いらない婚約者は消えることにします

天宮有

文字の大きさ
1 / 11

第1話

しおりを挟む
 侯爵令嬢の私ルナ・リノーマは、開いているドアの横で立ち尽くしていた。

 リノ―マ侯爵家の屋敷で、家族に頼まれていた作業が予定より早く終わり私は戻っている。
 妹ヒリスの部屋を通ろうとした時、私の婚約者のモグルド王子とヒリスが楽しそうに話している声を聞いたからだ。

 ドアは少しだけ開いていて、偶然聞こえてしまう。
 聞こえてくる会話から浮気している推測できて、ヒリスは私の婚約者モグルドが好きなようだ。

 これから兄になる人だから、仲良くなろうとしていると思いたい。
 それでも発言を聞いているとモグルドもヒリスのことが好きとわかり、話の内容に驚くこととなる。

「いらない婚約者のルナには消えてもらおう」
「そうですね。モグルド様の計画ならお姉様が消えた後に私が婚約者になれて、リノ―マ家も繁栄しそうです」

 ヒリスと浮気をして新しく婚約者にするために、私を消すつもりでいる。
 再確認のためかモグルドが計画について話し出すけど……計画を聞いたことで、本当に私を消すつもりだと確信できた。

「俺が毒薬を飲んで苦しみ、ルナにはリノーマ家に伝わる龍人との契約をしてもらう」
「はい。数百年に一度の周期で選ばれた貴族は契約することで繁栄し、今回はリノーマ家の血を持つ女性を生贄とすると決まっていたようです」
「領主は姉妹のどちらを生贄にするか俺が決めていいと言ったからな。いらないのはルナだ!」

 龍人との契約――聞いたことがあるけど、お父様は娘を生贄にする気はないと話していた。

 今から数日限定で扱える魔法道具があるようで、魔界と呼ばれる遠くの大陸に住む龍人を呼び出して契約できる。
 リノーマ家の女性を生贄にすることで望みを叶えてくれるようだけど、私を生贄にするつもりのようだ。

「望みの内容は、モグルド様に膨大な魔力を与えるのが一番いいですね」
「毒を治すよりも打ち消す力を手に入れた方がいいと言えばルナは納得する。その後はヒリスと婚約することができそうだ」

 モグルドの計画を聞いた後――怪しまれないように、私は誰にも気づかれず屋敷から出ることにしていた。

 浮気をしているのか知られたくないからか、屋敷の人達を部屋に来させないようヒリスは言っていそう。
 誰とも会わずに屋敷を出た後、これからのことを考えて呟く。

「いらない婚約者。ですか……もし計画を知らなければ、本当に生贄になることを望んでいたでしょう」

 婚約者が毒で苦しみ、助かる手段としてタイミングよく龍人と生贄になれば治せる。
 問題があるとすれば私かヒリスが生贄となることで……私の婚約者だからと、生贄に立候補していたはずだ。

「話の内容的に、私が拒んでも家族が強引に生贄としそうですね――それなら、消えることにしましょう」

 屋敷から出て行ったとしても、王家と侯爵家が捜索して捕まると終わりだ。 
 最悪の事態を想像してしまい……私は、龍人の生贄になることを決意する。

「生贄になるというのは、龍人の妻になることと聞いています。モグルドの婚約者より悪くはないでしょう」

 今まで好きになろうとしていたけど、今日の話を聞いてモグルドのことは嫌いになっていた。

 勝手に毒薬を飲んだモグルドは、苦しめばいい。
 龍人との契約による叶えてくれる望みは生贄の人が決められるようで、後悔させることができるはず。
 私はいらない婚約者だから、これから消えることにしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

私は彼を愛しておりますので

月山 歩
恋愛
婚約者と行った夜会で、かつての幼馴染と再会する。彼は私を好きだと言うけれど、私は、婚約者と好き合っているつもりだ。でも、そんな二人の間に隙間が生まれてきて…。私達は愛を貫けるだろうか?

離れ離れの婚約者は、もう彼の元には戻らない

月山 歩
恋愛
婚約中のセシーリアは隣国より侵略され、婚約者と共に逃げるが、婚約者を逃すため、深い森の中で、離れ離れになる。一人になってしまったセシーリアは命の危機に直面して、自分の力で生きたいと強く思う。それを助けるのは、彼女を諦めきれない幼馴染の若き王で。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

あなたが幸せになるために

月山 歩
恋愛
幼い頃から共に育った二人は、互いに想い合いながらも、王子と平民という越えられない身分の壁に阻まれ、結ばれることは叶わない。 やがて王子の婚姻が目前に迫ると、オーレリアは決意する。 自分の存在が、最愛の人を不貞へと追い込む姿だけは、どうしても見たくなかったから。 彼女は最後に、二人きりで静かな食事の時間を過ごし、王子の前から姿を消した。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの? こちらは恋愛ファンタジーです。 貴族の設定など気になる方は、お避けください。

殿下、もう何もかも手遅れです

魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。 葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。 全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。 アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。 自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。 勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。 これはひとつの国の終わりの物語。 ★他のサイトにも掲載しております ★13000字程度でサクッとお読み頂けます

処理中です...