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第6話
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今日の授業を終えて、私とラドアお兄様は馬車に乗って屋敷に戻っていた。
昼休みにアイン様から聖女について話を聞き、馬車の中で対面していたお兄様が呟く。
「これから聖女になるローナの魔力だと、国のモンスターを弱らせることができず、更に人々の強化も弱まるとアイン様は仰っていた」
「はい……アイン様の推測通りなら、私が想像していた以上にこの国は大変な目に合いそうです」
来週の聖女を継承する式典を経て、平民ローナは聖女となる。
聖女の力は国土に干渉するようで、それによってローナの魔力は向上するはずだ。
問題は元のローナの魔力がそこまで強くないから、先代の聖女より魔力が弱まることにある。
アイン様が言うには、本来私が聖女に選ばれるはずで、ローナは万一の備えとして選ばれていたらしい。
「私に何か起きた場合の備えでしかない聖女候補……普通に魔法の成績が優秀だった私より、ローナを優先するのはこの世界にとっても予想外のはず」
聖女の力はこの世界の加護のようなもので、聖女の力は継承するか聖女が消失しなければ得ることができない。
範囲が決まっているから他国の聖女を持ってくることはできず、アイン様はこれから何が起こるのかを話してくれた。
この国は最悪滅びるかもしれず、私は不安になっていると……ラドアお兄様が話す。
「セリスは陛下やジェイクに言われて従っただけだ……間違いなく、ヴィーオ家は糾弾されるだろう」
今後どうなるのか私や家族は予想できていて、アイン様も同意見のようだった。
アイン様と話せてよかったと考えていると、お兄様が頭を下げる。
「今日の昼休み、駆けつけられなくて悪かった……アイン様がいてくれて助かったな」
「そうですね」
「アイン様は立場より実力主義なのだろう。あの場でセリスを助けてくれたほどだ」
そして相手が公爵家でも、アイン様は普通に意見していた。
魔力が高く優秀な魔法使いだからこそ、あそこまで堂々とできているに違いない。
そんなアイン様が味方になってくれることに、私は嬉しくなっていた。
「はい……お兄様とも意気投合していましたし、これからも力になってくれるようです」
「そうだな。アイン様なら信用できそうだ」
ヴィーオ公爵家を敵に回す可能性が高いけど、侯爵令息のアイン様が力になってくれた。
これならローナが聖女になる時まで安全そうだと考えて、一週間が経過する。
アイン様のお陰で問題は発生せず――平民のローナが、聖女になろうとしていた。
昼休みにアイン様から聖女について話を聞き、馬車の中で対面していたお兄様が呟く。
「これから聖女になるローナの魔力だと、国のモンスターを弱らせることができず、更に人々の強化も弱まるとアイン様は仰っていた」
「はい……アイン様の推測通りなら、私が想像していた以上にこの国は大変な目に合いそうです」
来週の聖女を継承する式典を経て、平民ローナは聖女となる。
聖女の力は国土に干渉するようで、それによってローナの魔力は向上するはずだ。
問題は元のローナの魔力がそこまで強くないから、先代の聖女より魔力が弱まることにある。
アイン様が言うには、本来私が聖女に選ばれるはずで、ローナは万一の備えとして選ばれていたらしい。
「私に何か起きた場合の備えでしかない聖女候補……普通に魔法の成績が優秀だった私より、ローナを優先するのはこの世界にとっても予想外のはず」
聖女の力はこの世界の加護のようなもので、聖女の力は継承するか聖女が消失しなければ得ることができない。
範囲が決まっているから他国の聖女を持ってくることはできず、アイン様はこれから何が起こるのかを話してくれた。
この国は最悪滅びるかもしれず、私は不安になっていると……ラドアお兄様が話す。
「セリスは陛下やジェイクに言われて従っただけだ……間違いなく、ヴィーオ家は糾弾されるだろう」
今後どうなるのか私や家族は予想できていて、アイン様も同意見のようだった。
アイン様と話せてよかったと考えていると、お兄様が頭を下げる。
「今日の昼休み、駆けつけられなくて悪かった……アイン様がいてくれて助かったな」
「そうですね」
「アイン様は立場より実力主義なのだろう。あの場でセリスを助けてくれたほどだ」
そして相手が公爵家でも、アイン様は普通に意見していた。
魔力が高く優秀な魔法使いだからこそ、あそこまで堂々とできているに違いない。
そんなアイン様が味方になってくれることに、私は嬉しくなっていた。
「はい……お兄様とも意気投合していましたし、これからも力になってくれるようです」
「そうだな。アイン様なら信用できそうだ」
ヴィーオ公爵家を敵に回す可能性が高いけど、侯爵令息のアイン様が力になってくれた。
これならローナが聖女になる時まで安全そうだと考えて、一週間が経過する。
アイン様のお陰で問題は発生せず――平民のローナが、聖女になろうとしていた。
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