聖女姉妹の姉は、妹に婚約者を奪われました

第２話

　その後、ルグド王子は屋敷から去って――私は、部屋で１人になって思案する。

　本来なら数日後、妹シアノはカインの屋敷で暮らす予定だった。
　今日の出来事によって、カインの新しい婚約者になる私が行くこととなっている。

　それは問題ないけど、私は推測して呟く。

「シアノはカイン様の屋敷で暮らしたくないから、私からルグド王子を奪いたかった」

　カインはシアノの婚約者で、会ったことはないけど話を聞いてどんな人なのかは知っている。
　ロガムラ侯爵家の次期領主なのに、魔力が優れているから魔物と戦う人のようだ。
　
「ロガムラ領は魔物が多いと聞いているので、シアノは行きたくなかったのでしょう」

　思わず呟いてしまうと――部屋の扉が開いて、妹シアノが現れる。
　話したいことがあったようで、シアノは私を眺めて笑顔を浮かべた。

「その通りですわ……これからお姉様は、野蛮なカイン様が婚約者となるのです」

「魔物が多い場所で人々のために戦いたいと思い行動する。カイン様は素晴らしい方ではありませんか」

「お姉様は何を言っているの？　カイン様は、貴族なのに魔物と戦う変人よ！」
　
　シアノは唖然として叫ぶけど、私は変だと思わない。
　今までカインの話を聞いて――妹の自慢話だと考えていたけど、どうやら愚痴だったようだ。

「シアノが話したいことというのは、カイン様のことですか？」

「それはもう、どうでもいいです。私は今まで、ルグド殿下を説得していました！」

　私の発言を聞いて、シアノはカインの話をしたくなくなったようだ。

　恐怖させようとしたのかもしれないけど、私は臆病なシアノとは違う。
　そして――シアノが、今日起きた出来事の真相を話す。

「私より劣っているお姉様が、姉という理由でルグド殿下の婚約者になったのが許せなかった……私の目論見通り、ルグド王子を奪うことに成功したわ！」

　シアノとルグド王子の仲がよかったことは知っていたけど、私は呆れてしまう。
　ルグド王子の外面だけを見て、内面を知らないのならこれから間違いなくシアノは後悔するはずだ。

「シアノは、ルグド殿下の何を知っているの？」

「お姉様よりも知っています！　私より劣っているお姉様は、もうサーノラ家に必要ないのです！」

　もし私よりルグド王子のことをシアノが知っていたら、婚約者にしたいだなんて思えない。

　ルグド王子は自己中心的で暴言をよく吐き、婚約者を道具としか思っていない人だ。
　関わりたくないから避けるようになってしまい、その間にシアノはルグド王子と仲良くなっていそうな気がする。

　そんなことよりも、私はシアノの発言を否定したかった。

「シアノ――貴方は私より優れていると考えているけど、実際は違います」

「お姉様はまだそんなことを言っているのですか！　それはルグド殿下が否定しています！」

　妹シアノは私のことを見下していて、何を言っても信じようとしない。
　これから間違いなく、シアノは自分の行動を後悔するけど――それは、シアノが決めたことだ。