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第4話

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 私は部屋で、リックから話を聞いていた。

 シレッサ子爵領を調べてくれたようだけど、私のお父様が関わるなと言っている。
 調べただけで、これから何が起きてもアーバス侯爵家は関与しないようだ。

「領主の判断だから、何も言わないつもりだが……カルラは、それでいいのだろうか?」

「はい。シレッサ家がどうなっても、私は構わないと思っています」

 心配して尋ねるリックに、私は本心を話す。
 婚約者ザノークは私が非常識と蔑視して、家族は私と縁を切りたいと言っていた。
 そんな人達がどうなったとしても、私は構わない。

「わかった。それでも魔力による災害は気になるから、すぐ把握できるようにはしておこう」

「はい。私としても、シレッサ家の末路は知っておきたいと考えています」

 勘当されてはいないから、お父様が私達に助けを求めてくるかもしれない。
 その場合は謝罪があるかどうか、そして状況をみて判断しよう。
 助けを求めるのが遅すぎて手遅れなら、自業自得で助けないつもりだ。

「シレッサ子爵家については、カルラの判断に任せよう」

 これからについて話すと、リックは納得してくれる。
 私は、更に言っておきたいことがあった。

「ありがとうございます……あの、リック様に提案したいことがあります」

「なんだ? なんでも話して欲しい」

 リックは負い目があるようで、私の提案があれば聞くと言っている。
 逃げ出した婚約者の人達は、上の立場のリックに意見できなかったようだ。
 私は気にしないから、普通に提案した。

「これから私も、アーバス侯爵領のために行動したいと考えています」

「なっっ――そこまでしてくれるのか?」

 私の発言に、リックは驚いている。
 今までの婚約者の人達と私は、違い過ぎるのかもしれない。

「はい。その方が、リック様としてもいいのではないでしょうか」

「確かにそうだ。レアスも同行するし、より安全となるだろう!」

 私の提案を聞いて、リックは喜んでくれている。
 その姿を見て――頼られていることが、私としても嬉しかった。

■◇■◇■◇■◇■

 食事を終えて、私は部屋で1人になっている。
 普段は誰かが傍にいるけど、休む時は配慮があった。
 今日の出来事を思い返して、私は呟く。

「思っていたよりも、束縛されているという感じはしません」

 リックかレアスのどちらかがほとんど傍にいるけど、それは私を想ってのことだ。
 話し相手になってくれるし、私としては嬉しくもある。

「……やはり私は、普通ではないのでしょうか?」

 それでもリックが気にしないのなら、構わないと思うようになっている。
 他の人と違うからか、私は今の生活が幸せだった。
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