私の魔力を全て奪って婚約破棄するようですが、奪えるのは1週間だけです

天宮有

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第60話

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 私は、人に対して怒ったことが今までなかった。

 今回の件もそう――普通に拒めば、ジェイクは諦めると考えていた。

 それでもジェイクは諦めず、アインを侮辱する。
 今までにない激情が私の中を巡り――気付けば私は、アインの隣まで来ていた。

「……セリス?」

「ジェイク、いい加減にしてください」

「なっっ……!?」

 私の発言を聞いて、ジェイクは何も言えなくなっている。

 魔力と敵意を籠めた威圧を受けて恐怖しているけど、まだ諦めないようだ。

「なっ、何度も言うが貴様は冒険者として日が浅い、貴族の生活の方が有意義で幸せになれるに決まっている!」

「いいえ、今が一番幸せです――私はこれからも、冒険者として生きます」

「ぐぅぅぅっっ――っ!?」

 私が宣言すると、ジェイクは何を言っても無理だと理解したようだ。

 今まで人に対して怒らなかった私が、ジェイクに対して激怒している。

 それを理解したジェイクは何も言えなくなったようで――諦めて、冒険者ギルドから出て行った。
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