現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 和平交渉の条件を受けるかどうかの、返答をしなければならないタイムリミットが目前に迫り、内閣と政府関係者、探索者協会に自衛隊、警察公安関係者は、探索者協会本部前に集まっていた。

 協会本部周辺は封鎖され、周囲には陸上自衛隊が展開し警戒に当たり、上空は陸上自衛隊のヘリコプターがホバリングし地上を警戒、航空自衛隊の戦闘機がヘリコプターよりも高い高度をぐるぐると旋回しながら、上空で起こる事態に備えていた。

 そんな厳戒態勢の中、集まった日本側関係者の表情は明るくない。

 長い議論の為の疲れもあるのだが、今回下した決定内容が、彼らの表情を暗くしているのである。

 日本側が下した決定は、魔王軍の出した条件を飲み、【横澤一族を斬首する】事であった。

 だが横澤一族に処置を施す光景を撮影する事は賛成されなかった。

 国家にとって不都合な事は記録として残す事も、その記録を流出させる事も、国家を運営していく為には出来ないと判断したからだ。

 念の為、昨夜の時点で横澤一族の身柄は確保し、内閣調査室が非合法活動の為に設立したペーパーカンパニーの倉庫の中に監禁されている。

 そんな暗い表情の日本側関係者の前の空間が裂け始め、その中から協会に攻め込んで来た鬼人族と、魔王プフラウメとその護衛が現れた。

 日本側関係者に緊張が走る。

 昨日よりも威圧感のある魔王軍に、日本側関係者は必死に動揺を隠しているが、それは長くはもたなかった。

 何故ならルシフェルの『跪け!』の一言で、車椅子に載せられている岸破総理以外は、抵抗も虚しく強制的に跪かされたからだ。

 おそらくルシフェルの持つ何らかのスキルが発動したのだろう。

 跪いた日本側関係者の前に、魔王プフラウメと執事兼護衛のルシフェル、そして先日ここで暴れた童子とカミュが近付いた。

「慈悲深い魔王様より出された条件、人族がどうするか返答を聞かせて貰おう」

 跪いたままの日本側関係者に童子が投げ掛けた。

 数秒の沈黙の後、車椅子に乗った男性が返答をする。

「私は日本国 内閣総理大臣の岸破と申します。この度そちらの勢力から受けた武力行使を、国家として断じて許す事は出来ません。ですがこれ以上の被害を出す訳にはいきませんので、そちらが出された条件を受けますので、和平交渉の席に着いていただきたい」

 岸破は一言多いが、首相らしい態度で、魔王軍の出した条件を飲む事を伝えた。

「人族の愚者の筆頭と、それに連なる一族郎党の首を差し出す事を了承したのだな。ならば速やかに首を撥ね、その首と首を撥ねる光景を収めた物を準備するがよい。その準備が整ったら、そうだな・・・、この建物の一番高い場所にに白旗を掲げるがよい。白旗が確認出来たら、こちらから和平交渉の日時を伝える使者を出してやろう」

 童子が岸破の言葉に答えた。

 だが保身と隠蔽が得意な岸破は、条件を出せる立場でもないのに、条件を切り出した。

「横澤と一族の首は差し出させていただきます。ですがその光景を撮影し、それを記録した物をお渡しする事は、人道的に考え、するべきでは無いと判断いたしました。何卒首を差し出すだけにしていただけないでしょうか?」

 岸破の言葉に、魔王軍は俄に殺気立つ。

 何故なら、自分達の置かれた立場を分かっていないからだ。

「貴様らが条件を出すなど、笑止千万!ならば我々魔王軍は貴様らとの和平交渉、一切受けない事とする!」

 童子がそう答えると、岸破は焦りを隠さず、童子に話し掛ける。

「お待ちください!現代のこの世界では、人の首を撥ねる習慣は無く、その残酷な光景を残す事も良しとはされていません。ですので我々の要望を聞き入れていただけませんか?首を撥ねるだけでも我々にとっては一大決心が必要な事なのです!」

 岸破は諦めずに条件を伝えて来るも、魔王はその条件を受け入れるつもりは無い。

 童子が何度断っても、「出来ない」の一点張りで、話が進まない。

 その状況に痺れを切らした魔王は、重たい口を開く。

「出来ないは通用しません。そもそもあなた方人族が、欲を出した事から始まった今回の争い、あなた方が何故被害者ぶるのですか?力も兵力も勝る我々があなた方の要求を飲むとでも思っているのならば、魔王軍も舐められた物です。こちらが出した条件を変える気は一切ありません。それが出来ないのであれば、此度の交渉は決裂したとみなし、決裂後即時戦闘を再開させます」

 魔王はそう言ってから手を挙げた。

 すると上空に竜族の大軍が現れ、所狭しと空を飛び周り始める。

「さあご決断を。今すぐにお答えいただけなければ、交渉が決裂したと受け取らせていただきます」

 魔王は岸破にそう告げると、ルシフェルがどこかからか取り出した、豪華な装飾の施された椅子に座った。

 相談する事すら許されていない岸破は、悩みながらも一人で決断を下す。

「分かりました。横澤一族を斬首する一部始終を撮影し、首と共に差し出します。ですので和平交渉までは戦闘を停止していただきたい」

「分かりました。人族が変な気を起こさなければ、この国との戦闘は一時停戦といたしましょう。ですが何日も待てませんので、お急ぎください」

 魔王がそう告げると、岸破は魔王の言葉の真意を読み取らずに、素直に礼を告げた。

「ご英断ありがとうございます。」 

 その後地上戦力の魔王軍は、空間を切り裂き、桜ダンジョン10階層へと戻り、上空を飛行していた竜族の一団は、高高度まで上昇してから日本海を目指して飛んで行った。

 その先頭は、魔王軍四天王である竜族の長だった事は言うまでもない。


ーーーーーーーーーー

 俺は今、12階層の森の中で、不可思議な出来事と絶賛遭遇中だ。

 時を遡る事15分程前、巨大な熊を倒して森の中を探索していると、目の前に淡い光を放つそこそこ大きなドーム状の物体が現れた。

 森に生える木々はそのドームを避けるかの様に、ドームの周辺には生えておらず、明らかに人為的に作られた空間だと一目で分かる。

 ドームの外周を歩いてみるも、ドームには出入りが可能な開口部や、扉の様な物が存在しておらず、ドーム内の探索は不可能と思われた。

 が、しかし!外周の探索を終えた俺が、興味本位でドームに触れると、まるで生き物の様に触れた部分が口を開き、ドームの中へと入る事が出来る開口部が出来上がった。

 恐る恐るドームの中に進んで行く。

 ドームの中は、床は白一色だが、壁や天井部分からはドームの外側を普通に見る事が出来る。

 外側からは見えなくて、内側からは見る事が出来る、・・・そう、それはまるでマジックミラーの様な感じだった。

 そしてドーム内には何も無く、一つの広い空間があるだけだ。

 俺はドームの中心部を目指して歩こうと足を踏み出したが、ドームに入った開口部はいつの間にか消えてしまっている。

 全くもって不思議な空間だ。

 ドームの中心を目指して歩く事数十秒、中心部に辿り着いたと同時に、ドーム内にアナウンスが響き渡る。

『神令により、対象者の因果律改変を行います』

 と・・・。


 最近の俺、色々な事に巻き込まれ過ぎじゃありませんか?


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