現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 地上ではダンジョンに入る事が出来なくなった事を、協会関係者や探索者に箝口令を敷く事で隠蔽していた。

 情報が漏れて社会に混乱が巻き起こるのは時間の問題だろう。

 それまでに協会と政府は、現在備蓄されているダンジョン資源の正確な量を把握し、そのダンジョン資源を用いてどれだけ社会を維持する事が出来るのかを算出しなければならない。

 協会本部や各探索者協会支部はその対応に追われていた。

 そんな中、桜ダンジョンの職員がある事に気が付く。

 それは、桜ダンジョンだけ封鎖前に探索に入っていた探索者が、誰一人地上に戻っていない事だ。

 他のダンジョンは封鎖前にダンジョン内に居た探索者は、何らかの不思議な力で強制的に地上に戻されていた。

 だが桜ダンジョンのみ、誰一人として探索者が地上に戻っていないのだ。

 今回のダンジョン封鎖に関係があるのでは?と考えた職員は、この事実を報告する為に青笹の元へと赴くが、現在多忙であるとの一言で、面会を断られてしまった。

 それならと青笹の右腕である、探索者協会桜ダンジョン支部の頭脳と呼ばれている錦織を探すが、錦織は出勤して来ていない様だった。

 困り果てた職員は、藁にもすがる思いで、探索者協会桜ダンジョン支部兵器管理部部長の山本に相談する事にした。

 兵器管理部の運営する兵装販売店、通称[武器屋]に訪れた職員は、桜ダンジョンのみ探索者が地上に戻って来ていない事、青笹は相談出来る状況ではなかった事、錦織が出勤していない事を山本に伝えた。

「するってーとこの桜ダンジョンだけが、他のダンジョンよりも異常レベルが高いって事をあんたは言いたいんだな?しかも幹部連中が話も出来ないと・・・。これは何かあるな・・・」

 話を聞いた山本はこの異常事態の裏側に、桜ダンジョンが関係しているのではと考えた。

 そしてここ数日の桜ダンジョン支部が機能不全を起こしてかけていた事も思い出す。

「すまないが、本部から来ているお偉いさん達が支部に来ているか確認して貰えるか?支部にまだ来ていないならお偉いさん達のスケジュールを調べて欲しい。大至急だ。その間俺は自分のルートで情報収集をする。わかり次第すぐにここに来てくれ」

 山本は自分の頼んだ事を調べさせる為に、相談に来た職員を送り出すと、政府と協会から緊急時に限り携帯所持と使用を許可された拳銃を厳重に施錠されたキャビネットから取り出し、弾薬を装填してベルトに着けたホルスターに差し込む。

「こんな物騒な物を使う事態にならなければ良いが・・・」

 そう呟きながら、[臨時休業]の札を武器屋の入口に出して、情報を集める為にスマホを取り出した。


ーーーーーーーーーー

 俺は何者かの攻撃を受け、その傷を上級回復薬で治療してから、カミュや竜族の長と話をしていた。

 だが話をしている最中に、空間が切り裂かれ様に開いて、その中から黒いドレスを着た絶世の美女が現れた。

 カミュと竜族の長はその美女の姿を見るとすぐに跪き、頭を下げて臣下の礼をとった。

「私に許可なくダンジョンを封鎖したのは何故?」

 美女は四天王の二人に質問をする。

 その質問にカミュが答え、事の顛末を説明すると、ダンジョン内が軋むほど強い魔力を美女は放ち始めた。

「人族はやってはならない事をしてしまったようね。自分達の愚かな考えが結果的に、この魔王と魔王軍に挑む事になるなんて愚の骨頂だわ。話は分かりました。愚か者を追跡している鬼人族はそのまま追跡を続けさせなさい。竜族は魔界に戻って不死族の長をここに連れて来て。ファントムナイトはこのまま私達の護衛をお願いします」

 ドレスの美女の指示に、カミュと竜族は「『御意』」と答えると、すぐに動き出した。

 ドレスの美女は、二人が行動を開始したのを確認すると、俺の方へ向き直り近付いて来る。

 そして俺のすぐ近くで立ち止まると、話かけて来た。

「お怪我をされたと聞きましたが、お加減は如何ですか?・・・ご挨拶がまだでしたね。失礼いたしました。この姿でお目にかかるのは初めてですね。私は魔界を統治し魔王軍を指揮しております、魔界の王プフラウメと申します」

 魔王はそう言って頭を下げてきた。

「ウメちゃん???」

 俺は一言だけ返すと、魔王は嬉しそうに微笑みながら、

「はい。ウメちゃんです」

 と答えてくれた。

 まさかあのパグの姿をした不思議生物ウメちゃんが、魔王だったなんて・・・。

 情報が多過ぎて処理出来なくなりそうだ。

「敬愛するお母様のご子息である主様に危害を加えた人族を、我々魔王軍は許す事は出来ません。ですのでこの度四天王が行った、ダンジョンの封鎖に関しては、人族が受ける正当な報いの一部であるとこの私が宣言いたします」

 ウメちゃんの話を聞いて、疑問に思った事を問い掛けた。

「それは俺を想ってくれての事だと思うから、感謝しています。それで疑問に思ったんだけど、なんで魔王軍はダンジョンを封鎖出来たりするの?」

「詳しくは言えませんが、我々魔界の者はダンジョンの管理を任されています。私と四天王に限り、ダンジョンの解放や封鎖をする事が出来るのです。ですので、人族が主様に牙を剥いた時点で、ダンジョンの恩恵を与える事を止め、必要であれば愚かな考えを持つ人族を滅する事も考えています」

 ダンジョンの封鎖は、魔王軍が短絡的に行ったのではなく、正当な資格を持って行った事が分かった。

「じゃあ俺がダンジョンを解放してってお願いしたら、ダンジョンを解放してくれるの?」

「今回は主様のお願いでも解放は出来ません。魔王である私と、四天王の一部を従えておられる主様に危害を加えたという事は、魔王軍に宣戦布告をしたのと同じです。魔王軍としてこれを許す事は出来ません。後ほど人族にはこちらから使いを出して、宣戦布告に応じる事を伝えます。どうするかは人族次第です」

 魔王軍と人族・・・、主に探索者協会になると思うが、争いを避ける事は難しそうだ。

 争いに関わる話が終わると、ウメちゃんは真面目な顔をして俺に新たな話題を振って来る。

「そういえば主様は、不死族以外の四天王にお料理を振る舞われた様ですが、次からは私も呼んでいただいてもよろしいですか?別に食べたいからって訳ではないですが、私の配下だけが美味しい物を食べている事が周囲に伝わると、その・・・魔王軍としての秩序が維持出来なくなりますので・・・。何度も言いますが私の食い意地が張っているとかではありませんので・・・」

 流石ウメちゃん、魔王として威厳のある振る舞いをしなければならないシーンが終わると、いつも通りのウメちゃんに戻ってしまった。

 違うのは、[パグ]の姿なのか、[魔王]としての姿なのかくらいだ。

「それは別に構わないけど、家から居なくなったらオカンが心配するんしやない?」

「それならば大丈夫です。魔力で作った分身体を置いて来ました。ですのでお母様は今分身体と寛いでおられます」

 抜かりは無い様だ。

 その後もウメちゃんとの、「〇〇が美味しい」、「〇〇を食べたい」、などの会話をしていると、童子が戻って来た。

 戻って来た童子は、血塗れになり気絶した男性を引きずっていた。

 その男性を俺の近くに放り投げると、童子が男性の説明をする。

「主、こいつが主を襲った奴だ。まだ話はしていない。口を割らせるのはこれからだが、儂らに任せて貰ってもいいか?」

 ダンジョン封鎖を招いた張本人は、血塗れで気絶したまま、ピクリとも動かなかった。


 
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