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第5話

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 私がルグドとの婚約を破棄すると決めてから、1週間が経っていた。

 昨日の夜にお父様から聞いたけど、婚約破棄の手続きは済んだらしい。
 魔法学園は昼休みになって――クラスでは、ルグドが教室で婚約破棄についてクラスメイトと話していた。

「アリザの成績が悪すぎるから、婚約を破棄することにした」

「あの程度の成績だと、ルグド殿下の婚約者に相応しくないですからね」

「ああ。それなのに父上に怒られてしまった……アリザは力を抑えていると言っているようだが、嘘に決まっている!」

 ルグドは国王に怒られたようだけど、私の成績が悪すぎたことを理由にしている。
 力を抑えているという発言を嘘だと考えたのは、別れることにした後でも私が力を抑えているからだ。

 成績は相変わらず平均より下で、ルグドは私の虚勢だったと思い込んでいる。
 普通に考えれば、入学前より成績が落ちている時点で不自然なのに――ルグドは、自分の都合がいいように考えてしまうようだ。

「婚約を破棄できて清々する! 俺の婚約者という立場でなくなったのだから、学園での評判は更に落ちるだろう!」

 ルグドは断言して、私は魔法学園で孤立したままだ。
 それでも公爵令息のカインが力になってくれて――ルグドが私に婚約破棄を言い渡したと、学園で噂になっている。
 今日もルグド自身が教室で言い広めているし、これなら本来の力を発揮して問題なさそうだ。
 
「魔力を抑える……ルグド殿下の話を聞いて試してみましたが、そもそも力を抑えて魔法を使うことが不可能です」

「ああ。アリザが本当に力を抑えているというのなら、見せて欲しいものだな」

 ルグドは取り巻きの発言に賛同しているけど、私はサーノラ伯爵家の令嬢だ。
 魔法使いとして優秀だから力を抑えることができるということを、ルグドは自分にできないことだから想像していない。

 教室で話を聞いて、私はルグドの前までやって来る。
 話を聞いて、ルグドには言っておきたいことがあった。

「アリザか……力を抑えていたことが嘘だと、この場で話したくなったのか?」

「いいえ。婚約破棄が正式に決まりましたし――私は、力を抑えることをやめます」

「なっっ!? そんなことができるのなら、午後からの授業で見せてみろ!」

「そのつもりです」

 動揺しているルグドに対して、私は断言する。
 準備も全て終わったから、もう力を抑える必要がなかった。

 私が魔法使いとして弱すぎるから、ルグドが別れたことになっている。
 今から私は力を抑えず魔法を扱うことで、ルグドを後悔させようと考えていた。
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