婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています

天宮有

文字の大きさ
5 / 38

第5話

 数日が経って、私の屋敷にカインがやって来る。
 明日はパーティがあるけど、私は今まで魔法学園を休んでいた。

 そして今日、カインは報告したいことがあるようだ。
 屋敷の応接室にカインが来てくれて、もう1人同行している青年が見える。
 カインの隣にいる赤髪の青年、彼が冒険者のケビンらしい。

 どうやら明日のパーティで、私に動いて欲しいようだ。
 ケビンは私を眺めて、数日間の出来事を話してくれる。

「全てカインから聞き、依頼も終えている――明日のパーティで、アイラ様は婚約破棄を宣言すればいい」

 そう言って、ケビンはテーブルの上に様々な魔法道具を置いていく。
 私は魔法学園を休んでいたけど、数日間の間で学園内に変化があったようだ。

「これから魔法学園で、アイラ様の悪評が流れることはないはずだ」

「えっと……何をしたのですか?」

 私は数日間で、ケビンが何をしたのか聞いていない。
 気になったから尋ねると、ケビンは魔法学園での行動を話してくれた。

「俺が魔法学園の先生に変装して真実か追及したり、嘘の噂を流すことで追い詰めたりした」

「そうですか……」

 今の学園内では私の噂よりも酷い噂が多く、私の悪評が流れるどころではないらしい。
 ケビンは様々な手を使い、私に罪を捏造させた生徒達を追い詰めたようだ。

 聖女候補を貶めようとしたことは、追及する理由になり得る。
 それでも本当のことを言わない生徒がいて、その生徒には同じ目に合わせた。
 ケビンは簡単そうに話しているけど、数日間の行動とは思えない。
 私が唖然としていると、カインが話してくれる。

「嘘の噂でアイラ様を貶めようとしたのですから、当然の報いでしょう。ケビンからすれば優しいほどですよ」

「そ、そうなんですか……」

 私がカインから話を聞いて動揺していると、ケビンが話を続ける。

「自白させた証言もあるし、ルグド殿下とシェムが貶める計画を話し合っているのも録音できた。記録した映像もある」

 そう言って魔法道具の説明をするけど、私は依頼という部分が気になる。
 どれだけの報酬なのか不安になってしまうと、カインは笑顔を浮かべて話す。

「依頼の報酬は私が支払うので、アイラ様は何も気にすることはありません。悪いのは全てルグド殿下とシェムです」

「はい。ありがとうございます」

 これだけの証拠があれば、明日のパーティは問題ない。
 ルグドは私を原因に婚約破棄をしようとしたけど、そのために私を貶めようとした。
 それなら――その行動を理由に、私の方から婚約を破棄することができそうだ。

「婚約破棄は、ルグド殿下とシェム様にとっては理想の状況。拒ことはないはずです」

 パーティ会場でどんな目にあっても、聖女の儀式で挽回できると考える。
 カインとケビンはそう予想しているから、婚約破棄を阻止されることはないはずだ。

「そして聖女の儀式で――ルグド殿下とシェム様は、全てを後悔するのでしょう」

 今までの行動は全て、シェムが聖女になれば問題ないと考えての行動だ。
 私が聖女に決まると全てが瓦解して、ルグドとシェムはどうなるのかわからない。
 わからないけど――婚約者でなくなる私としては、ルグド達がどうなっても構わなかった。

あなたにおすすめの小説

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました

恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。 メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~

腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。 誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。 一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。 傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

【完結済み】私達はあなたを決して許しません

asami
恋愛
婚約破棄された令嬢たちがそれぞれに彼女らなりの復讐していくオムニバスストーリーです