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第2話
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翌日――私は魔法学園に登校すると、教室で注目されてしまう。
ザノーク王子の悪評は有名だから同情している人もいるけど、敵視している人の方が多い。
王子と公爵令息を敵に回した時点で、侯爵令嬢の私が不正をしたのは間違いないと考えていそう。
不正をしていないのだから場面なんて誰も見ていないのに、かなりの人がルドノの取り巻きによる嘘の証言を信じているようだ。
そして――教室に現れたルドノとザノークは、席につかず私の元までやって来る。
「昨日床に倒れていたカルラ様は無様でしたね。ザノーク殿下を騙していたのですから、当然の報いでしょう」
「ルドノの言う通りだな! 魔法で防いできた辺り、カルラに罪の意識はないようにみえる。不愉快な奴だ!!」
ザノークは激高しながら暴言を吐き、ルドノは嘲笑した顔を私に向けてきた。
ルドノはザノークの理解者を装い、王子の権力を利用している。
本人はそれで構わないと思っているのか、自覚していないのかはわからないけど……ザノーク王子は、まるでルドノの操り人形だ。
そんなことを考えてしまうと――教室に来た先生が挨拶をして、私を眺めて話す。
「これから広場に移動して魔法を使用しますけど……その前に、カルラ様の杖を確認いたします」
「どういうことですか?」
先生の発言が理解できず、私が尋ねる。
そんな私を見て、ザノークが叫んだ。
「貴様は不正をしている疑いがかかっているのだから、調べるのは当然だろう!」
「不正はしていません」
「それなら、先生に杖を提出できるはずです……どうしましたか?」
ルドノが愉しそうに尋ねているのは、私が持つ杖の価値を知っているからだ。
この杖はシレッサ侯爵家に代々伝わる杖で、失うわけにはいかない。
入学する際に問題ないと確認してもらっているけど、今回はルドノが何か企んでいそう。
「……わかり、ました」
それでも疑われている現状から――私は、先生に杖を提出するしかなかった。
■◇■◇■◇■◇■
その後、私達は教室から魔法を扱う広場に移り――数十分後、杖が私の元に返ってくる。
「私が魔法で調べたら異常はありませんでしたけど、カルラ様はこれから魔法を扱いますよね?」
「はい。それがどうかしましたか?」
杖が戻って来たことに安堵しながら、私は先生に尋ねる。
「今回は念入りに調査しましたけど、禁止されている杖なら判明しない代物もあります。その場合は何かしら異常が起きるかもしれません」
禁止されている杖――他者の魔力や魔法を取り込む杖は、使用を禁止されている。
魔法道具の一種みたいで、鑑定魔法で調査されても問題ないように改造することができるらしい。
その場合は鑑定魔法では影響がないけど、魔法を使うと異常が起こるかもしれないようだ。
「私の杖は代々シレッサ家に伝わる物です。何も問題ありません」
杖による魔力向上は、薬と違い認められている。
私が断言した時に、先生が笑みを浮かべたのが気になってしまう。
そして――私は魔法を使う際に魔力を流したことで、杖が別物に変わっていることに気づいた。
どうやらルドノは先生も味方につけていたようで、鑑定すると預かってからすり替えたようだ。
私が持っていた杖が破裂して――破裂した音が大きくて、広場がざわめく。
思わずルドノに目をやると、ザノークと一緒に遠くで私を楽しそうに眺めていた。
距離をとっている辺り、2人は杖が破裂するのがわかっていたような気がする。
「――カルラ様! これはどういうことですか!?」
そして先生は、生徒の危機なのに笑顔で私の元までやって来た。
これはルドノが仕組んだ嫌がらせで――私の評判は、更に落ちることとなる。
ザノーク王子の悪評は有名だから同情している人もいるけど、敵視している人の方が多い。
王子と公爵令息を敵に回した時点で、侯爵令嬢の私が不正をしたのは間違いないと考えていそう。
不正をしていないのだから場面なんて誰も見ていないのに、かなりの人がルドノの取り巻きによる嘘の証言を信じているようだ。
そして――教室に現れたルドノとザノークは、席につかず私の元までやって来る。
「昨日床に倒れていたカルラ様は無様でしたね。ザノーク殿下を騙していたのですから、当然の報いでしょう」
「ルドノの言う通りだな! 魔法で防いできた辺り、カルラに罪の意識はないようにみえる。不愉快な奴だ!!」
ザノークは激高しながら暴言を吐き、ルドノは嘲笑した顔を私に向けてきた。
ルドノはザノークの理解者を装い、王子の権力を利用している。
本人はそれで構わないと思っているのか、自覚していないのかはわからないけど……ザノーク王子は、まるでルドノの操り人形だ。
そんなことを考えてしまうと――教室に来た先生が挨拶をして、私を眺めて話す。
「これから広場に移動して魔法を使用しますけど……その前に、カルラ様の杖を確認いたします」
「どういうことですか?」
先生の発言が理解できず、私が尋ねる。
そんな私を見て、ザノークが叫んだ。
「貴様は不正をしている疑いがかかっているのだから、調べるのは当然だろう!」
「不正はしていません」
「それなら、先生に杖を提出できるはずです……どうしましたか?」
ルドノが愉しそうに尋ねているのは、私が持つ杖の価値を知っているからだ。
この杖はシレッサ侯爵家に代々伝わる杖で、失うわけにはいかない。
入学する際に問題ないと確認してもらっているけど、今回はルドノが何か企んでいそう。
「……わかり、ました」
それでも疑われている現状から――私は、先生に杖を提出するしかなかった。
■◇■◇■◇■◇■
その後、私達は教室から魔法を扱う広場に移り――数十分後、杖が私の元に返ってくる。
「私が魔法で調べたら異常はありませんでしたけど、カルラ様はこれから魔法を扱いますよね?」
「はい。それがどうかしましたか?」
杖が戻って来たことに安堵しながら、私は先生に尋ねる。
「今回は念入りに調査しましたけど、禁止されている杖なら判明しない代物もあります。その場合は何かしら異常が起きるかもしれません」
禁止されている杖――他者の魔力や魔法を取り込む杖は、使用を禁止されている。
魔法道具の一種みたいで、鑑定魔法で調査されても問題ないように改造することができるらしい。
その場合は鑑定魔法では影響がないけど、魔法を使うと異常が起こるかもしれないようだ。
「私の杖は代々シレッサ家に伝わる物です。何も問題ありません」
杖による魔力向上は、薬と違い認められている。
私が断言した時に、先生が笑みを浮かべたのが気になってしまう。
そして――私は魔法を使う際に魔力を流したことで、杖が別物に変わっていることに気づいた。
どうやらルドノは先生も味方につけていたようで、鑑定すると預かってからすり替えたようだ。
私が持っていた杖が破裂して――破裂した音が大きくて、広場がざわめく。
思わずルドノに目をやると、ザノークと一緒に遠くで私を楽しそうに眺めていた。
距離をとっている辺り、2人は杖が破裂するのがわかっていたような気がする。
「――カルラ様! これはどういうことですか!?」
そして先生は、生徒の危機なのに笑顔で私の元までやって来た。
これはルドノが仕組んだ嫌がらせで――私の評判は、更に落ちることとなる。
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