婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有

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第5話

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リック視点

 屋敷に戻った俺は、カルラと話し合い今後の行動を決める。
 夜になって――カルラは隣の部屋で、眠りについているはずだ。

 俺は部屋にレアスを呼び、屋敷にいなかった3日間の出来事を再び聞く。
 カルラがいる時には聞けなかったことがあり、俺はレアスに尋ねる。

「カルラはここに来てよかったと言ってくれたが……本当なのか?」

「本当です。何度かリック様の話をカルラ様にしましたけど、恐怖や嫌悪の反応が一切ありませんでした」

 レアスは元冒険者で、人と関わる機会が多かった。
 それによって他者の状態を把握できるようで、話を聞き俺は安堵する。

「それはよかった。カルラについては事前に知っていたはずだが、この状況をここまで受け入れてくれるとは思わなかった」

 俺は束縛令息と呼ばれているが、仕方ないと思っている。
 とにかく守りたいと考えて行動してしまう結果で、婚約者から不満を聞いて修正しようとしていた。
 それでも……今までは立場の違いからか、婚約者はすぐ屋敷から去ってしまう。
 そしてライラは、俺が言ったルールを全て受け入れていた。

「異常なリック様に付き合える人がいるとは、私としても驚きましたよ」

「これでも俺はお前の主なんだが……まあいい、他には何か言っていなかったか?」

「そうですね。カルラ様がリック様について話していましたけど、言わないでおきましょう」

「言わないでおきましょうじゃないだろう、言え」

 俺はレアスの発言が理解できず、主として命令する。
 何故か呆れた様子で俺を見て、レアスが話した。

「わかりました――カルラ様は、リック様のことが知りたいようです」

「……なに?」

「傍にいてくれるけど何も知らないから、婚約者としてこれから知りたいと言っていましたよ」

「そ、そうか……俺も、同じ考えだ」

 カルラの気持ちを知り、俺は動揺してしまう。
 傍にいてくれるだけでいいと考えていたが、カルラは婚約者だ。
 婚約者として――カルラと一緒なら嬉しいと考えながら、俺はレアスに聞く。

「俺について知りたいと言われて、レアスは何と答えたんだ?」

「私が話した情報が違っていたら怒られそうだから、リック様本人に聞いて欲しいと言いました」

「そうか」

「あと、返答を聞いたカルラ様は「これから私が聞いていくから、リック様について知ろうとしたことは黙っていて欲しい」と、私に頼んでいます」

「はぁっ!? 今聞いてしまったじゃないか!?」

「主が命令しましたからね」

 そう言うが、普通なら言えない理由を先に話すはずだ。
 レアスは隠しごとがバレて俺に不信感を持たれるより、命令を聞き言うしかない状況にしている。
 
「そ、それなら……レアスは俺が聞いて知ってしまったことを、カルラには話すな!」

「はい。主の命令ですから、聞くしかありません」

 レアスはそう言うが、聞きたくない命令なら拒むことは知っている。
 話を聞いて――これから俺は、カルラと一緒に行動したいと想うようになっていた。
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