現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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閑話10

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 私は魔界を統べる魔王だ。

 訳あって今は地球と呼ばれる惑星の、日本と呼ばれる国にある[安達家]と言う家庭でお世話になっている。

 ある日、日本に繋がったダンジョンがあると聞いて、興味を持った私はそのダンジョンをフラフラと歩いていた。

 本来の私の見た目は可憐な美少女、そんな姿でダンジョンを歩いていたら、ダンジョン内に居る人間に襲われてしまう。

 だから私は[地球に居る可愛過ぎず不細工過ぎない、人間が油断してくれる様な生き物]、と念じて変化の魔法を行使した。

 するとどうだろう・・・、鼻がぺちゃんこな不細工だが可愛い、可愛いけど不細工、要はブサ可愛い犬へと変身する事が出来た。

 その姿でダンジョンの最深部にある、魔界と繋がる門からダンジョンに入り、ダンジョンの上を目指して歩いていた。

 途中色々なモンスターが出て来たが、私が魔力を放出すると、皆怯えた様に私の前から逃げたので、面倒な戦闘は一度も発生する事が無かった。

 ダンジョン内に充満している魔力を取り込みながら歩いていき、人間の臭いが濃くなって来た頃、今まで嗅いだ事の無い、食欲を刺激する匂いが鼻に飛び込んで来た。

 一応説明しておくが、我々魔族は食物から栄養を取る必要は無い。

 魔力があれば生きていけるからだ。

 だが魔界と人間界の争いが終わり、文化的な交流が始まる様になると、人族の作る料理やドワーフ族の作る酒などが魔界にも入って来る様になり、料理や酒を嗜好品として楽しむ文化が魔族にも芽生え始めた。

 今では料理の研鑽を重ねる種族や、酒造りに没頭しドワーフ族が弟子入りしに来る種族が現れる様になった。

 魔界と人間界との戦争【人魔大戦】を和平に持ち込んでから早200年、文化も発展した魔界でも嗅いだ事の無い、料理の匂いに私は魅了され、その匂いがする方へ引き寄せられる様にフラフラと歩いてしまった。

 匂いを発する所に居たのは、人の良さそうな若い人族だった。

 その人族は変身した魔王である私に料理を分けてくれる様だった。

 その料理は肉をただ焼いた物だったのだが、使っている香辛料が魔界の物とは異なり、えも言われぬ香りを放っていた。

 人族が行うダンジョン内での食事は、生命を繋げる為に非常に重要な事だと聞いた事がある。

 そんな大切な食事をこの人族は、当たり前の様に分けてくれたのだ。

 その食事は大変美味で、私が取った食事の中では人生で一番の味だった。

 それから何故か知らないが、私の部下である魔王軍四天王のファントムナイトを呼び出して、呼び出したファントムナイトに名付けまで行っていた。

 主である私を差し置いて、名付けまでして貰ったファントムナイトに思うところはあったが、それ以上に名を持たぬ私は名付けをして貰ったファントムナイトを羨ましく思ってしまった。

 私は人族の足をシャカシャカやって、私にも名を付ける様アピールした。

 人族は私に[プフラウメ]と名付けてくれた。

 名前の意味は地球に生えている[梅]という植物を、日本とは違う国の言葉で表したものだそうだ。

 その[梅]の花が持つ花言葉とやらは、【上品・高潔・忍耐・忠実】の意味があるらしいが、私にはピッタリだ。

 魔界の王である私は[上品]で[高潔]な存在で、[忍耐]強く人魔大戦を和平に導き、魔王としての役目を[忠実]に果たしている。

 この名前以上に私に相応しい名前など無いだろう。

 そして[プフラウメ]の持つ上品な響き・・・、物語に出て来るヒロインの様な可憐な響きがある。

 だが人族は私の名前を[プフラウメ]とは呼んではくれず、省略して「ウメちゃん」と呼んで来る。

 少し残念な気がするが、人族の呼んでくれる「ウメちゃん」という響きには、何か心を温かくしてくれるものがあり、私は「ウメちゃん」呼びを案外すんなり受け入れてしまった。

 名付けを受け入れたついでにはなるが、私は魔界を統べる魔王という立場にあるのだが、この人族の従魔になってしまった。

 後悔はしていない。

 人族の寿命は長くても100年程度、その短い間人族に仕えるのも、社会勉強として考えれば有益な時間になるだろう。

 しかもその間、主の作る美味な料理を食べる事が出来るのだ。

 もしかすると魔界で過ごすよりも、良い暮らしが出来るのではないだろうか。

 それから主の家に連れて帰られた。

 主の家はお世辞にも豪邸とは言えない大きさだったが、犬の姿になっている私には広すぎる家だった。

 主の家には主の母[お母様]と、主の父[オジサン]が居たが、私は快く迎え入れられ、お母様には特に大切にしていただいている。

 お母様が作ってくれる料理は絶品で、主の料理など足元にも及ばない。

 そんな美味しい料理を食事として一日に三度、食事の間や食後には[リンゴ]なる神の様な果実や、乳や砂糖をふんだんに使った菓子も食べさせてくれる。

 そして魔王城にあるベッドよりもフカフカなソファーで日がな一日ゴロゴロしたり、全身を包み込んでくれるお母様の布団で一緒に寝るうちに、魔界の統治よりもこの家で生涯を過ごしても良いとさえ思う様になっていた。

 お母様と主、それとオマケにオジサンを何があっても守ろうと決意し、今日もお母様の作ってくれるご飯や美味しいオヤツを食べてゴロゴロしている。

 そんな私は魔界を総べる魔王である。


 最近の悩みは、主がたまに連れて来る友人の中に、魔王軍四天王が混ざっている事だが、適当に言葉を交わしてやったり、統治の指示を出しておけば大丈夫な様だ。

 私が居なくても平和に統治してくれている、魔王軍四天王に感謝をしながら、定位置であるソファーに横になり今日も一日過ごす私であった。

 
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