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第8話
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第二王子ドスラ視点
俺はここ数日間のモンスターによる被害の報告書を眺め、困惑するしかない。
「これは恐らくまだはじまりに過ぎず……酷くなっていくのは、これからだ」
モンスターによる街の被害を止めようにも、今までが平和過ぎたこともあって厳しそうだ。
悩んでいると扉をノックする音が響き――婚約者のフィオナが入ってきた。
フィオナ……彼女は公爵令嬢で、長い黒髪が美しい女性だ。
魔法使いとしても優秀で、十代では彼女を超える者は存在しないと言われている。
エルノアと婚約破棄して、彼女を婚約者したのは間違いではない。
心配してくれたようで、フィオナが俺に尋ねる。
「ドスラ様……何か、お悩みになっているようですね」
「フィオナ。ここ最近の被害をみるに、結界は実在していたのかもしれない」
現状を話しながら、俺はエルノアを婚約破棄した理由を思い返す。
――俺は子爵令嬢のエルノアよりも、公爵令嬢のフィオナと婚約したかった。
魔法の腕は十代なのに世界最高峰で、魔法協会に入れば最高位は間違いないとされている。
全てがエルノアを上回り、婚約者にするために婚約破棄するのが一番だった。
結界が実在していたかもしれないと話すと、フィオナは頷く。
「確かに、ここまでの報告があるのなら結界は実在するのかもしれません……私は実在しない可能性があると言っただけで、調査すべきとは言っていません」
「わかっている。フィオナの話が気になって父上に進言した結果だ……フィオナは何も悪くない」
そして、結界など存在しないと話した理由についても、思い返してしまう。
――俺はフィオナのことが好きで、婚約者のエルノアとはあまり関わらなかった。
まだエルノアと婚約破棄をしていない時も、俺はフィオナの元によく向かっていた。
好いてくれるフィオナの傍で話をしていた時、結界の話になったことがある。
――結界は実在していないのかもしれません。
フィオナがそんな、ただの雑談の話題を口にしたことで、俺は閃いてしまう。
これを理由にすれば、結界が存在せずエルノアがただ無能なだけなら――フィオナを婚約者にできる。
父上や兄上を納得させて、俺は結界の調査をするよう進言していた。
王家はフィオナの力を求めていたから、俺が婚約者になった方がいいと話し家族は納得している。
結果――兄上の調査隊が結界がないと報告を行い、俺はエルノアと婚約破棄に成功していた。
その後一週間でこの様になってしまうが……フィオナを婚約者にできたから、まだ最悪の事態ではない。
それでも焦ってしまう中、フィオナは冷静に話す。
「ドスラ様は何も心配することはありません……王都が平和なら、何も問題はないのですから」
話を聞くとフィオナは何か打つ手があるようで、俺は婚約者を頼ることに決める。
それが破滅の道をたどることになることを、この時の俺は考えていなかった。
俺はここ数日間のモンスターによる被害の報告書を眺め、困惑するしかない。
「これは恐らくまだはじまりに過ぎず……酷くなっていくのは、これからだ」
モンスターによる街の被害を止めようにも、今までが平和過ぎたこともあって厳しそうだ。
悩んでいると扉をノックする音が響き――婚約者のフィオナが入ってきた。
フィオナ……彼女は公爵令嬢で、長い黒髪が美しい女性だ。
魔法使いとしても優秀で、十代では彼女を超える者は存在しないと言われている。
エルノアと婚約破棄して、彼女を婚約者したのは間違いではない。
心配してくれたようで、フィオナが俺に尋ねる。
「ドスラ様……何か、お悩みになっているようですね」
「フィオナ。ここ最近の被害をみるに、結界は実在していたのかもしれない」
現状を話しながら、俺はエルノアを婚約破棄した理由を思い返す。
――俺は子爵令嬢のエルノアよりも、公爵令嬢のフィオナと婚約したかった。
魔法の腕は十代なのに世界最高峰で、魔法協会に入れば最高位は間違いないとされている。
全てがエルノアを上回り、婚約者にするために婚約破棄するのが一番だった。
結界が実在していたかもしれないと話すと、フィオナは頷く。
「確かに、ここまでの報告があるのなら結界は実在するのかもしれません……私は実在しない可能性があると言っただけで、調査すべきとは言っていません」
「わかっている。フィオナの話が気になって父上に進言した結果だ……フィオナは何も悪くない」
そして、結界など存在しないと話した理由についても、思い返してしまう。
――俺はフィオナのことが好きで、婚約者のエルノアとはあまり関わらなかった。
まだエルノアと婚約破棄をしていない時も、俺はフィオナの元によく向かっていた。
好いてくれるフィオナの傍で話をしていた時、結界の話になったことがある。
――結界は実在していないのかもしれません。
フィオナがそんな、ただの雑談の話題を口にしたことで、俺は閃いてしまう。
これを理由にすれば、結界が存在せずエルノアがただ無能なだけなら――フィオナを婚約者にできる。
父上や兄上を納得させて、俺は結界の調査をするよう進言していた。
王家はフィオナの力を求めていたから、俺が婚約者になった方がいいと話し家族は納得している。
結果――兄上の調査隊が結界がないと報告を行い、俺はエルノアと婚約破棄に成功していた。
その後一週間でこの様になってしまうが……フィオナを婚約者にできたから、まだ最悪の事態ではない。
それでも焦ってしまう中、フィオナは冷静に話す。
「ドスラ様は何も心配することはありません……王都が平和なら、何も問題はないのですから」
話を聞くとフィオナは何か打つ手があるようで、俺は婚約者を頼ることに決める。
それが破滅の道をたどることになることを、この時の俺は考えていなかった。
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