婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています

天宮有

文字の大きさ
8 / 38

第8話

しおりを挟む
 私は部屋で1人になって、今日の出来事を思い返す。
 明日は魔法学園が休日で、私はパーティに行き行動を起こす。
 全てカインとケビンが準備してくれたから、大丈夫のはずだ。

「カイン様もパーティ会場にいてくれますし、何も問題ありません」

 これからの予定を考えながら、私は呟く。
 私の行動は、ルグドとシェムの浮気をパーティ会場で公表することだ。
 証拠もある以上、ルグドに原因がある状態で婚約を破棄することができるはず。
 
「ルグドは私との婚約破棄を望んでいますし、受け入れてくれるでしょう」

 明らかに悪いのはルグドだと、パーティの人達は知ることとなる。
 王家はサーノラ家に慰謝料を支払うこととなるけど、シェムが聖女になれば問題ないと考えそう。

 私はカインの発言を信じ、まずは婚約破棄をするつもりだ。
 ルグドとしては私に原因があると思わせたいようだけど、それは不可能だった。

■◇■◇■◇■◇■

「――シェム様を好きになったルグド様とは、この場で婚約を破棄します!」

 翌日になって、パーティ会場で私はルグドに婚約破棄を宣言する。
 今まで何が起きていたのか、私はパーティの場で公表することができていた。

 魔法学園を休んでいたのは、シェムが浮気をしていたショックによるもの。
 学園内の私に対する噂は全て嘘で、ルグドがシェムを婚約者にしたかったから。
 その証拠となる音声や映像を全てこの場で見せつけたから、ルグドは言い逃れることができない。

「なっっ……今まで学園を休んでいたのは、証拠を集めていたからだと!?」

 パーティ会場の中央で、注目を浴びたルグドが叫ぶ。
 明らかに動揺しているから、私は頷いて返答した。

「はい。ルグド殿下とシェム様が浮気をしていて、更に私が悪いと思わせたかった。魔法学園を休むのが一番いいと判断しました」

 説明をしていると――動揺していたシェムが、ルグドの隣に立つ。
 どうやら開き直ったようで、私を憐れむように眺めて話す。

「ルグド殿下がアイラ様より優秀な私を選ぶのは、仕方のないことでしょう」

「婚約者を奪えそうだから、嬉しそうですね」

「うっっ……これは全て、アイラ様と私に差がありすぎたから起きたことです!」

 私の発言を聞き、悔し気にシェムが叫ぶ。
 ルグドを庇うように私の前に出て、シェムの話が続く。

「アイラ様が婚約破棄をするのなら、私がルグド殿下の婚約者となりましょう。そして私が、聖女に選ばれます!」

「それは、儀式を終えてから言ってください」

 現状ではルグド達の評判は最悪だけど、シェムには逆転の手がある。
 それは聖女として選ばれることだけど――シェムは、聖女になれなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

聖女に厳しく接して心を折ることが国の発展に繋がるとは思えませんが?

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるエリ―ナは、新たに聖女となった平民の少女のことを心配していた。 王族や貴族の中には、平民が権力を持つことを快く思わない者がいる。それをエリーナはよく知っていたのだ。 特に王子と王女の苛烈さは、エリーナさえも毒牙にかかるくらいだった。 平民の聖女が、その二人に飲み込まれかねない。そう思ったエリーナは聖女補佐として聖女を守ることにした。 エリーナは同じく聖女の補佐となった侯爵令息セフィールとディオラスとともに、平民の聖女を守っていた。 しかしそれでも、王子と王女は牙を向いてきた。二人は平民の聖女の心を折るべく、行動していたのだ。 しかし王家の兄妹は、自らの行動が周囲からどう思われているか理解していなかった。 二人の積もりに積もった悪行は、社交界から王家が反感を買うことに繋がっていたのだ。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。 シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。 その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。 そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。 ざまぁ展開のハピエンです。

【完結】王太子は元婚約者から逃走する

みけの
ファンタジー
かつて、王太子アレン・リオ・アズライドは、婚約者であるセレナ・スタン公爵令嬢に婚約破棄を告げた。 『私は真実の愛を見つけたのだ!』と、ある男爵令嬢を抱き寄せて。  しかし男爵令嬢の不義により、騙されていたと嘆く王太子。 再びセレナと寄りを戻そうとするが、再三訴えても拒絶されてしまう。 ようやく逢える事になり、王太子は舞い上がるが……?

処理中です...