婚約者を奪われたのでこれから幸せになります

第９話

　私はグリンと一緒に、ラミロスト伯爵家の屋敷に戻っていた。

　放課後はいつもグリンが魔法を教えてくれるけど、今日は応接室で話をしている。
　話したいことがあると言われたけど、私は先にお礼を伝えた。

「グリン様が来てくれたから、デュラドは納得して教室から出て行きました。ありがとうございます」
「悪いのは全てデュラドだから、マイアは気にしなくていい……婚約者に戻りたいと言ったのは、ギレナを切り捨てたかったからだろう」

　グリンの発言を聞き、私は今までの出来事を思い返す。

　ギレナは魔法学園で処罰されて、数週間の停学になっている。
　生徒は貴族の人が多いから噂になり、婚約者のデュラドも評判を落としていた。

「ギレナの魔法による攻撃は、もしかしたら他の生徒に当たっていたかもしれませんからね」
「ああ。それもあるが……どうやらギレナは、まだ諦めていないようだ」
「えっ？」

　私としては、デュラドが後悔しているのはギレナが私に魔法で攻撃したからだと考えていた。

　それによって停学になった後、ギレナは私より上と思いたくなかったらしい。
　グリンは警戒して調べてくれたようで、１週間で何が起きたのかを話してくれる。

「停学になってから、ギレナは魔力を一瞬だけ急激に向上させる魔法道具を購入していた」
「魔力を向上させる魔法道具ですか」
「その魔法道具を使い、マイアに対して魔法による攻撃をするつもりなのだろう」

　それはグリンの推測だけど、可能性は高そうだ。

　処罰されてもギレナが私を魔法で倒そうと目論み、それを知ったデュラドは婚約者を変えようとしている。
　私との関係を元に戻せば、ギレナが暴走しても婚約者を守ったと評判を上げられると考えたのかもしれない。

「魔法道具で強化して攻撃ですか……そうなると、防げないかもしれません」

　成績は向上しているけど、数週間後にギレナは魔法道具で強化された攻撃を仕掛けるかもしれない。
　そうなると防ぐことができるかわからず不安になってしまうと、グリンが私に指輪を渡す。

「この魔法道具を渡しておこう。私の魔力を籠めているから、魔法の攻撃を防ぐことができる」
「わかりました。ありがとうございます」

　グリンはギレナを調査していて、魔法道具を用意してくれる。
　指輪を貰えたことも嬉しくて――これなら、ギレナが何をしても問題なさそうだ。