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新しい扉を開くピンクの鍵
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「あ、あ・・・んーっ」
ぞくぞくぞくっと、身体の中から震える。まるで、触れて貰うためだけに、そこは存在しているんじゃないかと思うくらいに、全ての神経が触れられたところに集中する。
目は見えない。布を巻かれて外せなくなっている。
手は動かない。頭の上で紐で縛られている。
「ん、ひゃあっ」
「由紀、感じすぎ。そんなに、いいの?」
彼氏の宗一が、由紀の胸の突起に小刻みな振動をあてがい、思いがけず大きな声を出してしまう。
まさか、こんなことになるなんてーーーーー
*******
由紀と宗一は、付き合って約半年になる。自分で言うのも変な感じだが、所謂「ほのぼのカップル」に属する、と思っている――思っていた。
由紀は身長152cmと小柄でやせ型、胸は小さく童顔で、社会人になって3年経つというのに今でも学生に見られてしまうのが悩みだ。そして、由紀の一つ後輩である宗一も、由紀との身長差は10cm以上はあるものの、背も高い方ではなく、よく知らない人に道を尋ねられるような、人の好さそうな顔をしている。
二人ともほっこり系とでもいうのだろうか-カジュアルな服装を好み、デートといえば公園にお弁当を持ってピクニックに行ったり、映画を観たりして過ごしていた。二人を知る人達からは、「かわいらしいカップル」と言われてきたし、由紀自身も、学生時代の延長のような雰囲気を感じていた。
由紀も宗一もそれぞれ一人暮らしであるし、勿論セックスもしている。ただ、本当に普通のことしか、していない。キスをして、いい雰囲気になって、宗一が優しく愛撫してくれて・・・それで由紀は十分に満足していたし、疑問に思っていることなど特になかった。
******
ある日、由紀は大学時代の友人の結婚式の二次会パーティーに参加していた。
「彩美、ウェディングドレス綺麗だねぇ~。いいなぁ結婚…ね、千香」
「そだねー。私はまだいいかなぁって思うけど、由紀はもう結婚したいとかあるの?」
私たちも25歳。付き合ってる相手がいれば、そろそろ結婚を意識し出す年頃だ。一方、まだまだ冒険できる年齢でもある。
「う、うん・・・宗一とはまだ半年だけど、このまま穏やかに付き合い続けていけたら、幸せかなーって・・・へへへ」
「のろけか!まぁ宗一くん優しそうだもんねぇ~。でも、あんまり平和ボケしてると、ギャップがあった時の衝撃デカいんじゃない?」
「宗一は見た目通り優しいよ。ギャップも特にないし、本当に平和で幸せなんだって」
「はいはい、ご馳走さま」
千香が呆れたように切り返す。もう、平和ボケだなんて・・・これが日常で、これからも続いていくんだっていいじゃない、と由紀が頬を膨らませた時、司会の声が響いた。
「次は、35番! ビンゴの人いますかー?」
あ。
「揃った!はーい、ビンゴですー!」
由紀は今穴を開けたカードを持って、前方へ進んだ。新郎新婦から、景品を手渡される。
「由紀おめでとう!はい、どうぞ。これで女磨いて、彼氏ともっとラブラブに過ごしてね♡」
箱には無地の白いもので、中身がわからないようになっていた。これは、何だろう。尋ねようとすると、彩美が小声で「お・た・の・し・み♡」と囁いた。
*****
二次会が終わった後で、由紀と千香は酔い醒ましに夜遅くもやっているカフェに入った。
「由紀、さっきの景品なんだったのー?」
「わかんない。 彩美は『女を磨いて』って言ってたし、美容グッズとかかなぁ?だったら嬉しいな」
「ね、ね、嫌じゃなかったら、開けてみてよ」
千香に促され、由紀も気になっていた箱を開封してみることにした。開けてみると、中には複数の小物が見えた。
(何だろう、美顔器?と、こっちは化粧水、かな・・・?)
由紀が手に取ろうとすると、一緒に覗き込んでいた千香が慌てて由紀の手を押さえた。
「ちょ、ちょ、待って!」
由紀はぽかん、として手を押さえられたまま、千香を見つめ返す。
千香が小声で囁く。
「ここじゃ、まずいって・・・!これ、ローターとローションだよ」
「え?美顔器と化粧水じゃ・・・」
「・・・ほんと、ほのぼの平和ボケちゃん、なんだから」
ローター、ローション。所謂「大人のオモチャ」というものか。由紀だって、実際に見たことはないけど、そういうものがあるということ位は知っている。まさか、自分の手元に来る日が来るなんて、思ってもみなかったけど。
意識すると、途端に顔が熱を帯びてくるのがわかった。
「あ、彩美ったらなんてものを・・・!」
焦る由紀に対し、千香が少し思案してから口を開く。
「・・・でもさ、せっかくだし、使ってみたら?」
「えっ、いや、使い方とかわかんないし・・・」
「そんなの、説明書が入ってるよ」
「それに、部屋に置いておけないよ・・・宗一に見つかったら絶対ドン引きされちゃう」
由紀が半泣きになりながら訴えるも、千香は続ける。
「いや、わかんないよー?意外と、新しい扉開いちゃったりして。いいじゃん、たまには『ほのぼの』から外れてみても」
「む、無理だよ~、千香にあげるよ!」
「こら、あんたが貰った景品でしょうが。それに、私、もう持ってるもん」
「えっ」
意外だった。
というか、仲が良くてもそんな話は今までしたことがなかった。そんなにさらっと言えることなのか、と由紀は面食らった。
「彼氏と使ったりしてるよー。マンネリ解消にもなるし、楽しみ方も増えるし、大丈夫だって」
「う、うぅ・・・」
「わかんないこととかあったら聞いてよ。ここじゃあんまり話せないけどさ」
そこまで言われて、押し付けるわけにもいかず、由紀は自宅に持ち帰った。
******
「はぁー、ヒール疲れたぁ」
お風呂上がりに、いつもより念入りにふくらはぎをマッサージをしていると、メッセージの着信があった。
宗一からだ。
『彩美さんの二次会おつかれさま!楽しかったかなー?なんか景品当たった?w』
景品。ドキッとして、ふと部屋の隅に置かれた紙袋を見る。入浴で温まった身体が、さらに火照る。
(・・・い、言えない)
『うん、楽しかったよー!彩美とっても綺麗だった。残念ながらビンゴは外れちゃった(泣)』
当たり障りのない返事を返すのが精いっぱいだ。
『そっか、良かったね~。ところで明日は、11時に○〇公園で待ち合わせて、そのあとは由紀のうちでゆっくりご飯つくる、でいいんだよね?』
『うん、最近寒くなってきたし、あったまるもの作ろー。おやすみ』
ほら、私たちはこういうカップルだもの。
宗一にそんな淫乱な子だと思われたくないし、と思いながらも、由紀はどうしても気になってしまい、紙袋から箱を取り出した。
「ど、どんなものかって確認するだけ・・・」
と小さく呟きながら、その手は電池を入れ、ボタンを押してしまう。
ジジジジジっと小さな卵型のものが震え、思わず落としそうになる。
(説明書には、まずは下着の上から当てるって書いてあったし・・・)
そのように試してみるが、ちょっとくすぐったさを覚えるだけだった。
(うーん?よくわからないなぁ。やっぱり私にはまだ使えないってことかな。いいや、それより明日のお肌のために寝よ寝よ!)
由紀はそれをとりあえずクッションの下に置き、遅くまで出掛けていた疲れもあってか、すぐに眠りに落ちた。
*****
翌日――窓から差し込む光で目を覚ました。
(うっ頭痛い…飲みすぎたかなぁ)
こめかみに手を当てながら時計を見ると、10時を過ぎていた。
(わ、寝すぎた・・・急いで支度しなくちゃ)
慌てて着替えを済ませ、待ち合わせの公園へ向かった。
待ち合わせ時間の10分前に着いたつもりだったが、宗一はもうそこに来ていた。
「おはよう?こんにちは?どっちだろ。・・・早いね、待たせちゃったかな?」
「確かに、どっちがいいのかねー。俺も今来たとこだよ、大丈夫」
少し涼しくなってきた日差しに照らされて、宗一が優しく微笑む。
落ち葉が綺麗だから、と少し公園を歩くことにした。自然と手をつないで歩いていると、ほわほわと心が温まってくる。老夫婦みたいだね、と笑い合った。
昼ご飯を作ろう、ということで二人でスーパーでシチューの材料を買い、由紀の家で二人で作った。
(やっぱり、宗一といると心が和むなぁ…これからもこんな感じなんだろうな。結婚とか、まだ具体的な話は出てないけど、こういう家庭なら素敵だな)
ご飯を食べて、まったり映画の録画を観て、そして、唇を重ねる。宗一のキスは、いつも優しい。大事なものに触れるように、丁寧に丁重に扱ってくれる。ゆっくりと倒され由紀の背中が床についた時、ちょうど、頭のところにクッションが当たった。宗一の目線が、由紀の少し奥の方に動いた。
「由紀・・・これは?」
―――今の今まで、すっかり忘れていた。昨夜、クッションの下にとりあえず隠しておいた例のモノが、はみ出してしまったのだろう。
宗一が、ピンク色のそれを手に取った。
「そっそれは・・・違うの!わ、私が買ったんじゃなくて」
「ふーん…開封済だけど、使ったの?」
(なんか、宗一が怖い。怒ってる・・・?)
「き、昨日!の!二次会の景品で…」
「それ、外れたって言ってなかったっけ?」
(やっぱり怒ってる…幻滅したよね・・・)
「だって、そ、そんなの当たったなんて、言えなくて」
「でも、使ったんだ?」
宗一がスイッチを軽く押し、振動音が部屋に響く。
「それは・・・」
「使ったんでしょ?」
宗一が自身の左手で由紀の右手を床に縫い留めた。そして、上から覆いかぶさるように深く、口づける。荒々しく舌の奥や歯の裏まで侵入され、お互いの速度を増す呼吸が混じり合った時、先ほどの振動の元を由紀の胸の突起に押し当てた。
「あぁんっ!」
由紀は、今まで出したことのないような声に、自分でも驚いた。
(やだ・・・恥ずかしい・・・・・・でも・・・)
「へぇ、服の上からでも、そんな感じるんだ」
宗一が不敵な笑みを浮かべる。
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる」
そう言って、由紀のカーディガンをはぎ取り、器用にブラジャーを外し、上はキャミソール一枚にしてしまった。下もいつのまにかショーツ一枚にされ、宗一も下着のみになり、二人でベッドの上へ移動した。
(うぅ、キャミが擦れて、なんだか・・・)
由紀の顔が上気し、キャミソールの上からでもはっきりと乳首の形が浮かび上がっている。
「あれ、どうしたの。何もしてないのに、そんなに顔赤くして。それに…」
言いながら、宗一が親指でキャミソールの上から、浮いた一点を一撫でする。
「ひあっ」
「こんなに乳首も勃たせちゃって、何を待ってるのかな?」
由紀が真っ赤な顔で瞳を潤ませて、宗一を上目遣いで見上げる。
「い、いじわる…」
「由紀は、エッチだね。そう言ってる今、ほら、こんなにパンツに染みが広がってるよ」
「!!!や、み、見ないで」
「だーめ」
閉じようとした脚を、宗一が身体を割り込ませてグッと押さえ、もう一度ローターのスイッチを入れて、その染みの近くにあてがった。
「あっ、あぁっ!」
染みの周囲の丘に振動を感じると、ますます水分が増してくるのが由紀自身にもわかった。由紀の最も敏感なところ――クリトリスは宗一はわざと避けているのがわかるが、由紀の身体は無意識にそこに振動を求めて、捩ってしまう。
その時、宗一がスイッチを切った。
由紀の顔は、火照りと焦りと涙と汗で、もうぐちゃぐちゃだった。
(どうして、どうしよう…私が私じゃないみたいな…)
その姿を見て、ますます宗一は熱い何かが湧き上がってくるのを感じた。
「宗一、、、ごめんね、私、どうしてこんな・・・」
「何を、謝ってるの?恥ずかしくて、気持ちいいんでしょ?」
「だって、まだ外も明るいのに、こんな、ぐちゃぐちゃで…恥ずかしいし、宗一の顔見れない…」
瞳に涙を溜めて、由紀が訴える。
「どうしたい、やめたいの?」
「そ、それ、は・・・」
「はっきり言ってごらん、由紀」
宗一は由紀から視線を外すことなく、真剣な顔つきで迫る。
「や、やめないで、欲しいです…でも、明るいの恥ずかしい・・・」
やめないで、まではなんとか宗一の目を見て言えたが、それ以降は見つめ続けることができず、視線を下に落としながら呟いた。
「わかった」
宗一は、おもむろに立ち上がるとバスルームに向かい、タオルとヘアゴムを持って戻ってきた。不思議そうに見つめる由紀の、目から上をタオルで覆った後ゴムで縛り、両腕を上げさせて、宗一のベルトでベッドの柵と結び付けた。
「えっ、そ、宗一!?」
「自分で見えるから、恥ずかしいんじゃない?これなら明るいのも気にならないでしょ」
「な、なに言って・・・」
自分からは見えないのに、よがる姿を宗一に明るいところで見られるなど、余計に恥ずかしい。それなのに、その羞恥すら期待してしまっていることを、由紀はうすうすながらも感じていた。
※次回10/29(火)更新予定
ぞくぞくぞくっと、身体の中から震える。まるで、触れて貰うためだけに、そこは存在しているんじゃないかと思うくらいに、全ての神経が触れられたところに集中する。
目は見えない。布を巻かれて外せなくなっている。
手は動かない。頭の上で紐で縛られている。
「ん、ひゃあっ」
「由紀、感じすぎ。そんなに、いいの?」
彼氏の宗一が、由紀の胸の突起に小刻みな振動をあてがい、思いがけず大きな声を出してしまう。
まさか、こんなことになるなんてーーーーー
*******
由紀と宗一は、付き合って約半年になる。自分で言うのも変な感じだが、所謂「ほのぼのカップル」に属する、と思っている――思っていた。
由紀は身長152cmと小柄でやせ型、胸は小さく童顔で、社会人になって3年経つというのに今でも学生に見られてしまうのが悩みだ。そして、由紀の一つ後輩である宗一も、由紀との身長差は10cm以上はあるものの、背も高い方ではなく、よく知らない人に道を尋ねられるような、人の好さそうな顔をしている。
二人ともほっこり系とでもいうのだろうか-カジュアルな服装を好み、デートといえば公園にお弁当を持ってピクニックに行ったり、映画を観たりして過ごしていた。二人を知る人達からは、「かわいらしいカップル」と言われてきたし、由紀自身も、学生時代の延長のような雰囲気を感じていた。
由紀も宗一もそれぞれ一人暮らしであるし、勿論セックスもしている。ただ、本当に普通のことしか、していない。キスをして、いい雰囲気になって、宗一が優しく愛撫してくれて・・・それで由紀は十分に満足していたし、疑問に思っていることなど特になかった。
******
ある日、由紀は大学時代の友人の結婚式の二次会パーティーに参加していた。
「彩美、ウェディングドレス綺麗だねぇ~。いいなぁ結婚…ね、千香」
「そだねー。私はまだいいかなぁって思うけど、由紀はもう結婚したいとかあるの?」
私たちも25歳。付き合ってる相手がいれば、そろそろ結婚を意識し出す年頃だ。一方、まだまだ冒険できる年齢でもある。
「う、うん・・・宗一とはまだ半年だけど、このまま穏やかに付き合い続けていけたら、幸せかなーって・・・へへへ」
「のろけか!まぁ宗一くん優しそうだもんねぇ~。でも、あんまり平和ボケしてると、ギャップがあった時の衝撃デカいんじゃない?」
「宗一は見た目通り優しいよ。ギャップも特にないし、本当に平和で幸せなんだって」
「はいはい、ご馳走さま」
千香が呆れたように切り返す。もう、平和ボケだなんて・・・これが日常で、これからも続いていくんだっていいじゃない、と由紀が頬を膨らませた時、司会の声が響いた。
「次は、35番! ビンゴの人いますかー?」
あ。
「揃った!はーい、ビンゴですー!」
由紀は今穴を開けたカードを持って、前方へ進んだ。新郎新婦から、景品を手渡される。
「由紀おめでとう!はい、どうぞ。これで女磨いて、彼氏ともっとラブラブに過ごしてね♡」
箱には無地の白いもので、中身がわからないようになっていた。これは、何だろう。尋ねようとすると、彩美が小声で「お・た・の・し・み♡」と囁いた。
*****
二次会が終わった後で、由紀と千香は酔い醒ましに夜遅くもやっているカフェに入った。
「由紀、さっきの景品なんだったのー?」
「わかんない。 彩美は『女を磨いて』って言ってたし、美容グッズとかかなぁ?だったら嬉しいな」
「ね、ね、嫌じゃなかったら、開けてみてよ」
千香に促され、由紀も気になっていた箱を開封してみることにした。開けてみると、中には複数の小物が見えた。
(何だろう、美顔器?と、こっちは化粧水、かな・・・?)
由紀が手に取ろうとすると、一緒に覗き込んでいた千香が慌てて由紀の手を押さえた。
「ちょ、ちょ、待って!」
由紀はぽかん、として手を押さえられたまま、千香を見つめ返す。
千香が小声で囁く。
「ここじゃ、まずいって・・・!これ、ローターとローションだよ」
「え?美顔器と化粧水じゃ・・・」
「・・・ほんと、ほのぼの平和ボケちゃん、なんだから」
ローター、ローション。所謂「大人のオモチャ」というものか。由紀だって、実際に見たことはないけど、そういうものがあるということ位は知っている。まさか、自分の手元に来る日が来るなんて、思ってもみなかったけど。
意識すると、途端に顔が熱を帯びてくるのがわかった。
「あ、彩美ったらなんてものを・・・!」
焦る由紀に対し、千香が少し思案してから口を開く。
「・・・でもさ、せっかくだし、使ってみたら?」
「えっ、いや、使い方とかわかんないし・・・」
「そんなの、説明書が入ってるよ」
「それに、部屋に置いておけないよ・・・宗一に見つかったら絶対ドン引きされちゃう」
由紀が半泣きになりながら訴えるも、千香は続ける。
「いや、わかんないよー?意外と、新しい扉開いちゃったりして。いいじゃん、たまには『ほのぼの』から外れてみても」
「む、無理だよ~、千香にあげるよ!」
「こら、あんたが貰った景品でしょうが。それに、私、もう持ってるもん」
「えっ」
意外だった。
というか、仲が良くてもそんな話は今までしたことがなかった。そんなにさらっと言えることなのか、と由紀は面食らった。
「彼氏と使ったりしてるよー。マンネリ解消にもなるし、楽しみ方も増えるし、大丈夫だって」
「う、うぅ・・・」
「わかんないこととかあったら聞いてよ。ここじゃあんまり話せないけどさ」
そこまで言われて、押し付けるわけにもいかず、由紀は自宅に持ち帰った。
******
「はぁー、ヒール疲れたぁ」
お風呂上がりに、いつもより念入りにふくらはぎをマッサージをしていると、メッセージの着信があった。
宗一からだ。
『彩美さんの二次会おつかれさま!楽しかったかなー?なんか景品当たった?w』
景品。ドキッとして、ふと部屋の隅に置かれた紙袋を見る。入浴で温まった身体が、さらに火照る。
(・・・い、言えない)
『うん、楽しかったよー!彩美とっても綺麗だった。残念ながらビンゴは外れちゃった(泣)』
当たり障りのない返事を返すのが精いっぱいだ。
『そっか、良かったね~。ところで明日は、11時に○〇公園で待ち合わせて、そのあとは由紀のうちでゆっくりご飯つくる、でいいんだよね?』
『うん、最近寒くなってきたし、あったまるもの作ろー。おやすみ』
ほら、私たちはこういうカップルだもの。
宗一にそんな淫乱な子だと思われたくないし、と思いながらも、由紀はどうしても気になってしまい、紙袋から箱を取り出した。
「ど、どんなものかって確認するだけ・・・」
と小さく呟きながら、その手は電池を入れ、ボタンを押してしまう。
ジジジジジっと小さな卵型のものが震え、思わず落としそうになる。
(説明書には、まずは下着の上から当てるって書いてあったし・・・)
そのように試してみるが、ちょっとくすぐったさを覚えるだけだった。
(うーん?よくわからないなぁ。やっぱり私にはまだ使えないってことかな。いいや、それより明日のお肌のために寝よ寝よ!)
由紀はそれをとりあえずクッションの下に置き、遅くまで出掛けていた疲れもあってか、すぐに眠りに落ちた。
*****
翌日――窓から差し込む光で目を覚ました。
(うっ頭痛い…飲みすぎたかなぁ)
こめかみに手を当てながら時計を見ると、10時を過ぎていた。
(わ、寝すぎた・・・急いで支度しなくちゃ)
慌てて着替えを済ませ、待ち合わせの公園へ向かった。
待ち合わせ時間の10分前に着いたつもりだったが、宗一はもうそこに来ていた。
「おはよう?こんにちは?どっちだろ。・・・早いね、待たせちゃったかな?」
「確かに、どっちがいいのかねー。俺も今来たとこだよ、大丈夫」
少し涼しくなってきた日差しに照らされて、宗一が優しく微笑む。
落ち葉が綺麗だから、と少し公園を歩くことにした。自然と手をつないで歩いていると、ほわほわと心が温まってくる。老夫婦みたいだね、と笑い合った。
昼ご飯を作ろう、ということで二人でスーパーでシチューの材料を買い、由紀の家で二人で作った。
(やっぱり、宗一といると心が和むなぁ…これからもこんな感じなんだろうな。結婚とか、まだ具体的な話は出てないけど、こういう家庭なら素敵だな)
ご飯を食べて、まったり映画の録画を観て、そして、唇を重ねる。宗一のキスは、いつも優しい。大事なものに触れるように、丁寧に丁重に扱ってくれる。ゆっくりと倒され由紀の背中が床についた時、ちょうど、頭のところにクッションが当たった。宗一の目線が、由紀の少し奥の方に動いた。
「由紀・・・これは?」
―――今の今まで、すっかり忘れていた。昨夜、クッションの下にとりあえず隠しておいた例のモノが、はみ出してしまったのだろう。
宗一が、ピンク色のそれを手に取った。
「そっそれは・・・違うの!わ、私が買ったんじゃなくて」
「ふーん…開封済だけど、使ったの?」
(なんか、宗一が怖い。怒ってる・・・?)
「き、昨日!の!二次会の景品で…」
「それ、外れたって言ってなかったっけ?」
(やっぱり怒ってる…幻滅したよね・・・)
「だって、そ、そんなの当たったなんて、言えなくて」
「でも、使ったんだ?」
宗一がスイッチを軽く押し、振動音が部屋に響く。
「それは・・・」
「使ったんでしょ?」
宗一が自身の左手で由紀の右手を床に縫い留めた。そして、上から覆いかぶさるように深く、口づける。荒々しく舌の奥や歯の裏まで侵入され、お互いの速度を増す呼吸が混じり合った時、先ほどの振動の元を由紀の胸の突起に押し当てた。
「あぁんっ!」
由紀は、今まで出したことのないような声に、自分でも驚いた。
(やだ・・・恥ずかしい・・・・・・でも・・・)
「へぇ、服の上からでも、そんな感じるんだ」
宗一が不敵な笑みを浮かべる。
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる」
そう言って、由紀のカーディガンをはぎ取り、器用にブラジャーを外し、上はキャミソール一枚にしてしまった。下もいつのまにかショーツ一枚にされ、宗一も下着のみになり、二人でベッドの上へ移動した。
(うぅ、キャミが擦れて、なんだか・・・)
由紀の顔が上気し、キャミソールの上からでもはっきりと乳首の形が浮かび上がっている。
「あれ、どうしたの。何もしてないのに、そんなに顔赤くして。それに…」
言いながら、宗一が親指でキャミソールの上から、浮いた一点を一撫でする。
「ひあっ」
「こんなに乳首も勃たせちゃって、何を待ってるのかな?」
由紀が真っ赤な顔で瞳を潤ませて、宗一を上目遣いで見上げる。
「い、いじわる…」
「由紀は、エッチだね。そう言ってる今、ほら、こんなにパンツに染みが広がってるよ」
「!!!や、み、見ないで」
「だーめ」
閉じようとした脚を、宗一が身体を割り込ませてグッと押さえ、もう一度ローターのスイッチを入れて、その染みの近くにあてがった。
「あっ、あぁっ!」
染みの周囲の丘に振動を感じると、ますます水分が増してくるのが由紀自身にもわかった。由紀の最も敏感なところ――クリトリスは宗一はわざと避けているのがわかるが、由紀の身体は無意識にそこに振動を求めて、捩ってしまう。
その時、宗一がスイッチを切った。
由紀の顔は、火照りと焦りと涙と汗で、もうぐちゃぐちゃだった。
(どうして、どうしよう…私が私じゃないみたいな…)
その姿を見て、ますます宗一は熱い何かが湧き上がってくるのを感じた。
「宗一、、、ごめんね、私、どうしてこんな・・・」
「何を、謝ってるの?恥ずかしくて、気持ちいいんでしょ?」
「だって、まだ外も明るいのに、こんな、ぐちゃぐちゃで…恥ずかしいし、宗一の顔見れない…」
瞳に涙を溜めて、由紀が訴える。
「どうしたい、やめたいの?」
「そ、それ、は・・・」
「はっきり言ってごらん、由紀」
宗一は由紀から視線を外すことなく、真剣な顔つきで迫る。
「や、やめないで、欲しいです…でも、明るいの恥ずかしい・・・」
やめないで、まではなんとか宗一の目を見て言えたが、それ以降は見つめ続けることができず、視線を下に落としながら呟いた。
「わかった」
宗一は、おもむろに立ち上がるとバスルームに向かい、タオルとヘアゴムを持って戻ってきた。不思議そうに見つめる由紀の、目から上をタオルで覆った後ゴムで縛り、両腕を上げさせて、宗一のベルトでベッドの柵と結び付けた。
「えっ、そ、宗一!?」
「自分で見えるから、恥ずかしいんじゃない?これなら明るいのも気にならないでしょ」
「な、なに言って・・・」
自分からは見えないのに、よがる姿を宗一に明るいところで見られるなど、余計に恥ずかしい。それなのに、その羞恥すら期待してしまっていることを、由紀はうすうすながらも感じていた。
※次回10/29(火)更新予定
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