っているのが見えますか?あれに触れるとゲート前、各層の階段室にワープ出来るのですがご存知ではなかったのですか?」

 青笹さんがとんでもない事を言って来た、その発言に山本さんがつっこみを入れる。

「支部長、それは協会関係者以外には知らされてない機密事項だぞ。幸い俺達の周りには誰も居ない。助かったな支部長」

 話を聞くと、青笹さんは俺の探索スピードが速いので、ダンジョンクリスタルの存在を知っていると思っていた様だ。

 山本さんがつっこんだ瞬間、「あっ!」って顔をしていたので、協会関係者以外は知らないって事を忘れていたのだろう。

「今のは聞かなかった事にしてください。特別に使い方をお教えするので、それでご勘弁を・・・」

 ダンジョンクリスタルの使い方を教えてくれるそうだが、転移スキルがあるので正直必要ない。

 だが、ダンジョンクリスタルがあれば転移スキルを隠す事が出来そうなので、使い方を教えて貰う事にしよう。

 その後ダンジョンクリスタルの使い方を教えて貰った俺は、一人寂しくゲートまで歩きましたとさ。

ーーーーーーーーーー
カミュside

「鬼人族の長にお話しておかなければならない事があります。主様がおられる前では話せない事なので、敢えて主様から事態の収拾を引き受けたのです」

「その話ってのはどんな話だ?」

「魔王様の件です。実は魔王様がおられる場所を知っています」

「なんだと?じゃあ何故先程言わなかった?」

「魔王様は変化の魔法をお使いになられて、[犬]の姿になられて主様と同じ世界で生活されています」

「犬ってあの犬か?そんな弱い生物に化けてたら、襲われたら一溜りもないだろう?なんでそんな危険な状態を放ったままにしているんだ?事の次第によってはいくら四天王のお前でも、儂は許さんぞ!」

 カミュは魔王の所在を鬼人族の長に伝えたが、鬼人族の長は納得していない様だ。

「私が魔王軍内で、武の力で敵わなかったのは魔王様だけだとは、貴方もご存知でしょう?」

「認めたくないが、お前の剣技には敵わん!」

「その私が敵わなかった方、それは魔王様と主様のお二人です。私は主様に全力で挑み、敗北を喫して従魔になる事を選びました。魔王様はそんな主様のご自宅でお過ごしです。しかも主様のご家族に溺愛され、魔王城に居られた頃よりも良い暮らしをされています」 

 カミュが魔王の所在を伝えると、鬼人族の長は驚きを隠せない表情になった。

「って事は、魔王様はあの人族と一緒に住んでるって事か?」

「だからそう言ってるではありませんか!しかも毎食主様の母上様が作られる、魔界の最上級の料理よりも遥かに美味な食事を取られ、魔王城のソファーよりも遥かに上質なソファーの上で日がな一日ゴロゴロして過ごされているそうです。ちなみに主様は母上様には敵いません・・・」

 鬼人族の長は情報量の多さに、頭が着いて行けてない様だ。

「お前が敵わないあの人族よりも強いだと・・・。こっちの世界の人族は化物揃いじゃないか!」

 たまたまである。

 臣が母親に敵わないのは、物理的ではなく精神的に敵わないのだ。

 恐らくカミュも鬼人族の長も、本気で怒った臣の母親を見たら逃げ出すであろう。

「だから安全な場所に居られるって言ったじゃないですか。ですが一つ問題があります。魔王様は主様の従魔になってしまわれました」

「何?それは本当か?」

「ええ。残念ながら本当です・・・」

 二人の間に再び緊張が走る。

 事情を知らない鬼人族の長にしてみれば、王として自分が仕える魔王が、魔族よりも弱いと思っていた人族の従魔になってしまっているからだ。

「鬼人族の長よ、そんなに怒らなくても大丈夫です。残念ながら魔王様は、ご自分からすすんで主様の従魔になられました。それも戦って主様の強さを認めて従魔になったのではなく、主様がダンジョン内で作られた料理を召し上がって、その美味しさで従魔になられた様です」

 鬼人族の長の頭はパンク寸前だった。

 自分よりも遥かに強い魔王が従魔になった事と驚きだが、従魔になった理由が食べ物に釣られてなんて信じたくはなかった。

「信じたくはないが・・・、あの魔王様なら・・・、有り得る・・・。むしろ魔王様らしいとさえ思えてしまう・・・。だが跡継ぎの件をどうやって魔王様にご相談したらいい?儂はこの姿で地上には出られんし、出たとしても探索者とやらに囲まれてしまうだろう」

「安心してください。だから主様に私を召喚していただく様にお願いをしてあります。その召喚の時に貴方が私に触れておけば、一緒に主様の元へと行けるのではありませんか?」

 解決策は考えてある様だ。

 だが鬼人族の長には問題が残っている。

「ところで鬼人族の長は、変化の魔法を使えますか?主様の周りには角の生えている人も、我々の様に鎧を纏っている人もいません。しかも貴方は主様の友人と呼ぶには歳を取りすぎている。この後私がお見せする服装に似た服装になり、角を隠し、見た目を私く
らいに若く出来るのであれば、主様の元にお連れしましょう」

 鎧と角はともかく、年齢的な痛いところを突かれた鬼人族の長は、この後慣れない変化の魔法を何度も繰り返し使って、ようやくカミュに合格点を貰う事が出来たのであった。

 
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