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学園編
第三十四話
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暗くジメジメした場所。
どうしてこんなことになったの?なにも悪いことしていないのに…
刑がその日に決まることなんて普通はありえない。この国の常識すべてが変わってしまったのかな。
そう思うとどこまであるハーディルは洗脳魔法をかけているのだろう、もしかしたらこの国の国民全員に欠けているのかもしれない。
逃げられないや。
「ヴァレリウス。」
「ハーディル。」
僕を魔界に連れて行くなんて言っていたけど、反抗的だから急に殺したくなったのかな?
でもハーディルを受け入れることなんて出来ない。
「こうなって嬉しいの?ハーディル?」
「うん、嬉しいよ。思ったんだ、このままヴァレリウスを連れて行っても魔界に行けば結局弱ってしまう。だから魂だけを魔界に持っていけば、私と一緒の悪魔になれて、ずっと一緒だ。」
ずっと…一緒?…悪魔?わけが分からない。とにかく逃げないと。
「お願い、出してよ。」
「ダメ。少し我慢するだけだから。」
ハーディルは貼り付けたような笑顔になった。
怖い。不気味だ。
「じゃあね。」
「待っ…。」
あぁ、どうしたらいいんだろう。
牢屋の鉄格子に破壊魔法をぶつけてもなにも変わらない。この空間は魔法が使えないのだろうか…。
途方に暮れて、冷たい床の上に座った。
いつ、殺されてしまうのかも分からずに恐怖だけが増していく。
心臓がバクバクしてくる。誰も周りにはいないため静かで、自分の心臓の音が聞こえてくる気がする。
「ニャー」
聞き慣れた鳴き声が聞こえる。
「…ルター!?」
【遅くなってすまんな。】
この牢屋は魔法を阻害するがテレパシーは使えるようだった。
【出してあげよう。】
【でも、ここ魔力が…】
【大丈夫だ。】
ルターは小さいドラゴンの姿になって、魔法を放った。
「どうして?」
【私が使っているのは古の魔法であるから対応してなかったのだろう。】
「そっか…」
【では、逃げるぞ。】
ルターはまた変身して人になった。
2人で周りを警戒しながら脱出した。脱獄するとは考えなかったのか、警備は手薄で思っていたよりも簡単に抜け出せた。
緊張なのかは分からないけど、さっきよりも心臓がドキドキする気がする。時々激痛がして胸の辺りを抑えた。
「どうした?」
「ん?な…なんでもないよ。」
「…」
ルターが難しそうな顔をしてまた歩き出した。
しばらく歩いたら、もう追いかけてこないだろうところまでついた。
「ヴェル、ここから移動するぞ。」
「え?うん。どうやって?」
「飛ぶんだ。」
「え?」
ルターが変身を解いて最初に会った時の姿のドラゴンになった。
「すごいっ!」
やっぱりドラゴンのルターはかっこいい!
【のれ。】
「うん!」
ルターの大きい背中にのった。鱗は硬くて艶々してて綺麗。
【しっかり捕まっていろ。】
「うん!」
【出発するぞ。】
「ねえ、ルター。キースは大丈夫かな?」
【心配するな、あいつは強いからな。あの悪魔にも負けないぞ。】
「そう…だよね!」
【行くぞ。】
ルターが翼を広げて飛び出した。
「うわー凄いっ!」
初めて空を飛んだ。さっきまでいたところももう小さくなっている。
さっきまで悲しくて悔しい気持ちが嘘みたいだ。
そういえば悪役になりたいとずっと思っていたけど、本当に孤独になった時はそんなこと少しも思わなかった。
【最初に会った時ヴェルは悪役になりたいと言ったな。】
「うん…。でも、ダメだったね。」
【ヴェルはもう諦めるのか?憧れていた悪役はこんなに弱かったのか。】
「違うけど!どちらかといえば、ハーディルの方が…」
【違うぞ。あれは悪だ。】
「……そうだね。完璧な悪役になる為には挫折も必要だよね。」
【そうだ。わたしはヴェルが目標を達成するのを楽しみにしているぞ。】
「うん!ありがとう!」
久しぶりにルターとゆっくり話せて楽しかった。
しばらく飛び続けているといつの間にか消えていた胸の痛みがまた出てきた。
「っっ!」
【心臓が痛いのか?】
「た…大丈夫。」
【やはり限界が近いみたいだな。わたしはヴェルを死なせたくない。分かってくれ。】
ルターはやっぱり前に言っていた方法を諦めていないようだった。
「い…や。」
【わたしの我儘を許してくれ。】
「や…」
しっかりと拒否したいのに体中が痛くなってきて視界も歪んできた。
「おね…が…い。やめ…て。」
【すまん。】
キースside
ただ最初からは焦げ臭いこの学園で、唯一そばにいて落ち着けて、興味があったから。
とても優しい人だから、悪意を向けられてもただ受け入れるだけだった。
でも、とても悲しそうな顔をする君を見て守りたいと強く思った。
「もしかしてずっと待っててくれたの?」
ヴァレリウスが寝込んでから1週間ほど経った。久しぶりに会えたヴァレリウスは顔色が悪いが目が合うと笑ってくれた。
「___カハッ!」
「君はここで寝てなよ。」
君を守ると誓ったのに、負けてしまった。あいつより強かったら…。
その後投獄された。
「ヴァレリウスを処刑するまではここにいてね。勇者の子孫というから期待していたのにそうでもなかったね。」
怒りで震えた。
「絶対にヴァレリウスを救う。」
貼り付けた笑顔で余裕そうに立っている悪魔に向かって叫んだ。
どうしてこんなことになったの?なにも悪いことしていないのに…
刑がその日に決まることなんて普通はありえない。この国の常識すべてが変わってしまったのかな。
そう思うとどこまであるハーディルは洗脳魔法をかけているのだろう、もしかしたらこの国の国民全員に欠けているのかもしれない。
逃げられないや。
「ヴァレリウス。」
「ハーディル。」
僕を魔界に連れて行くなんて言っていたけど、反抗的だから急に殺したくなったのかな?
でもハーディルを受け入れることなんて出来ない。
「こうなって嬉しいの?ハーディル?」
「うん、嬉しいよ。思ったんだ、このままヴァレリウスを連れて行っても魔界に行けば結局弱ってしまう。だから魂だけを魔界に持っていけば、私と一緒の悪魔になれて、ずっと一緒だ。」
ずっと…一緒?…悪魔?わけが分からない。とにかく逃げないと。
「お願い、出してよ。」
「ダメ。少し我慢するだけだから。」
ハーディルは貼り付けたような笑顔になった。
怖い。不気味だ。
「じゃあね。」
「待っ…。」
あぁ、どうしたらいいんだろう。
牢屋の鉄格子に破壊魔法をぶつけてもなにも変わらない。この空間は魔法が使えないのだろうか…。
途方に暮れて、冷たい床の上に座った。
いつ、殺されてしまうのかも分からずに恐怖だけが増していく。
心臓がバクバクしてくる。誰も周りにはいないため静かで、自分の心臓の音が聞こえてくる気がする。
「ニャー」
聞き慣れた鳴き声が聞こえる。
「…ルター!?」
【遅くなってすまんな。】
この牢屋は魔法を阻害するがテレパシーは使えるようだった。
【出してあげよう。】
【でも、ここ魔力が…】
【大丈夫だ。】
ルターは小さいドラゴンの姿になって、魔法を放った。
「どうして?」
【私が使っているのは古の魔法であるから対応してなかったのだろう。】
「そっか…」
【では、逃げるぞ。】
ルターはまた変身して人になった。
2人で周りを警戒しながら脱出した。脱獄するとは考えなかったのか、警備は手薄で思っていたよりも簡単に抜け出せた。
緊張なのかは分からないけど、さっきよりも心臓がドキドキする気がする。時々激痛がして胸の辺りを抑えた。
「どうした?」
「ん?な…なんでもないよ。」
「…」
ルターが難しそうな顔をしてまた歩き出した。
しばらく歩いたら、もう追いかけてこないだろうところまでついた。
「ヴェル、ここから移動するぞ。」
「え?うん。どうやって?」
「飛ぶんだ。」
「え?」
ルターが変身を解いて最初に会った時の姿のドラゴンになった。
「すごいっ!」
やっぱりドラゴンのルターはかっこいい!
【のれ。】
「うん!」
ルターの大きい背中にのった。鱗は硬くて艶々してて綺麗。
【しっかり捕まっていろ。】
「うん!」
【出発するぞ。】
「ねえ、ルター。キースは大丈夫かな?」
【心配するな、あいつは強いからな。あの悪魔にも負けないぞ。】
「そう…だよね!」
【行くぞ。】
ルターが翼を広げて飛び出した。
「うわー凄いっ!」
初めて空を飛んだ。さっきまでいたところももう小さくなっている。
さっきまで悲しくて悔しい気持ちが嘘みたいだ。
そういえば悪役になりたいとずっと思っていたけど、本当に孤独になった時はそんなこと少しも思わなかった。
【最初に会った時ヴェルは悪役になりたいと言ったな。】
「うん…。でも、ダメだったね。」
【ヴェルはもう諦めるのか?憧れていた悪役はこんなに弱かったのか。】
「違うけど!どちらかといえば、ハーディルの方が…」
【違うぞ。あれは悪だ。】
「……そうだね。完璧な悪役になる為には挫折も必要だよね。」
【そうだ。わたしはヴェルが目標を達成するのを楽しみにしているぞ。】
「うん!ありがとう!」
久しぶりにルターとゆっくり話せて楽しかった。
しばらく飛び続けているといつの間にか消えていた胸の痛みがまた出てきた。
「っっ!」
【心臓が痛いのか?】
「た…大丈夫。」
【やはり限界が近いみたいだな。わたしはヴェルを死なせたくない。分かってくれ。】
ルターはやっぱり前に言っていた方法を諦めていないようだった。
「い…や。」
【わたしの我儘を許してくれ。】
「や…」
しっかりと拒否したいのに体中が痛くなってきて視界も歪んできた。
「おね…が…い。やめ…て。」
【すまん。】
キースside
ただ最初からは焦げ臭いこの学園で、唯一そばにいて落ち着けて、興味があったから。
とても優しい人だから、悪意を向けられてもただ受け入れるだけだった。
でも、とても悲しそうな顔をする君を見て守りたいと強く思った。
「もしかしてずっと待っててくれたの?」
ヴァレリウスが寝込んでから1週間ほど経った。久しぶりに会えたヴァレリウスは顔色が悪いが目が合うと笑ってくれた。
「___カハッ!」
「君はここで寝てなよ。」
君を守ると誓ったのに、負けてしまった。あいつより強かったら…。
その後投獄された。
「ヴァレリウスを処刑するまではここにいてね。勇者の子孫というから期待していたのにそうでもなかったね。」
怒りで震えた。
「絶対にヴァレリウスを救う。」
貼り付けた笑顔で余裕そうに立っている悪魔に向かって叫んだ。
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