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仲間って良いよね

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俺達は黒龍のいたダンジョンを目指した、確かオルドラ軍が駐留していたダンジョンだったはずだ。

・セリス
「なあミズキ、ライオットの様子がおかしいんだが何かあったのか?」

セリスがミズキに質問する。
どうやら俺の雰囲気が変わったらしい。

・マルチ
「何か思い詰めてる。」

・リーシュ
「何があったのでしょう?」

俺を心配してくれているがそんな事すら気が付かなかった、ずっと考え事をしながら動いていたんだ。

・ミズキ
「今日はこの辺でキャンプにしましょう。」

俺の代わりにミズキが仕切ってくれた。
全員ミズキに従って行動する。

俺は、、、

・ミズキ
「ライオットはお風呂を作ってね。」

ミズキの指示で少し離れた場所に作成する。
これからどうしよう、、、。

・セリス
「随分と思い詰めている様だな。」

セリスが現れた。
どうやらミズキの配慮らしい。

・セリス
「困った時は何でも言えって言っただろう?一体何があったんだ?」

確かにセリスが一番頼りになる。
でもこの事を一番話し辛いのもセリスだ。

言えるか?
君は死んでいるんだって。

・「うん、、、ちょっとね。」

そう答えるのが精いっぱいだった。
セリスは俺の隣に来て手を握った。

・セリス
「私の中で何を見付けたんだ?」

セリスは自分のせいだと感じている様だ。
自分の限界突破の後からライオットはおかしくなった、そう考えるのが自然と言えるだろう。

・セリス
「お前のそんな顔は見たくない、何があったのか教えてくれ。黒龍を倒す必要があると感じたのは何故だ?」

セリスは引く気が無いようだ。
話すしかないのかな?

こんな話を聞いてセリスはどう思うのかな?
俺もセリスの悲しい顔なんて見たくないよ。

・セリス
「何故、泣いてるの?」

セリスに言われるまで気付かなかった。

・「あ、、、。」

まただ。
勝手に溢れてくる。

・セリス
「私が居るから安心して。
おいで、ライオット。」

セリスに促されるまま抱き着いた。
俺は何故泣いてしまうのだろう?
自分でも自分が解らない。

・セリス
「どんな事だって受け止めるから何でも話してほしいな、私はライオットの傍にずっと居てあげるからね。」

俺の欲しい言葉を知っているかの様だ。
的確に俺を安心させてくれる。

俺は一人になりたくなかったのかな?
『傍に居る』と言う言葉が一番残る。
俺の忘れた過去が影響してるのか?

何が何だか解らない、、、

・セリス
「嫌なら何もしなくて良いんだよ?誰も知らない所でずっと一緒に暮らそう。ずっとずっと一緒に居るから。」

セリスの言葉が身に染みる。
俺もセリスと一緒に居たいよ。

そうだよ。
だからここに来たんじゃないか。

・「俺は、黒龍が怖い。」

上手く話す自信はないが全てを吐き出そうと思った。セリスなら聞いてくれる、そう信じたいんだ。

・「俺の決断のせいで皆が居なくなるのが怖いんだ、でも黒龍は倒さなくてはならない。一番大切な物を取り戻す必要がある。」

セリスは俺の頭を撫で続けてくれる。

・「でもやっぱり怖いんだ、皆が死んでしまうかもしれないと考える自分が怖くて仕方がない。」

物事に絶対はない。
どんな行動をしても死ぬときは死ぬ。

・「死を連想してしまうと思考を止められなくなった、こんな事は一度もなかったのに何故か恐怖だけが増幅していくんだ。」

・セリス
「私達は死なないし、貴方も死なない。」

セリスは俺を慰めてくれる。

・「何でそんな事が!」

俺は勢いよく叫んでしまう。
しかしセリスはその言葉を遮ってくる。

・セリス
「貴方は私が守るの。」

真っ直ぐに俺を見つめるセリス。
とても強い意志が感じられた。

優しくも力強いセリスの言葉。
俺は完全に飲み込まれていた。

・セリス
「貴方は死なない、障害は私が全て排除してあげるわ。それに私達も死なない、貴方を一人になんてしないわ。貴方は十分に苦しんだの、もう楽になっていい筈よ。」

セリスの言葉の真意は理解できなかった。
でも凄く安心した事を覚えている。

・セリス
「さあ、全て話して。」

セリスの言われた通りに全てを話した。
一人で抱え込んでも仕方ないと思ったんだ。

ごめんセリス。
俺一人じゃ抱えきれない。
一緒に背負ってくれ。

全てを話し終えた後。

・セリス
「そんな事か。」

超意外な言葉を耳にしました。

・セリス
「別に死んでる訳じゃないだろ、お前の目の前に居る私は幽霊か?ほれ、ちゃんと触れるだろう?」

俺の手を自分の胸に当てるセリス。

・セリス
「疑似心臓だか何だか知らないが動いているんだろう?私の意志は私が決めているんだ、それで十分生きていると言える。違うか?」

言われてみれば確かに、、、。
元の世界の常識に囚われ過ぎなのかな?

・セリス
「全く、何に悩んでいるのかと思えばそんな事だったのか。本当に困った奴だ。」

優しく抱きしめてくれるセリス。
本当に、この子は、、、

・「優しいんだな、セリス。」

・セリス
「いつもの事だ。」

俺はいつもセリスに救われる。
この小さな体で俺を包んでくれる。

だから、、、助けたいんだ。

・「全てを明らかにして見せる。」

大きな決意を抱いた瞬間だった。

・「ミズキ、居るんだろ?」

皆が居ない訳がない。
ほらね、木の陰からみんな出てきた。

・ミズキ
「何でも言って下さい。」

・「黒龍を倒す前にやる事がある、俺の要求に応えられるようなダンジョンを教えて欲しい。」

セリスは自分の状態を受け止めた。
ならば急ぐ必要はない。
まずは十分な力を付けるんだ。

・「裁縫・採取が出来そうなダンジョンを教えてくれ。後は至急馬車が欲しい、各武器も必要となるから何処かで調達したい。」

やれる事をやるだけやってやる。
LV上げ中毒の俺を甘く見るなよ?
時間さえあれば何よりも強くなってやるさ。

・ミズキ
「お任せください!」

ミズキが目の前から消えた。
本当に頼りになる。

・マルチ
「立ち直ったみたいだね。」

・「心配させてごめんな。」

マルチの頭を撫でつつ謝る。

・リーシュ
「私達も話を聞いていい?」

ミズキが帰ってきたら全てを話そう。
俺はセリスを見る。
セリスは大きく頷いてくれた。

・「仲間って良いよね。」

思わず漏れた一言だった。


~次の日~

早朝の事だった。
やたらとガチャガチャするなと起きてみたら野営地に馬車が現れた、ミズキが馬車に乗って帰って来たのだ。

・ミズキ
「おはようございます。」

普通にあいさつをしてくれるミズキ、こんなにの早く要望に応えてくれるとは思わなかった。

・ミズキ
「ちょうど軍保有のダンジョンに向かう途中だったのでそこから馬車を拝借してまいりました。各種武器もパク、、、拝借してきましたのですべて揃っています。」

今パクってって言いそうにならなかった?

・ミズキ
「ダンジョンとしては『ワームの巣』が理想だと思います、ワームの出す粘液から糸を作成可能ですし洞窟内の植物から採取する事も出来るそうです。」

情報収集の達人って本当にすごいね。

・「ミズキは本当に凄いね。」

心底尊敬します。

・ミズキ
「では今夜は添い寝でお願いします。」

それだと俺へのご褒美になります。

・リーシュ
「冗談はさておき行先は決まったね。」

・ミズキ
「冗談じゃないのに、、、。」

リーシュの怖さは前回で身に染みているから下手な行動は取れない、裏のリーダーはリーシュだと言っても良いかもしれないな。

でもせっかく頑張ったのに何も無いのは可哀そうだ、なのでミズキにはご褒美を上げようと思います。

・「ミズキ、ミズキ。」

俺はこっそりと短刀を渡す。
投げても自動で戻ってくる機能を付けてみたミスリル製の短刀で、切れ味抜群な上に短いので扱いやすいく持ち運びにも便利な軽量仕様となっております。

・ミズキ
「とても軽い。」

・「投げても自動で戻ってくるよ、タイミングを確認しなくても勝手に鞘に収まるようにしたから戦闘中に投げまくれるでしょ?」

ミズキは試しに投げてみた。
そして両手を広げて目を瞑る。

ちょっと無防備過ぎない?
最初からそんなに信頼していいのかね?
怖くないの?

シュキン!

・ミズキ
「凄い、勝手に鞘に収まった。」

何故か俺の方がヒヤヒヤしたよ。

・ミズキ
「ありがとうございます。」

不意に頬にキスされた。
頑張って作った甲斐がありました!

その後3人に睨まれた事は言うまでもない。
ミズキは短刀を大事そうに抱えていた。

・セリス
「相変わらずポンポンと凄いもの作るな。」

・マルチ
「私も何かする、そして何か貰う。」

マルチのヤル気が上がっています。

・リーシュ
「ここから馬車だとダンジョン迄は5日と言った所でしょうか?でもどうして馬車を用意したの?走った方が早いのに。」

ふふふ、それはね。

・マルチ
「ライオットのレベル上げだね。」

マルチが先に答えた。
うん、当たりなんだけどよく解ったね?

・リーシュ
「ライオットは何でもスキルとして覚えるんだっけ?補正値が入るとか話してたよね。」

ダンジョンでのLV上げの時に雑談で教えてたっけ、ちゃんと覚えててくれたんだね。

・セリス
「操縦はライオットに任せて良いのか?」

・「そうして貰えると助かる、後は暇な時間があったらそれぞれの武器での戦闘を訓練したい。実戦形式で戦って貰えればこっちで勝手に工夫するからさ、お願いしても良いかな?」

少しでも強くなる為には戦うのが一番だ。
経験上それが一番手っ取り早いと感じた。
普通に経験値も入るしね。

・ミズキ
「お手柔らかにお願いします。」

こっちのセリフだと思います。

・セリス
「お前と戦うのか何か楽しそうだな。」

セリスの笑顔がちょっと怖い。

・リーシュ
「ちょっと怖い気もします。」

・マルチ
「ライオットに魔法を撃つなんて出来ない。」

そんなリーシュとマルチを何とか説得して模擬戦のお願いをする、まずは1対1の形からだからリーシュとマルチは後にして貰うか。

ダンジョンに向かいながら黒龍を倒すと決めた経緯をすべて話した、黒龍はランバートさんが抑えていた魔物で『いつか倒してくれ』とお願いしていた魔物だ。
女神さんの一部が封印されているとみて良いだろう、、、多分。だから黒龍を倒せば女神さんに逢える、、、多分。

推測が多い気もするが現状ではこれが一番有力。
だから黒龍を倒すんだ。

一行は『ワームの巣』に向かった。
黒龍を倒すだけの力を手に入れる為に。

黒龍を倒す為と意気揚々と始めた模擬戦だったが、仲間の予想以上の強さで毎日ボコボコにされるライオットだった。

・セリス
「ほらほら、どうしたそんなものか!」

一番楽しそうだったのはセリスだったという。
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