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第23話

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 私は目の前の、部屋で起きた光景に驚くしかない。

 捨て身で全力の魔法による攻撃を使ったけど、防がれてしまった。
 ラウドの協力を借りて優秀な魔法使いを待機させていたようで、失敗したことを悔やんでいた時だ。

 私を捕らえようとした人達が倒れて――呪いで弱っているはずのサダムが、扉の前に立っている。

 クノレラの強力な呪いで弱っているけど、魔眼の力を持つサダムは十分強かったようだ。

「そんな!? 私の家に伝わる呪いの力は強力で、更に私が命がけで力を強めたのに……どうしてサダムは動けているのよ!?」

「普通なら動けないが……俺は、普通ではなかっただけだ」

 そう言っているサダムは明らかに苦しそうで、倒れそうになったから私が支える。

「サダム様、大丈夫ですか!」

「ああ……もしかしたらキャシーが動くかもしれないと考えてしまい、クノレラは俺が対処するべきだと考えた」

「そうだったのですか」

「動くとしたら今日だと考え、待機していて正解だった……間に合ってよかった」

 私はサダムの為に動いて――サダムも、私の為に動いてくれた。

 今のサダムは相当苦しいはずなのに、傍にいてくれる。
 それがとてつもなく嬉しくて――この場で立っているのは私とサダム、クノレラとラウドだけだった。
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