現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 この日、探索者協会に激震が走った。

 地球上で唯一の知的生命体だと自負していた人類に、高度な知能を持つ生命体が接触して来たのだ。

 接触して来た生命体は、自らを魔界を統べる王・・・[魔王]と名乗った。

 その魔王を守る様に、物理法則を無視したかの様な、重厚な鎧を身に纏った騎士と、額から角の生えた戦士が魔王の側に控えていた。

 魔王から探索者協会に伝えられた言葉は、人類を絶望のドン底に突き落とす言葉だった。

「人族からの宣戦布告、確かに受け取った。我々魔王軍は全力で宣戦布告に応じると共に、一切の慈悲を与える事無く戦い抜く。それに先立ってダンジョンを全て封鎖させて貰った。これはダンジョンを支配している魔族の正当な権利であり、反論は一切認めない。ただ今を持って、魔王軍と人族は戦争状態に突入する」

 探索者協会として魔王に応対した、青笹と森田そして横澤は、魔王と名乗る女性に宣戦布告した覚えは無いと伝えるも、相手にはされなかった。

「探索者協会第二警備部の木下と名乗る人物から、我々の関係者が一方的に攻撃を受けた。それは立派な宣戦布告に当たる。どちらかが滅びるまで、この戦いを楽しもう」

 魔王はそう言い残すと空間を切り裂いて、切り裂かれた空間の中に消えて行った。

 魔王の残した言葉の意味を青笹は理解出来なかったが、横澤と森田は[木下]と言う名前と役職に心当たりがある。

 横澤は自分が動かした暗部として。

 森田は行方を暗ました職員として。

 横澤は保身の為に色々と考えるも、動揺し過ぎて正常な考えが出来なくなり、桜ダンジョン支部の応接室に閉じこもってしまった。

 一方で森田は協会会長にすぐに連絡を入れ、魔王と名乗る知的生命体から宣戦布告を受け取ったと言われた事、宣戦布告となったのは暗部の木下が魔王軍関係者に攻撃を加えた事、魔王軍がダンジョンを支配しておりダンジョンを封鎖した事、そして理事の横澤が怪しいと伝えた。

 協会会長は森田に横澤の身柄を拘束する様命じ、理事としての役職と権限を即時凍結する事を決定する。

 その後日本政府に、事実上ダンジョンを支配する魔族と日本国は戦争状態に突入したと報告をした。

 協会会長の報告を受け対策会議が招集されるも、ダンジョンに入る事が出来ないので相手に攻め込む事は出来ないので、専守防衛に徹すると政府は決定をし、自衛隊と探索者協会に各ダンジョン周辺を封鎖し、防衛陣地を構築する様命令を下した。

 桜ダンジョン支部に居る森田は、協会職員と高ランク探索者を招集し、横澤の身柄確保に向かった。

 職員と探索者を伴って応接室に飛び込んだ森田だったが、時すでに遅く横澤の姿は無かった。

 横澤元理事の逃亡・・・。

 現在起きている大騒動の中心に居ると思われる人物の逃亡・・・、決して見過ごせる事では無かった。

 森田は急ぎ、横澤の宿泊先のホテルへと車を走らせる。

 途中何度か信号に引っかかるが、ホテルに予想以上に早く到着する事が出来、森田一行はホテルのエントランスに飛び込んだ。

 そしてホテルのロビーに向かい、係員に横澤は在室しているか確認すると、横澤はついさっきホテルに戻って来て、部屋に入ったと答えてくれた。

 森田はエレベーター全てと、非常階段、非常口に逃亡を防ぐ為に人員を配置し、何名かの職員を伴って自ら横澤の部屋に突入する事に決めた。

 その職員の中に武器屋の山本の姿もあった。

 部屋の前に着くと、ホテル側には[緊急事態]と伝えてあるので、ドアはカードキーで解錠するのではなく、純粋な力でドアを破壊し突入する様職員に伝え、職員は何の躊躇いも無くドアを破壊し突入した。

 突入した森田一行の目に飛び込んで来たのは、信じられない光景だった。

ーーーーーーーーーー

 少し時は遡り、ダンジョン10階層では、童子が連れて来た血塗れの男を囲んで、俺と魔王プフラウメ、四天王カミュ、四天王童子に加え、竜族の長と新たにお目見えする四天王の[不死族の長]が立っていた。

「主様、私はこれからこの愚者に尋問をして、何故主様を襲ったのか問い質そうと思います」

 ウメちゃんは俺にこれからの事を話して来た。

 それを聞いて不死族の長が話に加わって来る。

『魔王様、それならば我がその愚者の精神に干渉して、情報を抜き取りましょうか?』

 青白い肌の色をして、全身を漆黒のローブに包まれた不死族の長は、物騒な事を言って来た。

 だが抵抗されて情報を言わない事が想定されるので、この提案は素晴らしいと感じてしまう。

 だが不死族の長はウメちゃんの配下であり、俺の配下ではないので、俺がその提案を受けて、精神に干渉する事を依頼する事は出来ない。

 そんな俺の考えを察してくれたのか、ウメちゃんは不死族の長に命令を下した。

「すぐに情報を抜き取ってください。でも精神が壊れる様な手荒な真似はしないでくださいね。この愚者にはまだまだ役に立って貰わないといけませんから・・・」

 ウメちゃんの言葉を聞いて、不死族の長はニヤリと笑うと、『御意』と一言だけ答えてから、愚者を引きずって少し離れた所へ移動して行った。

 不死族の長は愚者の頭に手を当ててから目を閉じて、何かをブツブツと呟いている。

 その姿を確認したウメちゃんは、俺達の方へ向き直ると話を始めた。

「情報が手に入るまで暫く待ちましょう。その間に竜族の長に話をしておかないといけない事があります。・・・私はこちらにおられる主様・・・シン様の従魔になりました。人族の従魔になるなんてと思うかもしれませんが、主様もそのご家族もとても優しく、魔界での疲れを癒してくださる素晴らしい方々です。私と同様にファントムナイトと鬼人も主様の従魔になっています。もし竜族の長も従魔になりたいと言うのであれば、私は止めません」

 ここまで話すとウメちゃんは、全身から魔力を放出しながら竜族の長の顔を睨む様な鋭い目で見ると、ドスの効いた声で話しを続ける。

「ですが、主様に敵対する様な素振りを少しでも見せたら・・・その時は私が全力でお相手させていただきます。不死族の長も聞こえていますね?この度の戦は主様の為でもあるのです。わかりましたか?」

 ウメちゃんの言葉に『『御意』』と返事が返って来た。

『魔王様、竜族は主様に敵対する気は毛頭ございません。魔王様もご存知な様に、命と同様な貴重な物を分け隔てなく振る舞ってくださる方に、従う事はあっても敵対する気はございません。二君を持つ事をお許しいただけるのであれば、私と竜族は魔王様と主様を主と仰いで、お仕えしたく存じます』

 竜族がそう言うとウメちゃんは、満足そうな表情で頷いていた。

 その傍らでカミュと童子は、

「あれを知ってしまったら仕方ないですね・・・」

「あれには抗えない・・・。一人だけあれを知らない不死族が可哀想にすら思えてくる」

 と話をしていたが、二人の言う[あれ]とはなんの事だろう?

 [あれ]の事について考えていると、不死族の長が愚者を引きずって戻って来た。

『情報が抜き出せました。愚者の名前は木下と申す者で、探索者協会とやらの第二警備部に所属している、政府公認の暗殺者の様です。そして此度の愚行を指示した人族の名前は横澤と申す者で、横澤なる者から此度の背景をこやつは聞かされてはおりません。ですが人族が魔王様の主様に危害を加えたのは事実。我も主様の従魔になると共に、此度の戦に参戦させていただきます』

 不死族の長は抜き取った情報の説明と共に、俺の従魔になると言ってくれた。

 戦争は互いに血が流れる前に終結させたいが、探索者協会に思う所しかない俺は、探索者協会と敵対する事に関しては反対する気は無かった。

「それでは不死族が抜き取った情報を元に、探索者協会とやらに赴いて、宣戦布告を受けたと伝えてきますね。ファントムナイト、鬼人、私と一緒に来ていただけますか?竜族と不死族は私達が戻るまで、主様の護衛と愚者の監視をお願いします」

 ウメちゃんはそう言い残すと空間を切り裂き、カミュと童子を連れて切り裂かれた空間の中に消えて行った。

 三人が消えて行ったのを確認した不死族の長が、俺に話しかけて来た。

『[あれ]とはなんの事なのでしょう?』

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