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15話
翌朝、都は早く目が覚めた。
窓から朝日が差し込んでいる。
都はベッドから起き上がり、窓を開けた。
新鮮な空気が、部屋に流れ込んでくる。
都は深呼吸した。
考えた。
一晩中、考えた。
でも、答えは出なかった。
ただ、一つだけ決めたことがある。
逃げるのは、簡単だ。
でも、それは——
また同じことの繰り返しだ。
都は、ここにいることを選んだ。
少なくとも、今は。
都は服を着替えて、部屋を出た。
廊下を歩いていると、京と出会った。
「おはよう」
京が声をかけてきた。
「……おはよう」
都は小さく返事をした。
「よく眠れたか?」
「……まあ」
都は京を見た。
「あの、さ」
「ん?」
「昨日の話……借金のこと」
「ああ」
「本当に、いいの?帳消しにして」
都は不安そうに尋ねた。
「ああ、本当だ」
京は頷いた。
「お前を、金で繋ぎ止めたくない」
「……」
「それに」
京は都の頭に手を置いた。
優しく撫でる。
「お前は、もう俺の番だ。それ以上の価値がある」
「価値……」
都は複雑な表情をした。
「俺、まだお前のこと、信用してないから」
「分かっている」
「許してもいない」
「ああ」
「でも……」
都は言葉に詰まった。
「ここにいる。今は」
「……」
京の目が、わずかに見開かれた。
「お前が、選んでくれたのか?」
「選んだ、っていうか……」
都は顔を背けた。
「勉のこともあるし。それに、番になっちゃったし。体も、お前から離れると変な感じがするし……」
「……」
「だから、今は、ここにいる。それだけ」
都は小さく付け加えた。
「でも、いつか気が変わるかもしれない」
「構わない」
京は微笑んだ。
珍しく、本当に嬉しそうな笑顔。
「お前が、ここにいてくれるなら、それでいい」
京は都を抱きしめた。
優しく。
都は、最初は体を強ばらせたが——
抵抗はしなかった。
ただ、京の腕の中にいた。
不思議と、嫌な感じはしなかった。
その日から、都と京の距離が少しずつ縮まり始めた。
朝、都は自分で一階に降りて、食事をするようになった。
京も一緒に食卓につく。
「今日は何をする予定だ?」
京が尋ねた。
「……特には」
「だったら、庭でも散歩するか?天気がいい」
「……うん」
都は頷いた。
食後、二人は庭を歩いた。
京は都の隣を歩く。
ただ、一緒に歩いている。
「この花、知ってるか?」
京が、花壇の花を指差した。
「……知らない」
「スイートピーだ。花言葉は『優しい思い出』」
「へえ……」
都は花を見た。
綺麗な花だった。
「お前は、花は好きか?」
「……分かんない。あんまり、花とか見る機会なかったから」
「そうか」
京は少し考えてから、言った。
「じゃあ、これから一緒に見よう」
「……え?」
「花を。季節ごとに、いろんな花が咲く。それを、お前に見せたい」
京の言葉に、都は少し驚いた。
「なんで、そんなこと……」
「お前に、幸せになってほしいからだ」
京は都を見た。
「小さな幸せでいい。花を見て、綺麗だと思う。それだけで、十分だ」
「……」
—————
その夜、都は悪夢を見た。
再び監禁される夢。
京に襲われる夢。
弟が連れ去られる夢。
「やめて……やめてよ……!」
都は叫んだ。
そして、目が覚めた。
汗びっしょりだった。
心臓が、激しく鳴っている。
「はぁ……はぁ……」
都は息を整えようとした。
でも、恐怖が消えない。
その時、ドアがノックされた。
「都、大丈夫か?」
京の声だった。
「……」
都は何も答えなかった。
ドアが開いた。
京が入ってくる。
「悪夢を見たのか?」
「……なんで、分かるの」
「お前の叫び声が聞こえた」
京は都の傍に来た。
都の額に触れる。
「汗をかいているな」
「……」
「怖かったか?」
京の声は、優しかった。
都は、小さく頷いた。
「……怖かった」
「何の夢だった?」
「……また、監禁される夢」
都は震える声で言った。
「また、お前に……酷いことされる夢……」
「……」
京は何も言わなかった。
ただ、都を抱きしめた。
「すまん」
京は都の背中を撫でた。
「俺のせいだ」
「……」
「でも、もう大丈夫だ」
京の声が、都の耳元で響く。
「もう、お前を傷つけない」
「……本当?」
「ああ、約束する」
京は都の顔を両手で包んだ。
都の目を見つめる。
「俺は、お前を愛している」
「お前を、守る」
「お前を、幸せにする」
「それが、俺の全てだ」
京の目には、嘘はなかった。
都は、その目を見つめた。
そして——
少しだけ、信じてもいいかもしれないと思った。
「……もう少し、ここにいて」
都は小さく言った。
「一人だと、怖いから」
「ああ」
京は都をベッドに寝かせた。
そして、都の隣に横たわった。
都を抱きしめる。
優しく。
「眠れ。俺が、ここにいる」
「……」
都は京の胸に顔を埋めた。
京の心臓の音が聞こえる。
規則正しい鼓動。
それが、都を安心させた。
「……ありがとう」
都は小さく呟いた。
「どういたしまして」
京は都の髪を撫でた。
都は、少しずつ眠りに落ちていった。
今度は、悪夢を見なかった。
ただ、温かい夢を見た。
誰かに守られている夢。
愛されている夢。
それは——
都が、長い間忘れていた感覚だった。
朝、都が目を覚ました時、京はまだ隣にいた。
都を抱きしめたまま、眠っている。
都は、京の寝顔を見た。
こんなに近くで見るのは、初めてだった。
整った顔立ち。
でも、どこか疲れているような。
都は、京の頬に触れた。
温かい。
京が目を覚ました。
「……おはよう」
「……おはよう」
都は慌てて手を引っ込めた。
「よく眠れたか?」
「……うん」
都は小さく頷いた。
「悪夢は?」
「見なかった」
「よかった」
京は微笑んだ。
二人は、しばらくそのままでいた。
ただ、見つめ合って。
距離は、確実に縮まっていた。
でも、都の心の傷は、まだ癒えていない。
それでも——
少しずつ、前に進んでいた。
二人とも。
窓から朝日が差し込んでいる。
都はベッドから起き上がり、窓を開けた。
新鮮な空気が、部屋に流れ込んでくる。
都は深呼吸した。
考えた。
一晩中、考えた。
でも、答えは出なかった。
ただ、一つだけ決めたことがある。
逃げるのは、簡単だ。
でも、それは——
また同じことの繰り返しだ。
都は、ここにいることを選んだ。
少なくとも、今は。
都は服を着替えて、部屋を出た。
廊下を歩いていると、京と出会った。
「おはよう」
京が声をかけてきた。
「……おはよう」
都は小さく返事をした。
「よく眠れたか?」
「……まあ」
都は京を見た。
「あの、さ」
「ん?」
「昨日の話……借金のこと」
「ああ」
「本当に、いいの?帳消しにして」
都は不安そうに尋ねた。
「ああ、本当だ」
京は頷いた。
「お前を、金で繋ぎ止めたくない」
「……」
「それに」
京は都の頭に手を置いた。
優しく撫でる。
「お前は、もう俺の番だ。それ以上の価値がある」
「価値……」
都は複雑な表情をした。
「俺、まだお前のこと、信用してないから」
「分かっている」
「許してもいない」
「ああ」
「でも……」
都は言葉に詰まった。
「ここにいる。今は」
「……」
京の目が、わずかに見開かれた。
「お前が、選んでくれたのか?」
「選んだ、っていうか……」
都は顔を背けた。
「勉のこともあるし。それに、番になっちゃったし。体も、お前から離れると変な感じがするし……」
「……」
「だから、今は、ここにいる。それだけ」
都は小さく付け加えた。
「でも、いつか気が変わるかもしれない」
「構わない」
京は微笑んだ。
珍しく、本当に嬉しそうな笑顔。
「お前が、ここにいてくれるなら、それでいい」
京は都を抱きしめた。
優しく。
都は、最初は体を強ばらせたが——
抵抗はしなかった。
ただ、京の腕の中にいた。
不思議と、嫌な感じはしなかった。
その日から、都と京の距離が少しずつ縮まり始めた。
朝、都は自分で一階に降りて、食事をするようになった。
京も一緒に食卓につく。
「今日は何をする予定だ?」
京が尋ねた。
「……特には」
「だったら、庭でも散歩するか?天気がいい」
「……うん」
都は頷いた。
食後、二人は庭を歩いた。
京は都の隣を歩く。
ただ、一緒に歩いている。
「この花、知ってるか?」
京が、花壇の花を指差した。
「……知らない」
「スイートピーだ。花言葉は『優しい思い出』」
「へえ……」
都は花を見た。
綺麗な花だった。
「お前は、花は好きか?」
「……分かんない。あんまり、花とか見る機会なかったから」
「そうか」
京は少し考えてから、言った。
「じゃあ、これから一緒に見よう」
「……え?」
「花を。季節ごとに、いろんな花が咲く。それを、お前に見せたい」
京の言葉に、都は少し驚いた。
「なんで、そんなこと……」
「お前に、幸せになってほしいからだ」
京は都を見た。
「小さな幸せでいい。花を見て、綺麗だと思う。それだけで、十分だ」
「……」
—————
その夜、都は悪夢を見た。
再び監禁される夢。
京に襲われる夢。
弟が連れ去られる夢。
「やめて……やめてよ……!」
都は叫んだ。
そして、目が覚めた。
汗びっしょりだった。
心臓が、激しく鳴っている。
「はぁ……はぁ……」
都は息を整えようとした。
でも、恐怖が消えない。
その時、ドアがノックされた。
「都、大丈夫か?」
京の声だった。
「……」
都は何も答えなかった。
ドアが開いた。
京が入ってくる。
「悪夢を見たのか?」
「……なんで、分かるの」
「お前の叫び声が聞こえた」
京は都の傍に来た。
都の額に触れる。
「汗をかいているな」
「……」
「怖かったか?」
京の声は、優しかった。
都は、小さく頷いた。
「……怖かった」
「何の夢だった?」
「……また、監禁される夢」
都は震える声で言った。
「また、お前に……酷いことされる夢……」
「……」
京は何も言わなかった。
ただ、都を抱きしめた。
「すまん」
京は都の背中を撫でた。
「俺のせいだ」
「……」
「でも、もう大丈夫だ」
京の声が、都の耳元で響く。
「もう、お前を傷つけない」
「……本当?」
「ああ、約束する」
京は都の顔を両手で包んだ。
都の目を見つめる。
「俺は、お前を愛している」
「お前を、守る」
「お前を、幸せにする」
「それが、俺の全てだ」
京の目には、嘘はなかった。
都は、その目を見つめた。
そして——
少しだけ、信じてもいいかもしれないと思った。
「……もう少し、ここにいて」
都は小さく言った。
「一人だと、怖いから」
「ああ」
京は都をベッドに寝かせた。
そして、都の隣に横たわった。
都を抱きしめる。
優しく。
「眠れ。俺が、ここにいる」
「……」
都は京の胸に顔を埋めた。
京の心臓の音が聞こえる。
規則正しい鼓動。
それが、都を安心させた。
「……ありがとう」
都は小さく呟いた。
「どういたしまして」
京は都の髪を撫でた。
都は、少しずつ眠りに落ちていった。
今度は、悪夢を見なかった。
ただ、温かい夢を見た。
誰かに守られている夢。
愛されている夢。
それは——
都が、長い間忘れていた感覚だった。
朝、都が目を覚ました時、京はまだ隣にいた。
都を抱きしめたまま、眠っている。
都は、京の寝顔を見た。
こんなに近くで見るのは、初めてだった。
整った顔立ち。
でも、どこか疲れているような。
都は、京の頬に触れた。
温かい。
京が目を覚ました。
「……おはよう」
「……おはよう」
都は慌てて手を引っ込めた。
「よく眠れたか?」
「……うん」
都は小さく頷いた。
「悪夢は?」
「見なかった」
「よかった」
京は微笑んだ。
二人は、しばらくそのままでいた。
ただ、見つめ合って。
距離は、確実に縮まっていた。
でも、都の心の傷は、まだ癒えていない。
それでも——
少しずつ、前に進んでいた。
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