婚約者を奪われたのでこれから幸せになります

天宮有

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第3話

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 デュラドがギレナを婚約者にしたと公表したのは最近だけど、私との婚約破棄は先月には手続きが済んでいた。

 婚約破棄の後、翌日から毎日グリンは私のいるラミロスト伯爵家の屋敷に来てくれる。
 そこから魔法を学ぶことで、徐々に成績はよくなっていた。

 先週は試験があり、今日は結果が発表される日だ。
 私の成績は、真ん中のギレーナよりも遥かに上となっている。
 それよりも私としては、グリンから魔法を教わり、その結果を出せたことの方が嬉しかった。

 デュラドの命令が無茶だっただけで、普通にやれば問題ないとグリンは言ってくれる。
 そして放課後になって――デュラドとギレナが、私の席に来て叫ぶ。

「マイアよ、お前は試験で不正をしたな!」
「急にあれほど成績が向上するなんて不可能です! 何をしたのか話しなさい!!」

 生徒達が帰る前に叫び、私達は注目されていた。
 魔法学園の生徒は貴族が多く、デュラドは婚約破棄の理由を広められて評判が落ちている。
 私が悪いと思わせることで、婚約破棄をして当然だと思わせたいのかもしれない。

 魔法学園は先生が優秀な魔法使いで、不正をすることは絶対にできない。
 そのことを話しても、私の発言に対してデュラドとギレナは納得することはなさそうだ。

 どうするか考えていた時――教室の扉が開く。
 2学年上のジロアお兄様とグリンがやって来て、デュラドが困惑していた。

「ジロアに、グリン……どうしてここに?」
「デュラドとギレナが騒ぐのは予想していたから、説明するために来た」
「教室の外でも聞こえていたぞ! マイアが不正をするわけがないだろう!」

 説明するグリンは冷静だけど、ジロアお兄様はデュラドを睨んで叫ぶ。

 グリンが手を伸ばすことで、デュラドに迫ろうとしたジロアお兄様を止めてくれる。
 この場では立場的に、ジロアお兄様より公爵令息のグリンが話した方がいいと説明することで納得したようだ。

 そしてグリンは、デュラドとギレナに話す。

「デュラド、お前が婚約破棄の手続きを終えた後、今まで俺はマイアに魔法を教えていた」
「そ、それがどうした!?」
「今回の試験でマイアが好成績だった理由だ。デュラドの教え方が下手で、私が上手かっただけさ」
「うっっ……」

 相手が公爵令息だからか、侯爵令息のデュラドが怯む。
 グリンの成績は魔法学園の主席で、話を聞いていた生徒達を納得させるだけの実力があるからだ。

 何も言えなくなっているデュラドに対して、グリンの話が続く。

「お前達はマイアが不正をしたと言ったが、証拠はあるのか?」
「そ、それは……今までの成績の悪さが、証拠のようなものだ!」
「この1ヶ月でマイアの成績は徐々に向上している。お前がそれを知ろうとしなかっただけだ」
「ぐぅぅっ!?」

 グリンの発言は正しくて、デュラドは言い返すことができない。
 不正をしたと言い私の評判を落とそうとしたけど、それが違うことでデュラドとギレナの評判が更に落ちそうだ。

「お前はマイアに合った魔法を調べようとせず、ジロアと同じ魔法を覚えさせればいいと安直に考えた。その結果、マイアは本来の実力が発揮できなかっただけだ」
「そんな……クソッッ!!」

 グリンが教室の生徒達に伝えるよう話して、デュラドは憤っている。
 全て事実なのは、試験の結果が証明していた。

 グリンが教室に来てくれたのは、友人のジロアお兄様が取り乱さないか見に来たのが一番の理由だと思う。
 それでも……グリンが、私のために怒ってくれて嬉しかった。
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