現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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閑話11

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 探索者協会本部理事である私は、片田舎の桜ダンジョン支部の応接室で、一人イライラしている。

 私のイライラの原因は、特Sアイテムを持ち込んだ功績で黒級探索者になった安達とかいう若僧のせいだ。

 あの若僧は私の娘に逆らい、その結果私の娘は処分を受ける事になった。

 娘が処分を受ければ、父である私の出世にも響いてくる。

 次の会長選挙に立候補し、会長の椅子に座る予定だった私の計画が、大きく狂う事になったのだ。

 協会会長は、あの若僧と協会が良い関係を構築する為、協会本部長と森田をこちらに寄越す予定だったのを、娘と私に謝罪と賠償をさせる為に無理矢理交代させたのだが、無駄足だった様だ。

 あの若僧には、「スキルオーブや特Sアイテムを私に無償で差し出せ」と情けをかけてやったが、あの若僧は断ってきやがった。

 協会理事である私の後ろ盾まで付けてやると言っているのに、それでも断ってきやがった。

 スキルオーブと特Sを販売した金を私と娘の賠償にあて続ければ、それだけ長い期間私に後ろ盾になって貰えたのにも関わらずだ。

 さらに腹が立つのは、あの若僧が差し出した物で得た現金をばら蒔いて、会長選挙の票集めをする計画までも狂わされた事だ。

 私が会長になれば、今の様な利益の薄い協会運営などしない。

 探索者の取り分を減らして、協会の利益を増やし、私の報酬を増やす予定だったのだが、それまでも狂わされてしまった。


 実に礼儀がなっていない若僧だ。

 あんな礼儀知らずの若僧は、私の探索者協会には必要無い!

 だから私は森田と青笹に、奴の探索者ランクを黒級から緑級まで下げる様に命じた。

 二人とも黙っていたが、沈黙は肯定と受け取って構わないだろう。

 そもそも理事である私に逆らったのだ。

 その時点で探索者資格の剥奪をされていないだけでも、感謝して貰いたいところだ。

 だが娘を傷付けられ、私を侮辱したあの若僧をどうしても許す事が出来ない。

 イライラしながらも私は素晴らしい事を思い付いた。

 私はスマホを取り出して、ある人物に電話をかける事にした。

 呼び出し音が何度も鳴っているが、なかなか電話に出て来ない。

 誰が電話をかけていると思ってるんだ。

 呼び出し音が10回を超えてから、電話を取りやがった。

 失礼極まりない!

「もしもし、私が電話をかけた時はすぐに取らんか!」

『申し訳ありません。本日はどの様なご用件でしょうか?』

「今な、桜ダンジョン支部に来ているのだが、桜ダンジョン支部の探索者の不正が発覚した。協会理事てあるこの私が、本人と面談し事実確認を行ったが、本人は不正事実を認める事はなかったが、調査により不正は間違いないと判断した」

『その探索者は、どの様な不正を働いたのですか?』

「それは電話では言えんよ。本部に戻り次第書類を回すが、逃亡の恐れがあるから、すぐに桜ダンジョン支部に来て、[仕事]をして欲しい。探索者の情報は後でメールする」

『それは理事会で承認されて、会長もご存知なのですよね?承認されていない案件で動く事は出来ないのですが』

「私が片田舎の桜ダンジョン支部にまで足を運んで、緊急性が高いと言えば事態の深刻さがわかるだろう?理事会への報告と承認、会長への報告は事後になるが、不正が確認出来ていて逃亡の恐れがあるならば、事後でも構わないのは君も知っているだろう。だからすぐに桜ダンジョン支部に来て[仕事]をしてくれと言っているのだが、理解が出来ないのかね?」

『・・・・・わかりました。すぐに向かいます。今回の仕事内容を伺っても?』

「今回発覚したのは重大な不正だ。酌量の余地はない!綺麗に掃除をしてくれたまえ」

『わかりました。今からそちらに向かいます。そちらに到着したら連絡を差し上げますので、取り急ぎ探索者の情報をお願いいたします。それでは後ほど』

「頼んだぞ!」

 通話を終えた私は電話を切った。

 私が動かしたのは、協会の暗部、表に出せない重大な不正や、不正をして逃亡をした職員や探索者を始末する、協会の裏の仕事をする職員だ。

 この職員達は探索者ランクで言うと、金級以上の実力を持った精鋭が揃っている。

 私が呼び出したのは、その中でも最も実力が高いと言われている、黒級クラスの職員だ。

 奴に狙われたら最後、一度奴と出会ってしまったら、生き残る事は不可能とまで言われている猛者だ。

 あの若僧、私に逆らい娘のキャリアに傷を付けた報いを受けるが良い。

 そうだ!奴が来て若僧を捕まえても、すぐには殺さない様に伝えんとな。

 奴の資産やアイテムを、全て私に差し出してから始末せんと、私が片田舎まで出張った意味が無くなってしまう。

 奴が来るのが楽しみだが、奴が来るまで退屈でもあるな。

 そうだ!青笹に付いている錦織と言う女で遊んやろう。

 理事である私が誘えば断らんだろう。

 断って来たら無理矢理楽しませて貰って、若僧と一緒に奴に始末させれば良い。

 そうと決まれば奴にメールを送ってしまうか・・・。


ーーーーーーーーーー

 一方森田と青笹は頭を抱えていた。

 横澤の暴走を止める事が出来なかった為、安達から一方的に決別宣言をされたからだ。

 特Sを持ち込み、協会に莫大な利益を齎した探索者との関係が、これ以上無いほどに悪化してしまった。

 おそらくこれから彼は、生活の糧を得る為の探索をしても、探索者協会に利益を齎す様な事はしてくれないだろう。

 あの時、勇気を出して横澤を止めておけば、諌めておけば、こうはならなかっただろう。

「青笹君、彼と和解する方法は思い付かないかね?」

「森田さん、無理です。あそこまで怒らせてしまったら、私には無理です」 

「錦織君に頼んでも無理かね?」

「おそらく錦織が動いても、聞き耳持たないと思います・・・」

「そうか・・・。ならば自分の無能を晒す様だが、会長にご相談を持ち掛けるか・・・」

「それが得策かと・・・。私の管理する支部で起きた事なので、私が処理しなければならないこですが、恥ずかしながら方法を思い付きません」

「横澤理事も早まった事をしてくれたものだ・・・」

 青笹と森田の苦悩が始まった。

 長い、長い苦悩の道が・・・。

ーーーーーーーーーー

 その頃錦織は、上長のしでかした事があまりにも大きく、有望な探索者からの決別宣言を受けた事もあり、仕事をヤル気にならず、早退して家に帰っていた。

 この早退が横澤を狂わせる事になるとも知らずに・・・。
 
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