完璧な悪役になってみせる

ミカン

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魔王編

第四十一話

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「…酷い。」

目の前に血の海が広がっている。

ここまで被害が大きいのは初めてだった。でも、悲しんでいたら救える者も救えなくなる。

「ビーストは?」

近くにいる戦士に声をかけた。戦士もこの状態に呆然としていたが、声を掛けたらここに来た理由を思い出したようだった。

「東の方です。」

「ありがとう。」

呻き声などもまだ聞こえないことからだいぶ先にいるだろう。

「飛んでいくよ。」

「はい。」

1人でも多く助けないと…


「あそこです!」

『グァァァァ』

「キャー!」

ビーストは小さい女の子を襲っていた。間に合わない…。

飛行速度を速くしても間に合いそうにない。魔法も遠過ぎて当たらない…。

「逃げて!」

叫んでもどうにもならないことは分かっていたけど、思い切り叫んだ。

ビーストの鋭い爪が振り下ろされる時もう無理だと諦めかけた時、瞬い光が女の子を包んだ。


「え?」

訳がわからなかったけど、女の子がいた場所に急いで到着した。

光が小さくなってきた。
ビーストは真っ二つに切られていた。

そして目の前には恐怖で気を失った女の子と長くきれいな銀髪の男性が剣を持ちたっていた。


水色の瞳が澄んだ湖のようだった。

「キース…どうして…?」

かつての学友キース・トクスだった。


「うわぁぁあん」

驚きは隠せないけど、ひとまず女の子を保護した。

「大丈夫だよ。もう、大丈夫…」

「お…お母さんが…。うわぁぁん!」

この状況で大丈夫なはずはないけど、親を亡くしたばかりの子供にかける言葉は見つからず、ただ体をさすることしかできない。



女の子は泣き疲れたようで僕の腕の中で眠ってしまった。

「キースだよね?」

「あぁ。久しぶりだな。ヴァレリウス。」

「あ…久しぶりだね。……あれからどうしてたの?」

キースは僕を庇った罪で捕まってしまったけどあれからどうなったのか知りたかった。

「ヴァレリウスの刑が決まってしまった時に牢から逃げ出したんだ。君が消えたからそっちで大騒ぎで警備が手薄になっていたからな。よくあの悪魔から逃げ出せたな。」

「ハーディルが悪魔だって気づいていたの?僕が逃げ出せたのはルターのおかげだよ。」

「あぁ、結局悪魔から君を守れなかったけどな。あのドラゴンか…。立派なツノと尻尾だな。」

「そんなことないよ。有り難かった。そう、ルターのツノと尻尾、凄いでしょ。」

「逃げ出したあとは君を探すために旅に出た。」

「ど…どうして、そこまで僕のこと気にかけてくれるの?」

「君を助けたいんだ。」

「あ…ありがとう。とりあえず、せっかく会えたから城でゆっくり休んで。」

「あぁ、ありがとう。」

キースを城に招待してゆっくり話を聞くことにした。キースが僕を助けたいと言ってくれて嬉しかったけど、そこまで思ってくれる心当たりはない。


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