私が張っている結界など存在しないと言われたから、消えることにしました

天宮有

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第6話

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 私は冒険者になって、この国の末路を確認したくなっている。

 生きるために働く必要があるから……正体がバレた時に備えて、他国にすぐ行ける冒険者がよさそうだと考えてはいた。

 私は冒険者になることを話すと、目の前のラーサーは困惑しながら尋ねる。

「……あの、エルノア様は、今から冒険者になるのですか?」

 何かおかしかったのかもしれないけど、ラーサーから聞けそうだ。

「私が冒険者になるのは、難しいでしょうか?」

「いいえ、冒険者登録は誰でもできます。貴族の方でも問題ありません」

 冒険者は貴族が登録しても問題ないけど、立場は対等になるようだ。

 依頼を選ぶ為のランクは存在しているようだけど、ランクが上だからといって上下関係はあまりないらしい。

 ラーサーは私が貴族なのではないかと考えているようだから、先に違うと伝えておこう。
 
「……私は元貴族ですが、色々あって家を追い出され冒険者になろうと思っています」

 勘当になった理由は結界が絡んでいるから隠しつつ、私はラーサーに話す。

 出会ったばかりの人に、元貴族と話していいのだろうかとも思ってしまう。
 それでも……どうやら私は、数日間誰とも話せず寂しかったようだ。

 ラーサーは生活の為に冒険者として生きるようだけど、今の状況で1人依頼を受けるのはかなり危険だと思う。
 エリオース国から出るのが一番安全だと思うけど、話を聞く限り国外に出ることも危険そうだ。

 私が貴族と違うと知り、ラーサーは納得した様子で話す。

「そうでしたか……エルノア様の強さなら、間違いなく上位冒険者になれます」

 さっきの戦いを見て、私は冒険者でも上位になると確信しているようだ。 
 あの時、ラーサーは絶体絶命だったけど……モンスターの群れを相手に逃げようと動けて、更に魔法道具で助けを求めている。

 実力はまだ低くてもラーサーは行動力があり、私を信頼してくれそうだから……私が魔法で強化すれば、間違いなく戦力になってくれる。
 
 そう考えた私は、ラーサーに提案していた。

「……もしよろしければ、ラーサーと行動を共にしてもよろしいでしょうか?」

 ラーサーは私を命の恩人と言って、知っていることを全て教えてくれた。 

 出会ったばかりだけど、私もラーサーの力になりたいと思うようになっている。
 一緒に行動したいと話すと、目を輝かせながらラーサーは頷く。

「はい。私は非力ですが、エルノア様の力になってみせます!」

 こうして私は冒険者登録をして、ラーサーと一緒に行動することとなる。

 その間にも――エリオース国は、破滅の道を辿ろうとしていた。
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