婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています

天宮有

文字の大きさ
3 / 38

第3話

 私はカインから、聖女の儀式の説明と聖女の仕事について聞いている。
 まだルグドの婚約者のままだから、カインは聖女の儀式までは極力会わないように気遣うようだ。
 私が聖女に決まってからルグドに説明して、カインが護衛になることを話すらしい。

 話を終えた翌日――私は魔法学園で、ルグドとシェムによる嫌がらせを受けていた。

「最近のアイラは、聖女候補という立場を得て増長しているようだな」

「はい。下級生に暴言を吐く姿を目撃しています。婚約者のルグド殿下、同じ聖女候補である私の評判が落ちることは止めてください!」

 授業が終わった放課後、クラスメイトが教室を出る前にそんなことを言われてしまう。
 ルグドとシェムが私の前に立って、机越しに話しかけてくる。
 クラスメイトは注目しているようで、それがルグド達の狙いだった。

 私は増長してないし、むしろ増長しているのはシェムの方だ。
 ルグドの態度が明らかに変わり、何をしても私が悪いと思わせようとしている。

「私は、下級生に暴言を吐いていません」

「もう生徒達の間では噂になっている。婚約者として嘆かわしい、アイラが聖女になることはないだろう!」

「アイラ様はルグド殿下の婚約者に相応しくありません……第一王子のルグド殿下の婚約者は、これから聖女になる人が相応しいでしょう」

 そう言ってシェムは、自分がルグドに相応しいとアピールしていた。
 もう1人の聖女候補は冒険者でルグドと年が10年以上離れているし、まず聖女に興味がないようだ。
 シェムは国王が聖女を選ぶと思い込んでいるからこそ、ルグドの婚約者になりたいと考えていそう。

 ルグドは私が聖女になることはないと断言したけど、私は聖女になるらしい。
 実際に儀式を終えないと判明しないことだから、私が何か話す気はない。

「アイラがどれだけ否定しようと、言い逃れることはできんぞ!」

「私と実力の差があったとしても、アイラ様は卑屈にならず狡い手を使わないようお願いします」

 狡い手を使っているのはシェムの方だけど、それは後で後悔するからどうでもいい。
 周囲でクラスメイトの冷たい視線を受けて――私は、現状が嫌になっている。
 数ヶ月ぐらい我慢しようと思えばできるけど、早急に対処しておきたい。

 頼れるのは、私が聖女になると知っているカインだけだ。
 婚約者を気遣って会わないように考えているけど、私がカインの屋敷に行けばいい。
 これからのことを考えていると、ルグドが話す。

「聖女候補の1人は冒険者で聖女になっても辞退する気でいる。聖女はアイラかシェムのどちらかだろう」

「私とアイラ様では魔法の成績の差があります。どちらが聖女になるかは明白でしょう!」

 シェムが私を蔑むように眺めて話すけど、これは成績の差で自信があるからだ。
 恐らく私に脅されたと報告したり噂を流している下級生は、今後聖女の恩恵を得られると考えて動いていそう。
 言われっぱなしは嫌だから、私はシェムを揺さぶることにした。

「成績ですか――数週間前まで、シェム様は私より成績が劣っていましたよね?」

「はぁっ!? 昔のことを持ち出さないでください! 現状では私と貴方には明確な差があります!!」

「急激に魔力が増加すると、魔力の核となる器官が壊れる可能性があります。看てもらった方がいいのではないですか?」

 私は心配しながら訪ねるけど、これはシェムも理解していそう。
 シェムは聖女になれば、ボロボロになった体内にある魔力の核が治ると考えて行動している。
 それは国王が聖女を選ぶと思い込んでいるからで、真実は知られたくないはずだ。

 私が心配しているフリをして忠告すると、シェムは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「余計なお世話です! アイラ様こそ増長するのを止めた方がいいですよ!」

 明らかにシェムは激高していて、私に対する嫌がらせを強めそうな気がする。
 とにかく私は、今日の出来事をカインに話そう。

あなたにおすすめの小説

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました

恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。 メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~

腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。 誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。 一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。 傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

【完結済み】私達はあなたを決して許しません

asami
恋愛
婚約破棄された令嬢たちがそれぞれに彼女らなりの復讐していくオムニバスストーリーです